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下級兵塩川の日常  作者: 塩ソルト塩
4章 あいつらの『オリジン』
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46話 じっくり見定めてやるぜ

「まそんなようなことがあってさ、俺はひとまず、兵士階級の試験を受ける資格を得たわけだ。」


俺はアメニティ過多な邸宅に用意されていたコップで麦茶を飲んで、掴む手の親指と人差し指を立てた。


「それよか、ほんと美味かったよ。ご馳走様でした。」


皿洗いは俺がやると言って立ち上がったが吃驚、この家は『全自動食器洗浄機』に洗剤を飲ませればどうにかなるらしい。泡の力で効率よく洗浄、内蔵した循環ジェットタオルで送風乾燥って流れを十秒で済ませるそうなのが、やっぱり例のリラ社製なのである。俺はクリーナーが小窓の中で忙しくやってるのを、多少引き気味に眺めた。


「一人暮らし二人暮らしってな、毎食茹でもやしか粉モンに落ち着くもんだと思ってたよ。ゆず鯖なんか、気の利いた小骨処理までよくやる」


「料理出来る女の子いいでしょ」


「ギャルは和食作らないと思ってた」


「ギャル言うな」


速攻で金ピカになった和製の長皿を棚にしまいながら、楓は小慣れた調子で言い返した。


「風呂ぁどうする?」


「私長いから先入ってー」


「あいよ」


俺はすぐにシャワーを浴びて出てきた。


「・・・湯船浸かった?」


「や、とりあえずお前が嫌がるかもしれないから入らなかった。」


「変なところで気を遣うなばか」


「一番風呂とかは気にしないのね。じゃ今からあのアホ広い浴槽でクロールの練習をしてくるが」


「クロールの練習はするなばか!!背泳ぎでいいでしょ!」


「・・・ふむ。そんならこれからはそのくらいの感覚で浸かることにするよ。」


軽いジョークで今後の入浴方針を定めてから、夜風に当たるべく外に出る。俺はテラスの滑らかな木材に座って、遠くの月を眺めた。


「編入試験・・・大昔みたいな感覚だけど、まだまだ一年半しか経ってねぇんだよな。」



────────────



──────



【おい見ろよ、ガキがいるぜ。】


【こんなところで欠伸をかく等どうかしてる。ここは子供の遊び場じゃないんだぞ。】


あの時、教官から貰った推薦状を握りしめて試験会場に向かった俺は、まず事情を知らない大人たちの注目を集めたもんだ。兵士階級の編入試験には、ほとんどガタイのいいおっさんかストイックなマッチョメンしかいなかった。みんな揃って緑とか黒の服装してたし、流石にホワイトなシャツ着たモダンボーイは物珍しかったんだろう。


【分かってるよ、俺は遊びに来たんじゃない。フロリスになるためにきたんだ、推薦状も持ってる。】


【なに?・・・ふむ、以下の者について、補正を行った上での特例受験を認める。補正値、・・・マイナス50点。】


【ひゃひゃ、聞いたか今の!!マイナス50点だってよ!!】


【推薦状ってより、雑魚の証みたいなもんじゃねえか!!】



【───騒がしいな。何事だ?」



だがそこに、俺よりもっと目立つ奴らがやってきたんだよな。それこそ、嘘みたいに長いリムジンに乗って。


【なんだなんだ?またすごいのが出てきたが。】


【フッ、『素早さのスピード』。】


【『強力のストロング』!!】


【『射撃のショット』】


【『体力のスタミナ』】


【そして僕、『頭脳のブレイン』!僕ら『推薦組』を差し置いて、続けたい話でもあるのかな?】


五人並んでやってきたスーツ部隊は各々の決めポーズをかまし、場を騒然とさせた。そいつらのおかげで、俺に対する野次は一度収まったっちゃ収まったんだ。


・・・けど、問題はそこからだったんだよな。


【なんだ、あの真っ白な部屋は。】


顔色の全く変わらない職員さんに案内された待機室で、誰もが奥の部屋を凝視した。巨大な窓の向こうには、一定の間隔おきにグリッド線の入れられただだっ広い空間があった。壁にはやけに大きいカメラみたいな機材が、やけにたくさん取り付けられていた。


【あなたたちには、一人ずつ実戦形式の模擬戦闘を行ってもらいます。テーブルの上をご覧ください。】


俺たちが舞台上のテーブルに目をやると、突然に巨大な蟻が現れた。


【ッ・・・!!】


【こちらはフロリスのホログラム技術による古代兵器の立体映像です。】


不透明。その幻像はあまりに精巧で、今にも動き出すかのように錯覚した俺は思わず固唾を呑んだ。


【試験開始から指定の間隔置きに、『スネーク型』、『マンティス型』、『モスキート型』などフロリスが確認済みの古代兵器が幻像として現れます。レプリカは本来の個体とほぼ同様の挙動を取りますので、被験者はこちらで用意した専用の装備を選択して試験に望んでください。被験者の生命ポイントがなくなった時点で試験終了、それまでの討伐ポイントが得点になります。】


【はえー、大分ぶっ飛んでやがる・・・。】


本物そっくりな立体映像をぶっ飛ばしまくって、自分が死ぬまでに倒した数で競うってわけだ。確かその時も、俺はあまりにはっちゃけたフロリスのハイテク加減に恐れおののいたんだった。俺の胸はその場でガッと沸き立って、平素とは少し違う緊張を覚えた。



【では一番の方、入室してください。】



しばらくして、初めの被験者は全身武装した状態で現れた。


【俺は推薦枠のビリで被験者番号『百番』、最後の被験者ってわけか。・・・ラッキーだな、じっくり見定めてやるぜ、編入試験!!】



波乱の編入試験が、ブザーと共に始まった。



【では公平を期すため、液晶を不透明モードに移行します。】


【あ、やっぱそうね。】


ちなみに俺の意気込み自体は数秒で頓挫した。

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