帰ってきた
遅くなりました。
馬車に乗り続け、俺たちはやっと《ラベンダー》の町に帰ってきた。
「なんか久しぶりだな。」
「そうだね~。それに今はルーンちゃんやマリアさん、ブレーキさんもいるし、楽しくなりそう!」
久しぶりの町に感動しているうちに、馬車は町の入り口に止まった。
「長旅ご苦労だった。荷物はほとんどがギルド関係のものだからな、自分達のものを取ったら解散してくれて大丈夫だ。」
「私も手伝うわよ?」
「いや、俺とブレーキで十分だ。」
「え?あっしすか?」
「ブレーキにはギルドに住んでもらおうと思ってる。そう言うわけで、荷物にもブレーキ用の物が多いからな。手伝ってもらいたい。」
「そう言うことならやるっすよ。」
ほぉ、ブレーキさんはギルドに住むのか。家からもそう遠くないし、安心だな。
「じゃあ、俺たちは今日中に済ませておきたいことをやっておくか。」
「済ませたいこと、ですか?」
「あぁ、ルーンとマリアの住居探しをしないといけないだろ?」
「この辺りに宿はないのかしら?」
「無いことはないが、せっかく住むからな。マリア用に家を買うのもいいかもな。」
さすがに俺とナナの家にもう一人は厳しいだろう。マリアだって、いくらパーティーのペアだとしても男と住むのは嫌だろうしな。
「そうね、一応家が買えるほどのお金は持ってるわよ。」
「俺が買わなくてもいいのか?」
「自分の家ぐらい自分で買うわ。そこまでしてもらったら良くないもの。」
そうか。まぁ、Sランク冒険者だもんな。家ぐらい買えるわけか。
「じゃあ次はルーンだが、」
さすがにルーンに家を買うわけには行かないだろう。いや、パーティーじゃないからとかではなくルーンの年齢的な問題だ。
王都では一人暮らしをしていたようだしこの世界ではあまり重要視されていないみたいだが、俺の感覚からしてこの年の子を一人暮らしさせるのは忍びない。
というわけで、あの人のところへ行ってみるとしよう。
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅じゃあマリアはコラルドさんたちと一緒にギルドに行ってくれ。そこで家の購入手続きができるはずだ。」
ギルドは案外色々やっている。そのうちのひとつが冒険者ギルドで且つ勢力も大きいが、不動産的なこともやっているのだ。
「分かったわ。」
「それで、ルーンは俺たちについてきてほしい。ナナはどこに行くか分かるよな。」
「うん。分かるよ~。」
「え?どこなんですか?」
「まぁ、行ってからのお楽しみだ。」
「えぇぇ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
というわけで、俺とナナ、そしてルーンは前から話していたあの場所に向かうのだった。
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「ここだ。」
「すっご~~い!」
ルーンが我を忘れて喜んでいるこの場所。それは、
「おや、久しぶりだね!シュウにナナ、あとその子は友達かい?」
「久しぶりだな。テナさん。」
「久しぶり~。あとこの子はルーンちゃん!お友達だよー。」
そう。俺がこの世界に来て間もない頃にナナに連れられてやって来た《テナの洋服店》である。
なぜここなのかというのは何となく分かるだろうが、まずテナさんは信用できて且つ頼りになること、それとルーンの裁縫技術が活かせるのではないかと践んだのだ。
すると、徐にテナさんが近づいてきたかと思うと、俺に耳打ちをした。
「何か訳アリかい?」
「いや、それほどでもないが⋅⋅⋅⋅⋅⋅テナさんに頼みたいことがある。悪い話ではない。」
そう返事すると、テナさんは耳打ちをやめて普通に話し出した。
「そう言うことならちょっと待ってくれ。今一人客がいてな。ちょうど今裏にいるんだが。」
そう言うと、裏の扉をあけてその客を呼んでいた。少しして扉から出てきたのは、背丈はナナと同じほど、水色の髪の少女である。
彼女にはとても見覚えがあった。
「ミイ!久しぶり!」
「えっ!ナナ!帰ってきてたんだね!」
ギルドの受付嬢、そしてナナの友達であるミイだ。
「ミイ、なんの用事だったんだ?」
「普通に服を買いに来たんですよ。最近服が小さくなってきてたので、採寸も兼ねてです。」
ということだった。正直、そんなに成長しているようには見えないが⋅⋅⋅⋅⋅⋅何てことは言わないでおこう。
「それでミイ。どうやらシュウたちが私に話があるってことらしくてな。世間話もほどほどにして、そろそろ終わるかい?」
「わかりました。まだ他にも行きたいところがあるので、私はこの辺で失礼しますね。」
軽く別れの挨拶を交わして、ミイは《テナの洋服店》を後にした。
「じゃ、そろそろ話を始めようか。奥に客間みたいなもんがあるから、ついてきてくれ。」
そして、俺たちは店の奥へと進むテナさんの後をついていったのだった。
大分短めになってしまいました。
次話は、ルーンのすむ場所についてのテナさんとの話し合いから始まります。
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一部文章にミスがあったので変更しました。申し訳ありません。