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第4話 作れなかった、光

光の祭りの夜。


街の広場は人で賑わっていた。

屋台が軒を連ねていた。

焼いた肉の匂い。

果実酒の、甘い香り。

子供たちの、走る音。

老人たちの、低い祈りの声。

夜空がいつもより、白く、明るかった。

無数の光の珠が上っていくからだった。


「ノア、あれ、見て」

シエルがノアの袖を引いた。

「みんな、光を、作ってる」


ノアは見た。

街の人々が両手で何かを丸めていた。

小さな、光の珠。

手の中でぼんやりと、輝いていた。

やがて、放たれた。

夜空に上がっていった。

星のように。

遠く、遠く、消えていった。


「光は、亡くなった人々の魂、なんだって」

シエルが言った。

「年に一度、空に昇って、私たちに、会いに来てくれる」

「ありがとう、って、伝えるために」


シエルは自分の手を合わせた。

ゆっくりと、丸めた。

手の中で小さな光が生まれた。

淡い、青白い光。


「お母さん」

シエルが呟いた。

「リオ」


シエルが光を放った。

光は夜空に上っていった。

星のように、消えていった。


シエルの目は潤んでいた。

しかし、シエルは泣かなかった。


「ノアも、作ってみる?」

シエルが言った。


ノアは両手を合わせた。

目を閉じた。

待った。


しかし、光は生まれなかった。


「俺は、魔力ゼロだ」

ノアが言った。


「ううん」

シエルが首を振った。

「関係ないよ」

「これは、想いを、込めれば、誰でも、作れるの」

「魔力じゃ、なくて、心、だから」


ノアはもう一度、両手を合わせた。

目を閉じた。

待った。


しかし、光は生まれなかった。


「俺には、想いが、ない、ようだ」

ノアが呟いた。


シエルは悲しそうに笑った。


「そっか」

シエルが言った。

「でも、いつか、作れるよ」

「きっと」


ノアは空を見上げた。

光が無数に流れていた。

夜空が星よりも明るかった。

ノアの中で何かがざわついた。


翌朝。


扉が強く、叩かれた。

ノアが扉を開けた。


武装した男たちが立っていた。

白い長衣。

胸には、帝国の紋章。

国家回収部隊だった。


先頭の男が口を開いた。

四十前後の男。

黒い髭をたくわえていた。


「ヴェルニス、家のノアだな」

男が言った。

「俺はガレス・ヴァルダー」

「国家回収部隊長だ」


ノアは答えなかった。


「お前の感情封印が、不完全と、判明した」

ガレスが言った。

「再封印のため、連行する」


ノアの背後でシエルが息を呑んだ。

ノアは振り返った。

シエルは奥の地下倉庫へと、走っていた。


「待て」

ガレスが言った。

「家を、捜索する」


兵士たちが家に入ってきた。

地下倉庫へ、向かった。


ノアは動けなかった。

動こうとしても、動けなかった。

ノアの中で何かが激しく、ざわついた。


地下倉庫の扉が開いた。


シエルが出てきた。

淡い金髪が乱れていた。

粗末な布が土で汚れていた。

緑の瞳がノアを見ていた。


「ノアを、連れて、行かないで」

シエルが言った。


声が震えていた。

だが、目はノアから、離れなかった。


「ノアを、連れて、行かないで」

シエルが繰り返した。


ノアは凍りついた。


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