生徒会戦と聖人と四天王 その3
兵部高校生徒会役員……男子2人に女子3人の計5名。
最初に目に入ったのは小麦色の肌で、髪の毛を肩に届くくらいで切り揃えた活発そうな少女。
彼女に1番最初に目がいった理由はというと、彼女は備え付けであろうパイプの上に逆立ちしていた。
そして彼女が逆立ちしているパイプ椅子の下にはさらに5脚のパイプ椅子が置いてあり彼女の足が天井に触れそうである。
そして逆立ち少女の隣には身長195センチはありそうな坊主頭の巨漢が腕を組んで佇んでいた。
圧倒的な威圧感だ………怖い。
目付きも悪いし、筋肉も凄い。
近寄りたくないな。
3人目………派手な装飾品を身体中にまとった男子生徒。
見るからに軽薄そうなやつだ………一言で言うとチャラい。
髪の毛に何箇所もメッシュを入れているせいで頭にオーロラが出来ているし、シルバーアクセサリーを多量に身に付けている。
磁石を近づけたら引っ張れそうだな………
「よく来たな歪花………歓迎するぞ」
俺が4人目の金髪少女を分析しようとしたところで坊主頭の巨漢が会長に話しかけて来た。
「歓迎ありがとう不動君、今日はいい試合になる様互いにベストを尽くそうじゃないか」
会長は彼の言葉に社交辞令気味な返事をすると俺達の方を向いて
「彼は兵部高校の生徒会長だ。名前は不動 大地」
不動先輩は俺達の事を不思議そうな顔で見渡した。
「歪花………彼らは?」
「ああ、紹介しよう僕の生徒会の新メンバーだ」
「新メンバー………だと、あの3人はどうしたんだ?」
「………あいつらには生徒会を辞めてもらったんだ」
俺達の前に生徒会にいた3人………
生徒会室に直談判しに来た須郷先輩達が言っていた。
生徒会を辞めさせられた自分達の委員長………
いったいどんな人たちだったんだろうか?
そんな俺の考えとは裏腹に不動先輩は笑っていた。
ひとしきり笑った後馬鹿にする様な言い方で
「………今日の生徒会戦は俺達の全勝で終わりそうだな、歪花?」
会長は眉間にシワを寄せ、怪訝そうな顔をして
「ずいぶんな自信じゃないか………確かに彼らは生徒会戦は初めての経験だし負けるかもしれないだろうね」
ほんの少し、ほんの少しの怒気を含ませて
「だけど、君が僕を倒す事なんて不可能なんじゃないか?」
そういえば………兵部高校の会長と相性がいい的な事を言っていた。
口振りからして会長は不動先輩の戦闘スタイルやアーツの詳細を知っているのだろう………その上で会長は自分が有利だと思っている。
けど会長の声には不安があった。
「今日の試合形式は役職ごとの1対1………それに間違いはないよな不動君?」
「そうだ……………そしてだからでこそ、お前の相手は俺ではない。」
「どういう意味だ不動……兵部高校の会長は君だろう?」
会長は苛立っている。
というより焦っているのか?
それに対して不動先輩は落ち着いた声で
「歪花………お前は1つ勘違いをしている。兵部高の生徒会長は俺じゃない。」
「じゃあいったい………誰が?」
「私ですよ………………雫ちゃん………」
4人目の生徒会役員………金髪で、日本人離れした美しさを持っている。
身長は会長よりも低くて150チョットって感じだ………身長は低いがスタイルが悪いわけではなく、出るところでている。
ミディアムボブにした輝く金髪の中から大きくて真っ赤な瞳がこちらを見つめている。
綺麗な人だ………まさに高嶺の花って感じだ。
「君が………生徒会長だと?」
「はい。それにしても久しぶりですね、中学校以来じゃないですか?」
会長は平静を装っている………というか今までも会長は外見に感情を出す様なことはしていない。
俺が会長の焦りや怒りを探知出来るのは俺のアーツのおかげだろう。
だからでこそわかる。
会長の感情がここまで揺らいだのは俺が見て来た中で初めてだ。
彼女は本当に焦っているしどこか恐怖している。
けどそれを表情に出す事はない………完璧なポーカーフェイスだ。
「正気で言っているのかい華仙?」
「………本気ですよ。」
華仙と呼ばれた彼女は俺達に向き直り
「兵部高校生徒会長の月光ヶ原 華仙です。」
丁寧にお辞儀した後に
「会長になったのは1週間前なんですけどね」と付け加えた。
月光ヶ原………会長と同じ名家のうちの1つ。
ならむしろ生徒会長になるはおかしい事ではない気がする。
「不動君………僕を嵌めたね?」
「何を言っている歪花………俺はお前にリベンジする機会を与えただけじゃないか。お前に唯一、黒星をつけた月光ヶ原にリベンジするチャンスを」
会長に黒星をつけた?
会長は月光ヶ原さんに1度負けているってことか。
話を聞いていた副会長が顔をしかめて
「マズいな、会長戦はほとんど負けが決まった様なもんだぜ」
「余裕かましていられるのも今の内だぞ野晒………お前の相手は俺だ。この時点で俺達の2勝は決まっているんだ」
「あ?」
挑発的な発言をする不動先輩に副会長が食って掛かる。
至近距離でメンチの切り合いになってしまった。
そして畳み掛ける様にしてチャラ男と逆立ち娘が
「しかも他の面子も一年坊だけだろ?」
「さすがに余裕でしょーーーー負けない負けない」
なかなかいい煽りじゃねえーか………
流石の俺もちょっとイラついて来た。
それは夜々木と春臣も一緒の様で
「きー!!なんか感じ悪くない?」
「確かにここまで言われるとは思わなかったよ………なら僕達一年だけで3勝もぎ取って見せましょうか?」
「春君ナイスなアイディアだよ!!」
俺達だけで3勝………
難しい条件だが、これだけ言われて黙っているわけにもいかない。
やってやるよ……俺達3人の心は完全に一致していた。
「それは無理よ………だってマリーがいるもの」
5人目………
すっかり忘れていた。
というか見ない様にしていた。
だって彼女は明らかに異質だったから。
まず日本人ではないだろう……見た感じヨーロッパ系の白人で、容姿はかなり幼くみえる。
幼く見えるっていうか、本当に12才くらいじゃないのか?
金髪のサイドテールで編み込みが施されており、服装は黒を基調としたドレス……ゴスロリ的な。
とりあえず確実に制服ではない。
西洋のお人形さんを彷彿させる様な見た目だ。
春臣の大好物って感じだ。
そして予想どおり春臣はさりげない動きで彼女に近づき、どこからともなく大量のお菓子を取り出すと
「僕の名前は久我山 春臣、ところで君お腹空いていない?お菓子いっぱい持ってるんだけど食べるかい?」
早速餌付けを始めた。
「あら?御丁寧にどうもありがとう……マリーの名前はマリーよ。好きに呼んでちょうだい」
すると会長は間髪入れずに彼女へ質問した。
「おい幼女……君は去年いなかったよな?新入生か?」
「やっぱり、マリーって呼んでちょうだい」
そして彼女は会長の質問に答えるのではなく
「ところで貴方が歪花 雫でいいのよね?」
と一言、確認する様に言い。
「美鈴と桔梗は元気にしているのかしら?」
その問いを聞いた瞬間、会長の鉄仮面が剥がれ落ちた。




