オレの生き様はこうだ!~攻撃魔石の活用法~
魔石研究所。
いつの間にかクレアがそういった場所を敷地内に作ったらしい。
そこで攻撃魔石の生成に取り組んでいた。
オレとファイが魔石研究所を訪ねると、クレアとルーシーが研究に勤しんでいた。
「何か用?」
「攻撃魔石がちゃんと出来てるか確認しに……」
話している途中でファイに「言い方」と小突かれた。
面倒くせえが、確かにここでクレアを挑発するような事は避けたい。余計に面倒だ。
「お前に攻撃魔石の事を任せっきりにしてしまっていたから、様子を見に来た」
「随分と余裕なのね。羨ましいわ」
ダメだコイツ。自ら挑発されに来ている。
「お兄様こそ、どうなの?相変わらず魔法が使えない役立たずなのかしら」
「はあ!?お前何だよ、その態度は」
感情は後回し、と言い聞かせても、コイツにはそれが効かない。
水と油ってヤツなんだろうな。
ルーシーがオロオロしながらもクレアを宥めようとするが「貴女は黙ってて」とぴしゃりと言われ、俯いている。
やれやれ、とファイが仲裁に入った。
「兄妹喧嘩とは仲が良いんだね。人前でも見せつけちゃってさ」
オレとクレアが同時にファイを睨みつけたが「タイミングまで一緒だなんて、流石だ」と余計に言われ、クレアとの言い合いはやめた。
「……それで、攻撃魔石の方はどんな調子なんだ?」
「順調よ。試作品が出来たからお兄様も確認してみて」
安置されている攻撃魔石を見るが、見た目は今までの魔石と変わりない。
「防御魔石はサファイア家以外は自動発動で、サファイア家は自分で魔力を込めた場合は手動発動だったけど、攻撃魔石は直接触れている間だけ発動するみたいで、いわば手動発動なの。ただ、人によって発動出来ない事もあるみたいで、その原因はまだ分かってないわ」
「ルーシーは使えたのか?」
「いえ、私は全く反応しなかったです。他の使用人や警備兵も使えたり使えなかったりしているようで……」
何か理由があるんだろうな。
あ、これってサッちゃんに訊けば分かるんじゃないか?
「お兄様も使ってみてくれない?」
クレアが居る前でサッちゃんに尋ねると不自然に思われるか。何せオレ以外にはサッちゃんは見えない。
先に攻撃魔石を扱うことにするか。
試作品を扱うにあたって、訓練場に場を移した。
攻撃魔石に触れると蒼い光が現れて手を包む。
クレアによると、その光に触れた自分以外のものは消し飛ぶらしい。
なんて物騒なんだ。
魔力全開の防御魔法に似ている。
ただ、それだと近距離攻撃しか出来ないので、何かしらの方法で蒼い光を遠くへ放てるように出来ないか研究中らしい。
オレとしては、これで殴れば相手は即死なので、このままの使い方もアリと思う。
「サファイア家なら反応するのは当然よね。でも、ここからの攻撃方法がうまくいかないのよ」
頭を抱えているクレアだが、オレはそれよりも気になった事がある。
オレの剣に装飾されているサファイアから、体が小さくなったサッちゃんの上半身が出てきている。
「んしょ、よいしょ。抜けない。お兄ちゃん引っ張って」
だが、今そんな行動を取ったらサッちゃんが見えていないクレア達に不審がられる可能性がある。
でも、こんな一生懸命な姿のサッちゃんを放っておけない。
剣を抜くフリをして、サッちゃんをつまみ上げるか。
「オ、オレのサファイアとはまた別物だもんな~。どう違うのかなあ~。見てみよう~」
一旦、攻撃魔石から手を放す。
オレから少し離れたところで様子を見ているクレアからは、剣の柄をつまみ上げているように見えたらしく若干引いている。
「そんなに汚いの?その剣……。トイレ行った後に手を洗ってないの?」
お構いなしにオレはサッちゃんをつまみ上げた。
「やっと抜けたあ。お兄ちゃん、ありがとう」
するっとサファイアから抜け出したサッちゃんは、いつもの背丈に戻り、満面の笑みをオレに向けた。
か、かわ、かわいい……。
何でサファイアから出てきたのか訊きたいが、クレア達がいる手前、話しかけられない。
どうしたものか。
「お兄ちゃん、何であたしが出てきたのか知りたいでしょー?はい、問題!どうしてでしょーか?当てたらご褒美あげるよ!」
ああ、何でこんな時にクイズにするんだよ。
それにサッちゃんをあまり見ると、クレアに目線がおかしいと突っ込まれかねない。
ずっと目を合わせず無反応でいると、ぐずり始めた。
「お兄ちゃん、聞こえないの?ねえ、ねえ、お兄ちゃん」
オレの服を掴み、何度も引っ張るが、オレが無視を続けるため、とうとう泣き出した。
「ひどいよ!この前、あたしの存在を認めるって約束したのに。お兄ちゃんが攻撃魔石の事知らないみたいだから、教えてあげようと思ったのに!」
自分で問題の答えを言い出してるわ。
だが、このタイミングで聞き出せるなら聞いておきたい。
どうにかしてクレアの目をごまかすか。
オレは剣を床に置いてしゃがみ、サッちゃんと目線が合う高さになった。
「光の加減で反射して、オレの魔石がよく見えないや~。ええと~、ええと~」
独り言を言いながら剣を見るフリをしてサッちゃんを見た。
