表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/150

暴竜………

『じじばばにゃんこと異世界奇譚』


第一部『レヴァナスタシア』


第十話


『暴竜』


夜のガルディア砦を、

警鐘が鳴り響いていた。


ゴォン!!

ゴォン!!

ゴォン!!


兵士達が走る。


飛竜騎士達が空へ上がる。


怒号。


悲鳴。


そして。


グォォォォォォッ!!


獣の咆哮が、

砦全体を震わせた。


「西外壁だ!!」


「避難急げ!!」


砦の空気が一変する。


先程まで、

豚汁を囲んで笑っていた空間とは思えない。


だが。


トシオ達だけは、

どこか落ち着いていた。


トシオは、

のそのそ立ち上がる。


「行くかのぉ」


「いやもっと緊張感持とうよじーちゃん」


タマが慌てる。


だがその横で、

フィルニアは既に武器を担いでいた。


赤い目が、

獰猛に輝いている。


「久々に暴れられそうだな!!」


「駄目だ」


グランヴェルが即座に否定する。


「なんでだよ叔父貴!!」


「お前は突っ込みすぎる」


「それの何が悪い!!」


「全部だ」


カリヴァが頭を抱えた。


「あはは……

始まった……」


ミツコは、

慌ただしい周囲を見ながら、

小さく呟く。


「怪我人いっぱい出そうやねぇ……」


その言葉に、

グランヴェルの表情が曇る。


飛竜暴走。


それは、

竜人族にとって最悪の災害だ。


暴れた飛竜は、

敵味方を区別しない。


しかも。


最近の個体は、

異常に凶暴化している。


原因不明。


瘴気汚染。


世界各地で起き始めた異変。


嫌な予感しかしなかった。


──西外壁。


そこは既に、

戦場だった。


巨大な飛竜が、

狂ったように暴れている。


黒い霧。


赤く濁った瞳。


鱗の隙間から、

瘴気が漏れ出していた。


兵士達が吹き飛ばされる。


石壁が砕ける。


飛竜騎士達も、

近づけない。


「まずいぞ!!」


「抑えきれん!!」


飛竜が咆哮する。


その瞬間。


ドォォォン!!


衝撃波が、

砦の一部を吹き飛ばした。


ユキが震える。


ミーコが庇うように前へ出た。


だが。


フィルニアだけは、

目を輝かせていた。


「すっげぇ……」


「感想が戦闘狂なんよ……」


タマが引いている。


その時だった。


暴走飛竜が、

兵士達へ向かって突進する。


誰も間に合わない。


だが。


「ほれ」


トシオが、

飛竜の前へ立った。


兵士達が絶句する。


飛竜の巨体。


巨大な牙。


狂気の咆哮。


それを前にしても、

トシオはいつも通りだった。


飛竜が突っ込む。


その瞬間。


トシオが、

片手で鼻先を押さえた。


ドゴォン!!


大地が割れる。


だが。


止まった。


巨大な飛竜が、

完全に静止している。


沈黙。


兵士達の顔が引き攣る。


フィルニアの目が輝く。


「なにそれかっけぇ!!」


「そこ!?

感想そこ!?」


タマが忙しい。


飛竜は、

苦しそうに唸っていた。


トシオは、

鼻先へ手を置く。


「痛いのぉ」


暴れる飛竜。


だが。


トシオは、

怒らなかった。


力で押さえつけもしない。


ただ。


静かに撫でる。


「怖かったのぉ」


その言葉。


次の瞬間だった。


飛竜の身体から、

黒い霧が揺らぐ。


グォ……


赤い瞳が、

僅かに戻る。


周囲が息を呑む。


「瘴気が……薄れた?」


カリヴァが呟く。


グランヴェルの顔から、

余裕が消えていた。


ありえない。


瘴気汚染は、

浄化不能。


それが常識。


なのに。


トシオが触れただけで、

飛竜が落ち着き始めている。


飛竜は、

ゆっくり膝をついた。


巨体が震える。


そして。


トシオへ、

頭を擦り付ける。


完全服従。


沈黙。


兵士達が、

恐怖と困惑の目でトシオを見る。


だが本人だけ、

普通だった。


「腹減っとるんじゃろ」


「それで済む話なの!?」


タマが叫ぶ。


その時だった。


ミツコが、

買い物かごを覗き込む。


「……あ」


全員が振り返る。


ミツコは、

少し困った顔をした。


「お肉切れとる」


沈黙。


フィルニアの顔色が変わる。


「え」


「豚汁、

次は野菜多めやねぇ」


「待て待て待て待て!!」


フィルニアが飛び上がった。


「肉!!!

肉いるだろ絶対!!」


タマが吹き出す。


ユキまで笑っている。


さっきまでの緊張感が、

全部吹き飛んでいた。


グランヴェルは、

深くため息をつく。


そして。


少しだけ笑った。


「……なんなんだ、

お前達は」


その声は。


呆れよりも、

どこか安心した響きだった。


その時。


遠くの空で。


黒い何かが、

ゆっくり蠢いていた。


誰にも気付かれぬまま。


まるで。


何かが、

こちらを見ているように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