儀式
無事、パーティー用の服もつくってもらうことができ、最終確認しつつも部屋で時間を潰していた。
「あわわわわわ・・・。」
「ナナ」
「はわわわわわ・・・。」
「ナーナ」
「あばばばばば・・・。」
「・・・ナナ!」
「ひゃ、ひゃいぃ!」
さっきからナナはずっとこの調子だ。
「もうちょっと落ち着け。ほら、吸って~」
「すぅ~」
「はいて~」
「はぁ~」
「もっかい吸って~」
「すぅ~」
「もっと吸って~」
「すぅ~~」
「もっともっと吸って~」
「すぅ~~~!」
「もっともっともっと吸って~!」
「すぅ~~~~・・・・・・ゴホッ、ゴホッ!うぅぅ、私で遊ばないでよぉ。」
「あはは、すまんすまん。それでどうだ?緊張はおさまったか?」
「え?う、うん。ありがと。」
どうやらうまくいったようだ。緊張したときはまず深呼吸(?)だからな。
「やっぱり緊張するのか?」
「そりゃもう、ガッチガチだよ。王都に来るどころか、国のパーティーにまで出席するなんて夢にも思ってなかったもん。そうゆうシュウは緊張しないの?」
「まぁ人が多いところはそれなりに慣れているってゆうのと、あと国のパーティーってのがどんなものなのかあまり知らないってゆうのも大きいんだろう、あまり緊張は感じないな。」
慣れているというのは、日本でのゲーム大会とかのことだ。あれは自分がゲームに没頭しているためあまり緊張しないし、けど人には注目されるからいつの間にか人前で緊張することはあまりなくなったな。
それからもナナの緊張を少しでも和らげるために、パーティーの時間まで他愛もない話を続けていた。
しばらくして、そろそろかな?と思い始めた頃、タイミングよく扉をノックする音が聞こえてきた。
「シュウくん、ナナさん。そろそろ時間っすよ。」
「ブレーキさんか。連絡ありがとな。」
「まぁこれがあっしの仕事っすから、当たり前っすよ。」
あっさりと返してくるが、これぐらいの方が話しやすくていい。
そんなことを考えつつも、俺とナナはパーティーの支度をした。といっても服はもう着ているので、あとは花火弾とかを入れた袋を持っていくだけだ。
すぐに準備も終わり、ブレーキさんについて会場に向かった。
廊下を歩きながら、ブレーキさんが今後の予定について教えてくれる。
「今日のパーティーっすけど、まずは《謁見の間》で王から今回の功績を讃えた報酬を渡されるっす。まぁそれっぽくやってくれればいいっすよ。」
そ、それっぽくと言われてもな。それっぽくするしかないのか・・・。
「で、その儀式が終わったら場所を《大広間》に変えて、本格的にパーティーが始まるっすよ。最初に王が、今後について、つまり獣人のことについての話をするっす。それが終わったら普通にパーティーを楽しんでもらったらいいっす。料理もデザートもいっぱいあるっすから、貴族の方たちともお話ししつつ食べてくれたらいいっすよ。」
「お料理!デザート!楽しみぃ~。」
ナナはそこにしか目が行ってないみたいだ。まぁ貴族なんてどうでもいいとは思うけど。だいたい貴族ってなると傲慢なイメージがあるし、特に獣人へのイメージがすぐに良くなるわけではないからな。どう思われるか分からない分、気を付けなくては。
「一応パーティーなんだから、食べてばっかりになるなよ?」
「わかってるよ~。フフ~ン♪」
絶対分かってないな。
・・・俺が対処すればいいか。
諦めの境地にたどり着いた俺に、横から声がかかった。
「シュウくん、ナナさん。ついたっすよ。」
「あ、あぁ。」
「わかった~。」
「こっからはちゃんとした儀式になるっすから、落ち着いた行動をお願いするっす。」
「わかった。」
「大丈夫だよ。」
ナナの声のトーンが少し下がる。落ち着いた雰囲気というのをイメージしてのことだろう。
ナナが意識してくれてるわけだし、良いことだな。
「じゃあ、開けるっすよ。」
ブレーキさんが正面にある大きな扉に手をかける。ここが《謁見の間》らしい。
ブレーキさんが扉に力をかけた。
ゴオォォ。
徐々に開いていく扉の隙間からは、眩い光が漏れだしてくる。目が慣れてきて、部屋に入っていくと、両側には貴族と思われる人たちが並び、床には赤い絨毯が真っ直ぐに敷かれている。その先には10段ほどの階段、そしてオスペオさんが椅子に座っていた。
光の明るさとは裏腹に、しんと静まり返った会場を俺とナナが歩く。ブレーキさんは扉近くで止まっていた。
階段手前まで来たところで一度止まる。
いや、なんにも言われてないんだけどね。何となく勝手に階段は登るもんじゃないと思ったのでな。
階段前で跪く。それを見て、遅れてナナも跪く。これも全部アドリブだが、たぶん間違いではないはず。
少ししてオスペオさんが話始めた。
「頭を上げてくれ。」
その声に合わせて俺たちは頭を上げる。オスペオさんも、人前だからか声のトーンが低いな。一国の王とナナの考えが同じなのはどうなのだろうか・・・というのは心に秘めておこう。
「シュウ、ナナ。この者たちは、ゲッカの森において新しい遺跡を発見し、魔石についての重要な書物を見つけてくれた。このことは、今後の魔道具の研究に大きな利益をもたらすであろう。この功績を讃え、この儀式において二人に報酬を与える。」
「ありがとうございます。」
「あ、ありがとうございます!」
やっぱりナナがちょっと緊張しているな。そもそも"ありがとうございます"でよかったのか?ありがたき幸せ、とでも言うべきだっただろうか?まぁ笑われたりザワザワしたりもしてないみたいだし、大丈夫か。
「まず、5000万ミルの報酬金を渡す。これは二人の家に直接送っておこう。」
ご、5000万ミルだと!これだけあれば色々買えるな。そしたらナナの喜ぶ顔もたくさん見られる・・・。楽しみだな。
あまりよくはないのだろうが、ナナと笑顔で顔を見合わせた。
「次に、シュウは冒険者ランクをDからAに昇格する。」
この報酬に、回りの貴族や隊長らしき人たちがどよめく。Aランク以上ともなれば、Bランクまでとは違い国との連携も大きくなる。その中でも、王都を含めて町の移動でお金がかからないというのが大きい。これは依頼を素早く受けられるようにするためのものだそうだ。
因みに、依頼を受けていく中でDランクまでは上がっていたのだ。
それが一気にAランクまであがるのだ。回りがどよめくのも当たり前である。
「現在、Aランクは13人、Sランクは2人しかいない。国としては、若く有力な力をどんどん取り入れていきたい。よって、今後の活躍を期待した上での報酬だ。受け取ってくれるかね?」
やっぱり口調が変わっているな。まぁそうゆうものなんだろうな。答えはもちろん、
「ありがたく受け取らせていただきます。」
「いただきます!」
不自由になるわけでもないらしいし、こっちにはメリットしかないからな。受け取らないわけがない。
そう言って頭を下げると、回りからは拍手が聞こえてきた。形としてというのも多いだろうが、嬉しいことだな。
「それでは、大広間に移動しよう。パーティーを始めようではないか!」
オスペオさんの宣言に合わせて、拍手がさらに大きくなる。
俺たちも同じように拍手をした。
「やっとパーティーだね。」
「だな。ここからが勝負だからな。」
「うん!わかってるよ。」
そう、こっからが勝負なのである。獣人のイメージを回復するための、大切な戦いだ。
そして、俺たちは《大広間》へと移動していった。
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