状況を察したファイが「奇行なエリーが落ち着くまで、攻撃魔石が出来るまでの過程を教えてくれないか」とクレアとルーシーの気を逸らすようにしている。
よし、今のうちに。
「ゴメンな。ちょっと訳あってお話出来なかったんだ。嫌な思いさせたな」
「お兄ちゃんなんて嫌い!もうお話しない!」
「悪かった。お兄ちゃんはひどい人だな。反省してる。でもサッちゃんの事が見えてない人もいるから、お話してるところ見られたら、不思議に思われて、これからお話するのが難しくなるかもしれないんだ。そうならないように、さっきはお話出来なかったんだ」
「……本当?」
「本当だ。これからもサッちゃんと一緒にいたい気持ちも本当だよ」
その答えを聞き、嬉しそうな笑顔でオレに抱きついてきた。
オレも強く抱き返した。
それをドン引きしたファイが横目に見ていた。
仕切り直して、サッちゃんに攻撃魔石について尋ねた。
「サファイア家が使えるのは当然として、どうして人によって使えないんだ?」
「それはねー、属性が違うからだよ」
「属性?魔法の事か?」
「うん。例えばあのメイド、土属性でしょ?」
サッちゃんが指差す先にいるのはルーシーだ。
そういえば、そういった家系だって前に言っていたな。
「関わっている精霊がいると攻撃魔石は扱えないの。蒼玉魔法の攻撃は威力が強いから、他の属性と仲良く出来ないみたい」
「つまり、魔導士やその家系は相性が合わなくて、攻撃魔石を扱えないって事か」
「そういう事」
なるほどな。だから人によって扱えないのか。
「攻撃魔石はどうやって使ったら効果的なんだ?」
「元々サファイアって性質として自分から攻撃するって感じじゃないの。攻撃されたらやり返すっていうように、光に触れたら消し飛んじゃうの。だから魔導士が使うような、火を放つとか、雷を落とすとか、そういった事は出来ないよ」
威力としては大きいが、攻撃には使いにくいって事だな。やはり、防御魔法の威力最大と同じものと考えた方が良さそうだ。
「だからね、攻撃魔石を投げつければ光に触れさせる事が出来て殺せるんだよ」
……え?急に物騒な事言い出したな。
「投げつける?でも魔石に触れている間でないと光は現れないだろ」
「今のところはそうだけど、もう少し魔石を加工したり魔力の調整をすれば何とかなるかも。あたしも初めての事だから分かんないけどね。後は……」
サッちゃんはクレアの方を見た。
「あの子の成長次第」
攻撃魔石はクレアにかかってる、か。
だからといって丸投げにする訳にもいかない。
改良についてオレも案を出して、一緒に練っていかないとな。
「よく分かったよ。ありがとな」
サッちゃんの頭を撫で回した。「えへへ」と喜んでいる。
とても可愛い。
サッちゃんがオレの剣に戻るのを確認し、クレア達の元に戻った。
「……それでサファイアに魔力を込めたんだけど、少し跳ね返される事もあって。気に食わなかったのよね」
何やら長々とクレアが語っており、聞かされているルーシーとファイはぐったりしている。
「どういう状況だよ」
「クレアに攻撃魔石の事を聞く時には要点を絞った方が良いって状況だな」
「申し上げにくいんのですが、クレア様のお話は主観がそこそこの割合を占めておりまして」
ヒソヒソと話していたが、クレアに聞かれていた。
「私の話を邪魔しないでよ!ファイローネが話を聞かせろって言ったんじゃない!それに貴方たちの雑音が混じって不愉快だわ」
オレを睨みつけて、クレアは続けた。
「それで、攻撃魔石についての意見は?」
「威力としては十分だろうな。後はお前が考えるように実用性を高めるためにしていかないといけない。オレも方法を考えていくよ」
「あてにしないでおくけど、頼んだわ」
サッちゃんはあんなに可愛いのに、コイツは全然可愛くねえな。
「で、お兄様はいい加減、魔力を込める事が出来るようになったのかしらね」
「おう、見てろよ」
魔力を込めていない魔石を用意し、オレは片手をかざした。
そして、反対の手はサッちゃんと手を繋いでいる。
別に繋がなくても魔力は込められるが、こっちの方が気分が上がる。
そういう事ってあるもんだろ。
「ほら、確認してみろよ」
クレアに向かって魔石を投げて渡した。
「……確かに。魔力は込められているわね」
怪訝そうにクレアは答えた。
オレが無能だと思っていたから、魔力が込められてガッカリしているに違いない。
ざまあねえぜ。
訓練場を後にし、オレは思考を巡らせていた。
魔石については、現状として攻撃魔石の実用的な使い方の検討だ。
触れている間は発動するので、武術的な使い方が最適と思う。
そうなると誰でも武術が出来る訳ではないので活用が難しい。
サッちゃんはサファイアに手を加えて、投げて使えばいいと言っていたが、そんな腕力勝負が戦いの場で通用するはずがない。
投げる……飛ばす……遠くへ……。
そうだ。
あるじゃないか。
この世界ではまだ見ていなくて、魔法同様に遠距離攻撃が出来て、訓練すれば誰でもそれなりに扱えると想定出来るもの。
宮殿内を大股で歩きながら大きな声で言い放つ。
「マスオ!いるか!ちょっと銃持ってこい!」




