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正装って必要だよね?

「朝ごはん、美味しかったね~。」

「そうだな。さすが王宮って感じだったな。」


朝起きると、少しして待女の人が朝食を運んできてくれた。この世界は基本的にパンが主食らしく、王宮の朝食もパンとスープだった。

パンとスープと聞くと普通な感じだが、これがほんとに旨かった!日本でもなかなか出会えないぐらいの味ではあったと思う。


そのせいで少し食べ過ぎて体が思いのだが・・・。


ということで、お腹が落ち着くまでしばらく部屋にいることにした。別に午前中は暇なのでずっといてもいいのだが。


「そういや、準備はできてるんだよね?」

「あぁ、花火弾もたくさん作っておいたから大丈夫だ。」


花火を打ち上げるに当たってやはり量が欲しいのだが、その場で作ると5つ(・・)までしか作れない。


ここで少し説明しておこう。

手榴弾を除いたメダルのグレネードは、一度に出せる量が決まっていて、それはメダルのレベルと同じになる。今のところメダルを買うときは一気にレベルⅤまで上げるようにしているので、5つまで出せるわけだ。そして、すべて使いきってしまうと30秒のクールタイムが必要になる。因みにメダルを取り出してもクールタイムが無くなったりはしないため、必ず30秒は待たないといけない。


つまり、花火弾も一度に5つまでしか打ち上げられないのだ。

花火自体がこの世界にはないので数は少なくてもいいかも知れないが、せっかくなら一気に打ち上げてその迫力を伝えたい!

というわけで昨晩色々やってみた結果、一度出したグレネードはそのまま保管できて、クールタイムが終わればまた出すことができる、ということが分かった。

嵩張ってしまうのは大変だが、それもナナの大容量袋のお陰でどうにかなる。


今回は100発分の花火弾を作っておいた。袋の容量的な問題もあるが、それ以上になると投げるのが大変という体力的な問題もある。


まぁ100発あればどうにかなるだろう、なるよな?


昨晩のことを思い出していたので少しボーっとしていたみたいだ。気がつくとナナが俺の顔を覗きこんでいた。


「シュウ・・・。」

「あ、あぁ、大丈夫だ。」

「ち、違うの・・・。」


ん?なんだ違うのか?


なぜか硬直しているナナだが、徐々に青くなっていくナナの顔に俺も怖くなってきた。


「ね、ねぇ、シュウ?」

「な、なんだ?」

「あのね、その・・・。」


ナナが少し戸惑うように話始めた後、予想していなかった言葉が飛び出した。


「パーティーって何着ていけばいいんだろ・・・。」

「え?」


一瞬、互いに向き合ったままフリーズする。そして、頭がその言葉の意味を理解した瞬間、


「「あぁぁーーーーーーーーーー!!」」

「や、ヤバイよね!マズいよね!」

「完全に忘れてた!買いにいかないと・・・ってそんなお金持ってきてねぇー!」


行き帰りの宿代と、観光用に余分に持ってきた分、しめて30000ミルぐらいしか持ってきていない。それに対して俺とナナの正装を買うには・・・最低でも10万ミルぐらいはかかるだろう。ぬいぐるみ同様、布製品は案外高い。10万ミルでも質の悪いものになってしまうだろう。


「「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ・・・。」」


二人してしばらくあたふたする。何かいい案はないか、いい案は・・・。


「「あ、」」

「あの人なら、」

「やってくれるかもしれないね。」


どうやらナナも同じことを考えていたようだ。そして、気づいたときには二人してある場所へと向かっていた。


──────────────────────────────────────────


「な、なんですかぁ!」


甲高い声が店内に響く、が今日も他にお客さんはいないみたいで誰かに見られることもなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ、その、頼み事があって、な。」

「頼める人が、他に、いなくて。」


急いできたので息切れが激しいが、一刻を争う事態だ。俺とナナは、眼鏡にきれいな栗毛髪の少女、ルーンに向けてこう言った。


「「俺(私)たちの服を作ってくれ(ください)!」」

「は、はいぃ!?」


三人揃ってパニックになり、話をするのに時間がかかってしまった。


「はぁ・・・。と、とりあえず裏に来てください。」


というわけで、裏で詳しい話をすることになった。



「───────というわけなんだが、」

「そ、それはほんとですか!」

「あ、あぁ、」


あれ、なんかテンション高くない?もしかして、


「さ、最高じゃないですかぁ!可愛い、モフモフのナナちゃんに服を作る、その横に並ぶシュウくんの服も作れる。はぁ~、私、やります!やらせてください!」

「お、おぅ・・・。」


なんだか、やる気がすごいな・・・。まぁはりきってくれるのは嬉しいことだが、


「で、でもお金今払えないよ?」

「そうだった・・・。」


いくらなんでも金が払えないのは問題だからな。どうするか・・・。


「お金なんて、後でいいですよ!この機会、逃すわけにはいきません!」

「で、でもな、」

「そ、それだったら・・・。」


ん?何かあるのか?


