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次男との出会い
生活は落ち着いていた。
落ち着きすぎていた。
夏。
次男の雅人が帰ってきた。
玄関が開く。
その瞬間——
環の表情が変わった。
明らかに。
「こんにちは、環ちゃん。雅人兄ちゃんだよ」
その言葉を聞いたあと。
ほんの一瞬、間があった。
そして。
「はじめまして、雅人じいちゃん」
空気が止まる。
「え、まだじいちゃんじゃないぞ?」
笑いが起きる。
「ごめんなさい。雅人兄ちゃん」
場は和んだ。
だが——
博は、見逃さなかった。
その最初の一言。
“間違い”にしては、妙に自然すぎた。
その夜。
環は、雅人の隣に座り続けていた。
まるで、離れないように。
まるで、確認するように。
「環、そんなに雅人が好きか?」
「……うん」
「なんで?」
少し考えて、答えた。
「たいせつだから」
「誰にとって?」
「……みんなにとって」
意味がわからない。
だが、妙に引っかかった。




