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涙も枯れた頃、羽七子の首のあたりに再び手をやってみた。…息をしている。生きてる。
…良かった。
―――――――――良かった?
良かった?本当に?
―――――何が良かった?
そもそも僕は、何がしたいんだろう。………欲しい、羽七ちゃんの全部が。誰かに汚される前に、僕が全部を。
心も、体も、命さえも。
「――――あ…」
ようやく、人間の心に戻れたと思っていたのに。
「――――――駄目だ…」
このままじゃ、きっと、僕は羽七ちゃんを………あの悪夢が蘇る。血まみれの羽七子。手には緋色に光る液体がべったりと付いたスティレット。自分の言葉…――――――「そうしたら僕ら…ずっと一緒にいられるでしょう?」――――――
僕は軋むベッドから降りる。もうたくさんだ。自分にうんざりだ。本当に心底愛しているのに、傷つけることしかできない自分が大嫌いだ。
…今まで大好きな人を傷つけることにしか使ってこなかったカッターを手に取り、光る刃を出した。
「――――――ごめん」
羽七子の閉じた眼の奥の表情をも読み取ろうとするように、最期にしっかり顔を焼き付けておいた。
「さよなら。」
人間の首にならあるはずの血管を、自分の手で切り裂いた。
まだ続きますよ。あまりに楽しくて、一気に投稿しちまいました