スタンピード対抗戦1
カァーン、カァーン、カァーン
王宮を中心にして、王都に鐘の音が響く。その音に王都の人たちが立ち止まる。
そして、魔力拡声器を通して国王、オスペオさんの声が聞こえてくる。
『町の者たちに告ぐ。たった今、王都より南西方向に位置する《ケイトウ火山》よりスタンピードと思われるものが発生したと連絡がきた。
規模は、最低でも5000。それ以上である可能性も高い。騎士団員、冒険者は王都西門前、そのほか王都にいる者は、緊急避難施設へと避難してくれ。繰り返す──────────────』
俺が今いるのは、王宮指令室。王宮内、王都内への連絡、その他主要都市との連絡をするための部屋である。
俺以外に、ナナ、マリア、コラルドさん、ブレーキさん、そして今放送を終えたオスペオさんがこの部屋にいる。
「それにしても、突然スタンピードっすか⋅⋅⋅⋅⋅⋅。数的にも厳しいっすね。」
《スタンピード》何らかの原因で魔物が一斉に移動することだ。規模も引き金はその時々で違うが、一様に言えるのは、人の手が入っていないところ、一般に《スポーンエリア》と呼ばれる魔物の発生しやすい地帯で起きる。
過去にはスタンピードによって滅んだ国もあるという、厄介な災害の一つである。
「冒険者も集まって200、在中騎士団と合わせても500と言ったところか。」
「そうね。」
コラルドさんの考えに、マリアが賛成する。それに疑問を持ったのか、ナナが外用の口調で質問した。
「200、ですか?冒険者はもっといると思いますけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
その質問に、オスペオさんが口を開いた。
「確かにそうなんだけど、スタンピードは災害に分類されるから、戦闘に出ても報酬は出ないんだ。だから、絶対参加にならないCランク以下の冒険者はほとんど戦闘には出てこないと思う。」
「まぁ、自分の命も大切だからな。正当な判断だ。」
Bランク以上の冒険者は、こういった災害時は絶対参加になる。なので、わざわざ昇級試験を受けずにCランク止まりの人などもいるわけだが。
とにかく今王都にいるBランク以上の冒険者は150人ほど。『俺は町を守るんだぁ!』的な冒険者たちがいたとしても、200人ぐらいだという計算である。
「スタンピードの魔物はだいたいF~Dランクぐらい。個別にだったらBランク冒険者でも簡単に倒せるのでしょうけど。この数になるとむずかしいでしょうね。」
「騎士団も同じようなもんっすね。さっき部下に偵察させたんすけど、スタンピードはあと30分ほどでここまで来るそうっす。」
「外部騎士団に連絡をとっても間に合わないか。」
どうしようもない問題に頭を抱えていると、ナナがこんなことを言った。
「シュウはどうにかできないの?今まで使ったことのないレベルⅤのグレネードとか、」
「やるだけやるが、それでどうにかなるかは分からんな。」
レベルⅤで無制限の手榴弾を投げまくるのもいいが、パーティー勧誘をしていない人への被害や王都への被害を考えるとな。
そんなことを考えていると、コラルドさんが質問をしてきた。
「そのレベルⅤってゆうのはどれぐらいの威力なんだ?」
「あぁ、ものによっても多少誤差はあるが、手榴弾なら村が半壊するぐらいの威力はある。」
「「「「はぁ!?」」」」
因みに魔法の関わるものなら範囲を犠牲にして威力を上げたり、その逆もできる。というのを説明しようとしたのだが、ナナ以外の『驚愕』といった超えて遮られてしまった。
「ど、どうかしたのか?」
「どうかしたもなにも、何よ!村が半壊するって!」
「言葉の通りだが?」
「そうじゃなくて!」
何やらマリアが怒っているような、呆れているような様子で抗議してくる。
「スタンピードなんかより、シュウくんのほうがよっぽど災害級な感じだね・・・。」
「はは、それは言えてるっすね・・・。」
「そう、だな。」
そ、そうなのか?まぁグレネードって言えるのか?ってぐらい威力は高めだし、手榴弾に限っては無制限ではあるが、マリアとかはもっと凄いんじゃないのか?
