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古い悪魔 3

 店の中に入ると、彼に視線が集まっていた。まだ開店前だというのに、人が入ってきてしまったのだ。当然、視線が集まるだろう。彼が普通の格好をしていても、開店前に人が入ってくれば、視線が集中するだろう。彼はそれを理解できずに、一番近くにいた人が彼を止めようとしていた。


「開店前なので、お引き取りお願いします。ただいま開店準備をしておりますので」


「そうか。しかし、これは全て商品なのか?」


「え、ええ、はい。そうです。この場所で揃わないものはほとんどないという評判もいただいております」


「なるほど。準備してくれていいので、見るだけならよろしいでしょうか」


 店員は困った顔をして、彼を見ていた。客に強い言葉をすぐに使うなという規則がある以上は彼にも当たりの強い言葉を使うことはできない。しかし、このまま中に入るのを許すわけにはいかない。


「本当に、申し訳ありませんが、開店までお待ちいただくようにお願いします」


「……。私の生きてきた時代とは違うのですね。わかりました。開店したとなれば、また来ましょう。それでは」


 彼は店を出る。彼は店を出て、店の前に立つ。後ろを振り返り、店構えを見ていた。彼の知る店とは全く違う。店としてこれだけの商品を扱っている店はなかったのだ。先ほどの屋台のような店ばかりで、一つの店に一つの商品、一種類の商品というものがほとんどだった。それに開店準備なんてしている店はなく、毎日決まった時間に店を開いていることは稀だった。


 彼は時代の進み具合を感じながら、店から離れていく。


 彼が町を探索するのには理由があった。最終的に彼はこの町を破壊するつもりであった。破壊することは彼の存在意義であり、人にとっては食事や睡眠と同じものだ。そこに複雑な理由はなく、本能というべきものであった。だから、彼は破壊する前に、どうせ破壊するならば、対象から何か学ぶことができるかもしれないと思ったからだ。しかし、封印される前の人間から学ぶことができることなどほとんどなかった。だから、彼は破壊の限りを尽くして、多数の町を破壊していたのだ。その際に、封印されて石像にされていた。封印が解けて、彼は進んだ時代の文化を知るために町を歩いている。


 文化としては進化しているが、人間という種族の成長はほとんどないように見える。種族として、大きな変化が起こることは少ないため、それ自体は珍しいことではない。しかし、成長とは違うが、多様性という点ではさらに複雑になっている気がした。彼が前に生きていた事態とは価値観や規則が大きく違う。人のありようが多少は変わっている。これだけの街を作るようになるまでに、それだけの年月を経ていることに、彼は多少感動していた。そして、この時代に封印が解けたことを嬉しく思っていた。




 王宮で仕事をしていた王に、大変な知らせが来ていた。大きな音でノックをして、騎士が一人入ってくる。王と一緒にいた騎士団の副団長が彼を怒ったが、それどころではないのは、彼も理解していた。


「町の中に、悪魔が出現しています!」


「……それはいるだろう。旅人という可能性もある」


「いえ、その、おとぎ話の悪魔です。古い悪魔と見た目が同じなのです!」


「……なんだと。古い悪魔、アデガルザがいるというのか?」


「ええ、はい。その通りのようです。今は町の中をゆっくり移動していますが、いつこの町が破壊されるか。わかりません。至急、対処に向かいたいと存じます!」


 彼の言葉を全面的に信用することはできない。おとぎ話の悪魔、古い悪魔アデガルザはこの国だけに伝わる話ではない。他の町にも同じような伝承が残っていることが多くある悪魔の話だ。そして、一つの町に留まらないということは、それだけ強力な悪魔であるということの証明でもある。伝承が広範囲であればあるほど、それだけ被害を広げたということに他ならないからである。そして、その災厄が今、この国にいるなど、信じたくないだろう。しかし、彼の報告の全てを嘘だと信用せずに、放置するという選択肢を取ることはできない。報告が上がった以上、調査や対処が必要になってしまう。


「副団長。申し訳ないが、調査をお願いする。調べ損になることを願うばかりだが、真実なら対処を考えねばならない」


 副団長は、彼の言葉を受けて、部屋を出て行った。報告しに来た騎士も副団長と共に、部屋の外に出て行った。王は、自身の椅子に座り直し、机に肘をついて、手を組んだ。そこに額をのせて俯く。


「ギブラッドめ、本当にあの悪魔の封印を解いたのか? 自ら、生活している街を壊そうというのか、馬鹿め。ああ、本当に、あの報告が嘘であってほしいものだが……」

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