ヒロインことリリー視点
最終話です。
あたしの名前はリリー。
商店街の真ん中、噴水の近くで母さんと二人で小さな花屋をやっている。
自慢のピンクのフワフワの髪に毎日オススメの花を挿して店番してる。小さい頃から手伝いをしていて花のことに関しては詳しい方だと思う。調子に乗って花言葉まで調べて花をプレゼントする人にアドバイスしているのが好評みたいで看板娘と呼ばれている。
花屋は築50年のちょっと古めかしい建物だから、いつか建て替えて可愛らしい店にするのが夢。
だからお金大事、趣味は貯金!
父さんはあたしが赤ちゃんの頃に亡くなったので母さんは女手一つで昼は花屋、夜はバーで働いてあたしをここまで育ててくれた。
母さんは儚げな外見とは反対に商店街の女ボスとして君臨している(笑)バーではお酒を飲んでみんな色々喋ってしまうから情報を握っているんだって。
「情報を制するものは世界を制するのよ」と、母さんは悪い顔して言っている。
そんな母さんが昨年不治の病になったのだ。
だが、運の良いことにその1カ月後に特効薬が開発された。
特効薬は開発されたものの平民には手の届かない金額…と思ったが、頑張ればなんとか買える金額で助かった。
どうやらこの国の何番目だかの王子様が孤児院の子どもたちに仕事を与えるとかで材料調達や薬草の栽培をさせているらしい。そのおかげで庶民に手が届く値段になったんだって。
それでも母さんの看病で店を開けられなかった分と薬代で店の建て替え用に貯めていたお金はすべて使い切った。
また、頑張って貯めないと。
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ある日、本当の父親と名乗るファンドル男爵という人が花屋を訪ねてきた。
若い頃に母さんと付き合っていて父親に反対されて泣く泣く別れたけど、自分が爵位を継いだので母さんとあたしを男爵家に迎えたいんだって。今まで何もしなかったのに今さらと思った。
奥さんと息子が3人がいるらしく、母さんは使用人、あたしは娘として迎えたいんだって。母さんが使用人なんて意味が分からない。今より悪い環境に誰が行きたいと思うのだろう。あたしのことも政略結婚の駒に利用したいとかじゃないのかな?
母さんはもちろんそれを断っていた。貴族相手に断って大丈夫かと思ったけど、母さんが男爵の耳元で悪い顔して何か呟くと男爵の顔色が悪くなり逃げ帰って行った。
母さんのことだから何か切り札となる情報でも握っていたのだろう。さすが頼りになる母さんだわ。
母さんがいなかったら男爵の申し出を断ることなんて出来なかっただろうな。
貴族の令嬢なんて柄じゃない。正直、花屋の看板娘はそこそこモテる。色々な男の子とデートしてチヤホヤされるのは楽しい。
花屋を建て替えてくれる人と結婚してあげるのもいいかもしれない。
乙女ゲームが始まらないのは王子のおかげでした。
平和でみんな楽しく過ごせそうなのでハッピーエンドということで。
読んでくださった方ありがとうございました。