小説やなんかではそれぐらい当たり前な感じだが。
「とにかく、問題は解決だね。さて、あとは任せたよ、シュウくん。」
そういって、オスペオさんに肩を叩かれる。
「じゃあシュウくん、西門に移動するっす。こっちっすよ。」
と言うわけで、俺は何となく疑問を抱えたまま戦地に赴くことになった。
─────────────────────────────────────
「人がいっぱいいるね。」
「冒険者と騎士団、やはり500人ぐらいか。」
王都西門前。予想通り500人ほどが集まっていた。
空気はピリピリと緊張しており、辺り一面に人がいるのにしんと静まりかえっている光景は、異様なものだった。
「みんな緊張しているみたいね。」
「そりゃな。どいつも一流の冒険者に騎士団ばかり。なかなか無謀な戦いであることぐらい分かってるんだろうな。」
「そんなに緊張しなくていいって言ったんすけどね。シュウくんがいれば大丈夫っすから。」
「それは過大評価だと思うがな。」
それに、良く良く聞くと全くしゃべって無いわけではない。回りに合わせても静かにしてはいるみたいだが、ひそひそと話している人もいるようだった。
そんな静寂(仮)を切り裂くように、突然大きな声が聞こえてきた。
「だから!なんで報酬もでないのに戦わなきゃなんねぇんだよ!」
「ちょ、ちょっと、静かにしてよ。」
全員が一斉に声の方を向く。
それは俺たちも例外ではなく、その声の方を向いた。突然の大きな声だっただけではなく、何となく聞き覚えがあったと言うのも理由に含まれる。
声の方向には、一組の男女が口論をしているようだった。といっても、男のほうが一方的に不満を叫んでいるのを女のほうが止めている、といった感じか。
その二人の回りだけ人がいなくなっていたので、すぐに顔を確認することが出来た。
そこには予想通りの二人が立っていた。
「はぁー!俺は帰るからな!」
「絶対参加なんだから、ダメに決まってるでしょ!」
行きの馬車に護衛としてついていた二人。サリナとヴィズであった。
「あの二人、護衛の人だよね?」
「だな。」
普通に考えれば、迷惑な冒険者、と言うことだけだ。だが、一応知り合いであると言うこともあり話しかけようとした、そのとき
「いちいちうるさいんだよ!」
ドンッ!
ヴィズがサリナを押し飛ばした。サリナも一流の冒険者であり、それぐらいで怪我をするような柔な人間ではないが、突然のことだったので後ろ向きに倒れそうになる。
その瞬間、ドォン!という爆音とともに、俺の横を何かが通り向ける。
「あ、あれ?」
「大丈夫っすか?」
「え、は、はい。」
再び前を向くと、そこには倒れかけたサリナを支えているブレーキさんがいた。
「怪我は・・・無さそうっすね。」
「あ、ありがとう。」
突然のことにサリナも動揺していたが、それを見ていた俺たちも驚いていた。
さっきまで俺の後ろにいたのに、いつの間に・・・。
そんな様子を見て、ヴィズが動揺しつつも怒るように聞いた。
「お、お前誰だよ!」
「あっしっすか?」
「お前以外いねぇだろ。」
「あっしはブレーキってゆうっす。」
プシュゥーと体から煙をあげながら、ブレーキさんが答える。
「勝手に人の話の中に入ってきて、礼儀をしらねぇのかよ!」
その言葉に、ブレーキさんがニコッと微笑む。そして、
ドォン!
「その言葉、そっくりそのまま君にお返しするっすよ。」
「っ!」
一瞬で姿を消したブレーキさんは、いつの間にかヴィズの真後ろにいた。その直後に発せられた声は、俺が聞いたことないほど低く、怒気を含んでいた。
圧倒的強者を前にして、ヴィズは後ろ向きに倒れる。
「あっしのスキルは《爆破》なんすけど、時々火薬なんかも使うんっすよ。その火薬、どうやって使うか知ってるっすか?」
回りから見れば、いつ戦いが始まってもおかしくないような状況の中、ブレーキさんは全く違う話を始めた。
「火薬って、そのままじゃ使えないんっすよ。圧縮して、つまり火薬どうしが集まって初めて役割を果たすんっす。これは今の状況も同じっすよ。災害を止める、という役割を果たすために、冒険者や騎士団が集まって集まって、やっと成功するんっすよ。」
最初はなんの話か分からなかったが、例え話のようだ。
ブレーキさんの話はまだ続く。
「そんな中で、君のように集まろうとしないやつがいたら、目的は果たせなくなるんっす。だから、役割がある以上、それをまっとうすることが大事なんじゃないんっすか?」
そういって、ブレーキさんは自分の話を締めくくった。
少し親父くさいとも思ってしまうが、ブレーキさんの新しい一面と言うべきか。
ナナなんかは、目に涙を溜めて感動している・・・。
「とにかく、今回は一人でも多くの人に戦ってもらいたいんっすよ。お願いするっす。」
そして、ブレーキさんはヴィズに対して頭を下げた。
一人の人に対して、ここまで親身になるのはそう簡単なことではないだろう。
「・・・わ、分かったよ。」
「感謝するっす。」
ブレーキさんの態度に申し訳なくなったのか、これ以上ヴィズがどうこう言うことはなくなった。
ブレーキさんがこっちに戻ってくる。すると、ナナが感極まったのか、
「うぅ、いい話だったねぇ~・・・。」
「それは否定しないけど、そんなに泣くほどかしら?」
「そ、そんなこと言わないでほしいっすよ。」
それから少しして話を切り上げ、西門の外へと出た。あとに続いて、ぞろぞろと冒険者や騎士団たちが出てくる。
俺としてはスタンピードがやって来る前に少し準備をしておきたいのだ。
「それで、シュウ。準備って何をするのかしら?」
「あぁ、スタンピードが来るのに備えてだな・・・」
マリアがそう聞いてきたので、準備をしながら答える。
スキャナーには《衝撃弾》のメダル。そして、手にはレベルⅢの手榴弾と衝撃弾を持つ。
「今からここに、堀を作る。」
「「「えぇ!?」」」
俺の発言に、マリア、ナナ、ブレーキさんが再び驚きの声を上げた。
久しぶりの戦闘に入ります!
読者の皆さん。この作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。どんな些細なことでもいいので、感想をいただければ嬉しいです。
評価、ブクマもお願いします!




