表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
じじばばニャンコと異世界奇譚  作者: こいたろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/139

3匹の子猫達…

その冬は、

何年ぶりか分からないほど雪が積もっていた。


古い平屋の屋根は白く染まり、

山あいの小さな村は静まり返っている。


縁側では、

トシオが湯飲みを片手に空を見ていた。


「よう降るなぁ」


「ほんとやねぇ」


ミツコは小さく笑い、

みかんの皮を剥いている。


85年。


長い人生だった。


二人には、

子供がいた。


けれど、

生まれて間もなく亡くなった。


それ以来、

二人きりで生きてきた。


悲しくなかったわけじゃない。


寂しくなかったわけじゃない。


それでも、

二人で飯を食べ、

笑って、

季節を越えてきた。


ただ最近、

ミツコは少しだけ痩せた。


病院の帰り道。


「長くはないでしょう」


医者はそう言った。


トシオは何も答えなかった。


ミツコも、

「そうですか」

と笑っただけだった。


だから今日も、

何でもない日みたいに過ごしている。


それが二人の優しさだった。


夕方。


買い物帰りの山道。


吹雪の中で、

トシオが足を止めた。


「……ん?」


小さな声。


雪の積もった側溝の奥。


ミツコが覗き込み、

息を呑む。


「まぁ……!」


そこにいたのは、

三匹の子猫だった。


二匹は雪みたいに白い。


もう一匹だけ、

ほんのり水色がかった毛並みをしていた。


三匹とも、

身体が震えている。


「こんな小さい子……」


ミツコは迷わず、

そっと抱き上げた。


すると、

水色の子猫がゆっくり目を開く。


丸い瞳。


片方は蒼。


片方は金。


不思議な、

吸い込まれそうな瞳だった。


トシオは小さく眉をひそめる。


「……普通の猫じゃねぇな」


「でも放っとけんよ」


ミツコは胸に抱き寄せる。


子猫は、

安心したみたいに小さく鳴いた。


「ミーコ」


「ん?」


「この子、ミーコや」


ミツコは笑った。


「この元気な子はタマ。

このふわふわの子はユキ」


トシオは少し呆れた顔をしたあと、

ふっと笑う。


「もう名前決まったんか」


その夜。


炬燵の中で、

三匹は丸くなって眠っていた。


タマは腹を見せている。


ユキはミツコの膝の上。


そしてミーコだけが、

静かに雪の降る外を見ていた。


まるで──


何かを警戒するように。


その時だった。


家の奥で、

古い柱がギシリと鳴る。


風もないのに。


トシオが振り返る。


暗い廊下の向こう。


そこに一瞬だけ、

“誰か”が立っていた。


白く長い影。


次の瞬間には消えていた。


「……なんだ今の」


低く呟いたその時。


ミーコのオッドアイが、

淡く蒼く光った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