騎士視点
先祖代々俺の家系は、城の騎士団長をしていた。王国も俺達の家族を信用していて、出来ればずっと傍で使えていて欲しいと言っていたらしい。
でも俺は双子で産まれた。そして2人とも”女”だった。
母はもともと体が弱いせいか、次の出産は辞めた方がいいと医者に言われてしまった。
父は母をとても愛しているので、側室を考えることも無く、母に無理やり産ませることもなかった。
しかし騎士になっているのは、ほとんど男で女は少ない。それに女だと馬鹿にされることもあり、騎士団長になりみんなをまとめるのは難しい。
父は好きに生きなさいと言ってくれたし、母も同じ気持ちだった。
でもたまたま先祖代々続いていたことが終わってしまうことを、寂しそうに父と国王が会話しているのを聞いてしまった。長く続いた事を私のせいで止めてしまうのは、心苦しかった。
だから俺は女を捨て男として生きていくことを決めた。口調も変えたし、ドレスは全て捨てた。しかし体は変えられなかった。どうにか胸が大きくなるのは魔法で隠している。
騎士になるため毎日剣を振り、男に負けないよう魔法も極めた。おかげで今では騎士団長になれた。
俺が女なのは王国のトップの4人と家族だけ知っている。それ以外の人達には秘密になった。もしバレれば団長という地位を無くしてしまうし、家族にも迷惑がかかってしまう。
俺は一生恋などせず、一人で生きていくと思っていた。
その思いを変えたのは、聖女様だった。
ある日騎士団長として、聖女様を守護するものとして任命された。これはとても名誉な事だ。それを任命された時は思わず泣きそうになった。俺の努力が認められた気がしたからだ。
しかし異世界から来たという聖女様は初めてのことだらけで混乱しているからと、1週間は会うことは出来なかった。
そして初めて会った時、不安げに俺を見ながらも丁寧に頭を下げて挨拶した姿。柔らかそうな黒い髪に、大きな黒い瞳はとても可愛らしかった。
命をかけて守りますと伝えたら、嬉しそうに頬を染めて微笑んだ顔は、すべて俺の胸に突き刺さった。
つまり聖女様はめちゃくちゃ可愛い!!
俺を見つけるとホッとした表情や、逆にいないと不安げに辺りを見渡す姿は可愛らしい。
しかし聖女様は俺を男だと思っている。もし騙していたと分かったら嫌われるかもしれない。
「聖女様、お昼ご飯の用意が出来ました」
俺は聖女様の部屋の扉をノックした。
「今行く」
声がして聖女様が出てきた。今日も可愛らしい。俺と目が合うと少し恥ずかしそうに微笑んだ。
今すぐ押し倒したい気持ちを抑えて、食堂に連れていく。その間、聖女様は何やら考え事をしていた。食堂についても無言のまま料理を食べている。可愛いが心配なので声をかけた。
「聖女様、何か悩み事ですか?」
「あ!いや……」
「俺でよければ力になります」
俺には言えないことかもしれないが、聖女様の為ならなんでも出来そうな気がする。そう思いながら聖女様を見つめていると顔を赤くした。可愛い。
「っ……、その、えっと、この世界って男女が結婚するんですよね?」
結婚…だと?
え!?誰と結婚するの?まさか第1王子と結婚の話があったの?歴代の聖女様は王族の人と結婚するのが多いけど、分かっているがすごく嫌だ。
一瞬混乱したが、それを悟られないように答えた。
「はい、主に男女の結婚が多いですが、この世界には獣人などいます。なので特に性別は関係なく結婚は出来ますよ」
「そうなんですね」
性別は関係なくの所を強調しといた。女同士(心は男)でも結婚出来る。
すると聖女様は手を止めて何処か不安げだ。
「聖女様は、気になる殿方がいるのですか?」
「え?い、いや、その……」
赤くなった顔で否定したが、これは誰かいる表情だ。やっぱり第1王子か、第2王子か……。
赤い顔で俯いてしまった聖女様は可愛い。でも好きな人がいるのはショックだ。
「申し訳ございません、困らせるつもりはありませんでした」
これ以上可愛い聖女様を見ていたら理性がもたないので謝ると、聖女様は慌てた様子で首を横に振った。
「そんな!騎士様のおかげで少し悩み事が解決しました」
「本当ですか?良かった」
そう言って貰えて俺は思わず笑った。
すると聖女様は俺の顔を見たあと、胸に手をやった。どうしたのだろうか?
「聖女様?大丈夫ですか?」
「はい」
ニコッと笑った聖女様はとても可愛らしく俺は悶絶しそうだった。
いつか、聖女様にこの思いが伝えられたら…そう思いながら俺は聖女様を見つめていた。
読んで頂きありがとうございました。
騎士(♀)
女を捨て男として生きている。
最近聖女が可愛い過ぎて本当に男になりたいと思っているが、体を変わるのはなかなか難しい。
ちなみに必死に聖女の好きな人を探している。