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じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


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カルド砦の再会騒ぎ





 グランディル山岳王国を出て二日。


 一行は山岳街道の中継拠点、《カルド砦》へ辿り着いていた。


 巨大岩盤を削って築かれた山岳要塞。


 灰色の石壁。


 高い見張り塔。


 吊橋。


 行き交う商隊。


 険しい山道の途中にあるとは思えないほど賑わっている。


「うわぁ……」


 ユキが目を丸くする。


「すごい人ですね……」


 砦内部には様々な種族が居た。


 獣人。


 竜人。


 森精族。


 鳥人族。


 旅人に商隊、傭兵まで入り混じっている。


 山岳国家グランディルが閉ざされていた影響で、最近になって交易路が再び活性化したらしい。


 そのせいか、以前よりかなり混雑しているようだった。


「なんか久々に“街”って感じするわね」


 ミーコが周囲を見回す。


 グランディルは巨大だったが、閉鎖的だった。


 こういう雑多な活気は久しぶりだった。


 すると。


「肉!!」


 タマが即座に屋台へ突撃した。


「早っ!?」


「鼻が反応した」


「犬かアンタは!!」


 フィルニアが吹き出す。


「いや分かるぞ」


「お前もか」


 二人揃って屋台へ消えようとする。


 ミーコが額を押さえた。


「待ちなさい!! まず宿探すのが先!!」


「腹減った」


「同時進行に決まってんだろ」


「なんで食う前提なのよ!!」


 いつもの騒ぎだった。


 その横で。


 トシオが干し肉を見ながら呟く。


「高ぇな」


「山越え物流やからねぇ」


 ミツコが苦笑する。


「でも美味しそうやよ?」


「む……」


 地味に悩むトシオ。


 すると店主がニヤリと笑った。


「兄さん達、グランディル帰りか?」


「ん?」


「最近多いんだよ。山開いたって話でな」


 どうやら既に噂は広がっているらしい。


 タマが串焼きを頬張りながら聞く。


「そんな変わったの?」


「そりゃあな」


 店主が豪快に笑う。


「前は“死の山”扱いだったからよ」


 ミーコ達は顔を見合わせた。


 確かに。


 侵食。


 封印。


 閉鎖。


 外から見れば、かなり不気味な土地だったのだろう。


 その時だった。


 上空から飛竜の鳴き声が響く。


 グォォォォォッ!!


