第2話:萌える金髪ロリジャージ
ここ聖黒守学園高等部の屋上は風が吹いていた。
入学式が終わり始業式も終わって新入生歓迎会すら終わり、本格的に授業が始まる今日この頃。
午前10時半の出来事である。
パンチラ少女こと小波エミルは授業をすっぽかした約1名不良生徒を授業に連行しようと校舎の屋上へ訪れていた。
「やっぱりここにいた!」
優所正しき聖黒守学園で唯一不健全なヤンキーこと神鳴辰巳を発見した。
風下に行かないようにタバコの煙に十分警戒をしながら寝転ぶ彼の傍まで寄った。
「こら、高校球児がタバコなんて吸っちゃ駄目じゃないか。めっ!!」
「だから俺は高校球児じゃねーっての……」
不良生徒、ヤンキー、おたんこなすの三代名詞な彼に注意しても無駄なのだが、それでもエミルは己の必殺技・パンチラを誘発させてヤンキーの下心を鷲掴みに……
「はっ、わりーが俺はお前のパンチラを見てもムラムラしねーんだわ……」
「心にグサーッ!!?」
痛恨の一撃。
先日の敗因もやっこさんがパンチラの誘惑に引っ掛からなかったのも原因の一つ……こんなはずじゃなかった。
エミルは女としての自信を失いつつあった。
ちなみにエミルはジャパンとオーストラリアのハーフで美少女だ。美脚にも自信があった。だがもうすでに過去形。
「じゃなかった!勝負だよ勝負!今日こそ勝たせてもらうんだから!!」
「えー……お前、授業をサボってる俺を連れ戻しにきたんじゃねーのぉ……??」
そういえば、手にはグローブとボールとバットとキャッチャーミットが抱きかかえられていた。
ヤンキーはそれを見て呆れ顔になる。
こいつも授業サボる気まんまんだ。
「はぁ、何度やっても結果は同じなのにお前も懲りないね……」
「ふっふっふ、ところがどっこい今日のボクは一味違うのだ!」
作戦がある、と薄気味悪い笑みを浮かべるエミルにげんなりするヤンキー。
どうしてここまで自分に執着するのか……否、分かりきったことだった。
素人だらけの弱小野球部には経験者が喉から手が出るほど欲しいよな。
だから、野球をしたくないのだ。
だから、野球がもっとキライになりそうだ。
だから、今日もエミルを完膚なきまでに叩きのめすつもりだった。
「東條先生、お願いしまーす!!」
「自分で戦わんのかい!?」
早くも助っ人の登場に思わず突っ込んでしまった。
しかも今は授業中の出来事である!!
「隙あり!タバコは没収よ!」
「先生ナイス!」
「あ、てめぇロリジャージ!!」
ロリジャージこと担任の東條千鶴がちょこまかとヤンキーの魔の手を躰して身を翻してタバコを没収した。
ロリジャージを追えばエミルにタバコをパスされ、エミルを追いかけたらロリジャージにパスされ翻弄されるヤンキー。
彼の走力はGもいいところ、これだけに関して云えば彼女達の勝利であったであろう。
もうすでにヤンキーは戦意喪失している。タバコは諦めた。このヤンキーくんにとって一箱ぐらい無くたってへのかっぱである。
「さあバットを構えなさい。甲子園出場したことがあるこのアタシが投げて不良生徒なアンタに引導を渡してあげるわ!!もとい健全な高校球児にしてあげるわ!!」
生徒の見本にならない金髪に染めたロリジャージが仮想マウンドを、足元のコンクリ蹴って確かめた。
いっちょまえに様になっている。
だが!!
「ぷぷーっ、墓穴を掘るとはこのことだな!!万年補欠だったピッチャーなどこの俺様の敵じゃないわー!!ふははっははーー!!」
「な、なんですってぇっ!!アタシが気にしていることをよくも……っ!!アンタんとこの姉がチートだっただけよ!!アタシだって投げれば凄いわよ!!」
「でも二番手でしょ?」
「こんのクソガキぃ!!」
もう既に勝負は見えてそうだが。
それでもロリジャージは振りかぶって渾身の恨みを込めて投げた。
一球目は危険球だ。
避けなければデッドボールとまた教師として生徒へのお手本にもならない大暴投である。
今回キャッチャー役のエミルであったが、やはりブランク有り万年補欠ピッチャーの危険球じゃこのヤンキーには勝てないと悟った。
カキーン!
ヤンキーは死んだ魚の目で危険球を見極め強引に打ち返した。
打球は高く伸びて、そして、また校舎からパリンと何か割れる音がした。
念押しで確認しておくが授業中の出来事である。
「バカバカバカバカバカバカバカバカー!!このおたんこなすー!!」
「「………」」
おたんこなすはアンタだ東條先生。
この日、聖黒守学園のロリジャージ教師は微熱を出して早退したそうな。
メンタル、弱っ。




