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プロローグ「訳ありの新しい家族が増えた非日常」

魔王・勇者モノです


宜しくお願いします

「紹介しよう。新しく家族になる人達だ」


 父親である吾朗から、そう切り出されてただし)は当然のように困惑した。

 バイトからの帰宅した際、客間がやけに騒々しかったのに疑問を持っていたが、このような事態になるとは想定外であった


「ボクは勇者の()()()

「……え?」


 目の前のポニーテールの少女から発せられた言葉に(ただし)の首が15度傾く。


「魔王の真央だよ」

「……はい?」


 唯の首が30度傾く。


「魔法使いの法子(ほうこ)よ」

「……何だって?」


 唯の首が45度、綺麗に傾いた。


「え? どういう事……」

「言っていなかったな。父さん再婚したんだよ」

「ていうか、今それ聞いたし。ていうか、こんなの初耳だし!」


 あまりも突然の事に、唯が声を荒げるのも無理は無い。


「誰と結婚したのさ?」


 三人の内、二人はどう見ても未成年であり、更にその内の一人は法律に抵触する年齢であるのは見た目でも判っていた。


「お前の義母さんになる人は、ほらこの間、華美奈にあっただろう。今日はどうしても都合が付かなくてな……。とりあえず家族になる子達を紹介しておこうと思って」

「それはいい。けど勇者て何? 魔王て? 更には魔法使いですか? ここ現代だよね?」

「父さんから言ってもいいんだが……」


相貌を白黒させている唯を傍目に、横目で三人を見たのは、出来れば自己紹介をして欲しいと促していた。


「異世界アーレスの勇者、リコルヌ・ヴァイス」

「そことは違う世界だけど魔王のレネーオ・ネーロ。あ、でもでも真央でいいからね」

「私はこの世界の魔法使い。でも本名と年齢とスリーサイズは内緒よ」

「あ、それはいいです……」

「え~?」


 唯は法子が非難の声を上げたのをあえて無視し吾朗に向き合った。


「いや、だから。それっておかしいよね。絶対におかしいよね?!」

「きっとこんな美人さん達が家族になるんだから照れているんだな」

「ちーがーう!」


 近所迷惑になるのも憚らず大声を上げる唯。


「勇者とか魔王とか魔法使いとか何? ここ、現代のはずだよね?」

「まあ、いいじゃないか。皆、個性的で」

「個性的過ぎるんですけど! ていうかこの状況を平然と無視する事が出来る親父が一番個性的なんだけど!」

「とにかく決定事項だから」


 ははははは、と笑いながらさらりと重要事項を突きつけてきた。


「ていうか勝手に決めないでほしい! 再婚はいいよ、親父の問題だから。でも子連れっていうか、これは色んな意味で違うー」

「何か問題でもあるのか? それとも父さんが獲られて寂しいのか? 何時までも親離れ出来ないなんて困った子だ」

「熨しつけて渡すよ!」

(……落ち着け俺、クールになれ俺。そして頑張れ俺)


 唯は深呼吸と共に意識を落ち着ける努力をした。


「まあ、お前が納得しないのは構わないが。そうしたらお前に買ってやったバイクの頭金、耳を揃えて今すぐ返して貰おう」

「くそっ……。それは卑怯だ」


 高校2年に上がる春休み、唯は教習所に通い中型2輪の免許を取得と同時に250CCのバイクを購入。

 最も唯がローンを組める訳もなく、吾朗が支払人となっている。

 更には教習所の入学金までも、である。

 唯においても親の脛齧りではなく、アルバイトで得た金額を吾朗に返しているのだ。


(……あれはこれの布石だったのか)


 それならば合点も行くというもの。

 こういう状況になるのを見計らい、吾朗は金銭を投下したのであろう。


(……お、おのれ。でも、まあ親父も同居するから大丈夫だろう)

「あ、俺は華美奈と一緒に住むから。この家にはお前と三人だけで生活するように」

「ちょっとお父様! お父上様、何それ初耳!!」

「新婚なんだぞ。甘い生活くらいさせろ」

「ちょ、ちょっと何、年甲斐も無く顔を赤らめて照れているのさ! 邪魔するつもりはないけど。こっちは思春期の男子ですよー!」

「まあ、間違っても家族に手を出すなんてしないだろうから。家族にな」


 家族の部分を強調したのは、吾朗なりに万が一に備えて釘を刺したのであろう。


「ボクにヘンな事したら承知しないから!」


 勇希歩が凄みを効かせた声と目で見てきた。


「あ、でもそうなったら真央は困るかも」


 真央の言う通りであり、この言葉は唯にとってはチャンスであり渡りに船でもあった。


「そ、そうだね。そうだよね。男はいつ狼になるか判らないから危ないよな」

「あ、でもお兄ちゃんなら襲われてもいいかも。真央、お兄ちゃんの事好きだし」

「え?」

「うん、好きだよ。一目惚れってヤツ!」

「真央ちゃんと唯が結婚するなら、お父さん一度離婚しないといかんな……」


 会心の一撃を、痛恨の一撃で返されてしまった。


「ちょ、ちょっと!」


 先の言葉を容認する吾朗に、唯は並々ならぬ危機感を感じて当然であった。


(……何だろう。本気で遣りかねない気がする)

「大丈夫、父さんはお前を信じているからな!」

「うわー。全然、信用していないような気がするー」


 堂々巡りというか、確定事項の前に唯は既に投げやりな口調になってきた。


「……もう、好きにしなよ」


 結局というか、最初から勝敗は決まっていた戦いの一つが終了した。

 そして唯は三人を「厨二病」だと決め付けて、それ以上の真実を見ようとはしなかった。

 翌日から奇妙な、ある意味で波乱を含んだ共同生活が始まった。



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