 砦内が少しざわついた。


「帝国竜だ」


「軍用か?」


 人々が空を見上げる。


 三騎の飛竜が砦上空を旋回していた。


 漆黒の装甲。


 赤い紋章。


 ヴォルグラード帝国の正規竜騎兵。


 フィルニアが顔をしかめる。


「……あ」


「知り合い?」


 ミーコが聞く。


「ちょっと面倒」


 その瞬間。


 三騎の飛竜が中央広場へ降下した。


 爆風。


 砂煙。


 人々が道を空ける。


 そして。


 先頭飛竜から、一人の女性騎士が降り立った。


 長い赤髪。


 鋭い金眼。


 黒銀鎧。


 巨大槍。


 かなり強い。


 女性騎士は周囲を見渡し――。


 すぐフィルニアを見つけた。


「フィルニア様」


「レオネか……」


 露骨に気まずそうな顔。


 タマが笑う。


「なんだその反応」


「説教が来そう」


 すると。


 後続飛竜から、さらに二人の姿が降りて来る。


「おー、やっぱ居たか」


「皆さん、お久しぶりです」


 タマの顔が一気に明るくなった。


「グランヴェル!!」


「セレス!!」


 懐かしい顔がそこにあった。


 グランヴェルが軽く笑う。


「元気そうだな」


「そっちもな!!」


 タマが勢いよく駆け寄る。


 セレスも小さく微笑んだ。


「相変わらず賑やかですね」


「いやぁ色々あってな!!」


「大体お前が騒いでるだけだろ」


 フィルニアが即ツッコミを入れる。


 ミーコも少し笑っていた。


 久しぶりに顔を合わせると、自然と空気も柔らかくなる。


 フィルニアが腕を組む。


「お前らも来たのか」


「来たのか、ではありません」


 セレスが即答した。


「帝国側も空間異常を重く見ています」


 グランヴェルも頷く。


「グランディル崩壊級の異常だ。各国とも動かざるを得ん」


 その時。


 レオネが深いため息を吐いた。


「フィルニア様」


「なんだ」


「陛下より伝言です」


 フィルニアの顔が少し引き攣る。


「“好きに暴れるのは構わんが、定期報告くらい寄越せ”との事です」


 数秒沈黙。


 次の瞬間。


 タマが吹き出した。


「やっぱ怒られてんじゃねぇか!!」


「うるさい!!」


 フィルニアが真っ赤になる。


 ミーコが呆れた顔をする。


「アンタ報告してなかったの?」


「してた!!」


「絶対途中から忘れてたでしょ」


「……ちょっと忙しかった」


「忘れてたのね」


 グランヴェルが静かに頷く。


「まぁいつもの事だ」


「お前まで!?」


 セレスが干し魚を齧りながら言う。


「王城側も慣れています」


「慣れるな!!」


 だが。


 レオネまで小さく笑っていた。


「定期的に無茶をするのは昔からですので」


「待て!? なんでお前ら全員そんな扱いなんだ!?」


「日頃の行いだろ」


 トシオが真顔で言う。


「トシオまで!?」


 周囲が笑い声に包まれる。


 砦の空気まで少し和んでいた。


 その時。


 ミツコがセレスを見て、にこにこしながら袋を取り出した。


「干し魚食べる?」


 セレスの動きが止まる。


「……え」


「好きやろ?」


「ち、違います」


「でも前もいっぱい食べとったやん」


「……」


 耳だけ赤い。


 タマが腹を抱えた。


「やっぱ好きなんじゃねぇか!!」


「違います!!」


 フィルニアが爆笑する。


「相変わらず分かりやすいな!!」


 グランヴェルまでちょっと笑っていた。


 セレスが完全に観念した顔になる。


「……少しだけ頂きます」


「素直でよろしい」


 ミツコが嬉しそうに渡す。


 その横で。


 レオネがトシオを見ていた。


「……噂通りですね」


「ん?」


「フィルニア様達が懐く理由が分かりました」


 トシオが眉をひそめる。


「懐いてねぇだろ」


 すると。


 フィルニアとタマが同時に反応した。


「いや懐いてるだろ」


「懐いてるな」


「お前ら息合うな!?」


 ミーコが吹き出す。


 ユキも小さく笑っていた。


 その時だった。


 グランヴェルが真面目な顔になる。


「そうだ」


「ん?」


「帝都から大量に土産を預かっている」


 空気が変わる。


 フィルニアが嫌な予感を察知した。


「……誰から」


「エレミア様だ」


 全員が止まる。


 フィルニアだけ青ざめた。


「母上?」


 グランヴェルが静かに頷く。


「“旅先でもちゃんと食べろ”との事だ」


 次の瞬間。


 後方飛竜から巨大木箱が降ろされた。


「多っ!?」


 ミーコが叫ぶ。


 タマも引いている。


「仕送りの量じゃねぇ!!」


 木箱には大量の保存食。


 干し肉。


 燻製。


 竜人族酒。


 果物。


 調味料。


 さらに。


「これ全部!?」


「……母上ぇぇぇ……」


 フィルニアが頭を抱えた。


 だが。


 ミツコだけは嬉しそうだった。


「優しいお母さんやねぇ」


 フィルニアが遠い目をする。


「過保護なんだよ……」


 その瞬間。


 タマが木箱から酒瓶を発見した。


「おっ!? 高級酒だ!!」


「待てそれは陛下用だ!!」


「飲むぞぉぉぉ!!」


「やめろぉぉぉ!!」


 砦中へ笑い声が響く。


 グランディルを越え。


 再び仲間達が揃った。


 騒がしくて。


 賑やかで。


 だけどどこか心地良い時間が、そこには流れていた。

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