「今度ナナちゃんを存分にモフモフさせてください!」

「「え?」」

「だ、ダメですか?」


いや、ダメというか、俺が言うのもあれだがそれでいいのか?


「ルーンちゃん、そんなことでいいの?」

「はい!それ以上の幸せはありません!」

「それならいつでもモフモフされにいくよ?」

「ほ、ほんとですか!やったぁぁー!」


なんかトントン拍子に決まってしまったが、ナナも嬉しそうだし、なによりルーンが異常なほど嬉しそうだ。


「じゃあ早速作り始めます。一時間で終わらせますよぉ!じゃあ外で待っておいてくださいね。」

「い、一時間!?それも驚きだが、採寸とかはいいのか?」

「はい。見たらわかるんで、昨日のうちにメモしておきました。いつかナナちゃんの服作りたいなぁって妄想して・・・はぁぁ~。」


なんだか大変そうだが・・・とにかく俺たちは外で待っておくことにした。



きっかり一時間ほどしたところで、ルーンが裏から出てきた。手には作った服を持っている。


「できたか?」

「はい!最高のができました。早く着てみてください!」


早速出来た服が渡され、俺とナナはそれぞれ試着室に入れられた。動物をモチーフにした服も売っているので、試着室も置いてあるのだ。


俺の服は、いわゆる燕尾服というやつに近いものだった。真っ黒ではなく、少し茶色の含んだ黒だ。どこから見ても一時間、二着なので実質30分で作ったとは思えない品質だ。


試着室のカーテンを開けて外に出る。


「どうだ?」

「見立て通りですね!やはり真っ黒よりは少し茶色っぽいほうが良かったです。」


そこも考えてのことだったわけか。少しすると、ナナの方も着替え終わったようだ。


「着替え終わりましたか?」

「うん。終わったよぉ。出るね。」


そして、カーテンを開けてナナが出てくる。その瞬間、


「「っ!」」

「え?どうしたんですか?」


俺とルーンが固まる。そして、


「か、可愛すぎるぅ~!」

「同感だ。」


白にピンクを混ぜた女の子らしい色を使ったドレス。スカートがフワッと広がり、そこにもまた可愛らしさを感じる。


「か、可愛い、ですか?」

「もちろ・・・。」

「もちろん!最高だよぉ!フワフワにフワフワを重ねて、可愛くない訳がない!あぁ、50分もかけて悩んだけど、うまくいってよかったぁ。」


俺が答えようとするも、被せるようにマシンガントークをぶっぱなすルーンに遮られる。

てか、俺の服実質30分で作ったんだと思ってたけど、あれ10分でつくったんすか?それであの完成度とは・・・。


「シュウも、これでいいと思う?」

「あ、あぁ!最高に可愛いと思うぞ。」

「はぅ・・・。」


正直に答えただけなのだが、その声を聞くのは久しぶりだな。最近はミミとか触ってもスリスリしてくるだけだったし。シッポはあまり触ってないからわからんが・・・。


「二人の服を作れてほんとに(・・・・)良かったです!」

「そうか。俺たちも助かったよ。」

「うん。ルーンちゃんがいなかったら大変なことになってたね。」

「いやぁ~、照れるじゃないですかぁ。とにかく、パーティー、楽しんできてくださいね!」

「一応主賓だしな。」

「あと、約束も忘れないでくださいよ?」

「「約束・・・あ、」」


危ない、忘れるところだった。


「わ、忘れてたんですかぁ!」

「ご、ごめん。でもちゃんとモフモフされにいくから、大丈夫だよ。」

「俺も、覚えておくようにするよ(たぶん)。」

「たぶんってなんですかぁ!」

「私が覚えておくから!ね?」


おぉ、心の声が漏れてしまった。昔から物事を長期的に覚えるのは苦手でな。


「・・・ならよしです。準備もあるでしょうし、そろそろ王宮に戻った方がいいのでは?」

「そうだな。ほんと助かった。また来るよ。」

「ルーンちゃん、ありがとね!」

「どういたしまして、またのご来店をお待ちしております!」


ルーンのおかげで、どうにか正装を準備することが出来た。


ちゃんと約束を覚えておかないとな・・・。

感想でご指摘があり、服についてのエピソードを書きました。

次話からやっとパーティーが始まります。


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