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第1話



「コーデリア・ミッドール!貴様の性格にはもう辟易した!婚約は破棄だ!その代わり、大公領に行って公爵令嬢としての役目を果たしてこい!」


王家主催の華々しいパーティーの最中、金髪碧眼の見目麗しい少年が銀髪碧眼の少女に向かってパーティーを遮るように声を上げた。

金髪碧眼の少年は傍らにいるピンクブロンドの髪を持つ可愛らしい少女の腰に手を回し、私のことを睨みつけるように見る。

私の婚約者である公爵家嫡男、レルウィルド・ミエールだ。

何からいえばいい物かと言葉に詰まるが、取り敢えずゆっくりと言葉を選んだ。


「……レルウィルド様。両家と話はついているのですか?」

「ふん、話すまでもないわ。ミッドール公爵とはもう既に話はついている。貴様は既に大公と書類上夫婦だ」


…そうだったのね


産まれる前から両家の取り決めで2人の婚約は決まっていた。そして産まれてからはレルウィルド様の妻、立派な公爵夫人になるための教育を現ミエール公爵夫人に叩き込まれてきた。

弱音ひとつ吐くことすら許されなかったそれはそれは厳しい教育を、18年間ずっと耐えてきた。

それがこんなにもあっさりと、男爵令嬢のアミィという可愛らしい少女に奪われてしまうとは。


アミィという男爵令嬢の少女は、レルウィルドに抱かれながら勝ち誇った表情で私を見てくる。

思わず震えそうになる身体を必死に抑え、レルウィルド様の方を見る。

きっとこれで最後なのだろう


「わかりました。では失礼させて頂きます」

「さっさと消えるといい」


頑張れ、私

自分で自分を励まし、必死にレルウィルド様に向かい淑女の礼をとり、パーティー会場から逃げるように庭園に向かう。


先程のパーティー会場とは打って変わって静かな庭園に来た私は、思わずその場にへたりこんでしまった。

わなわなと両腕が震える。……もう、我慢しなくていいんだ。


「〜〜〜、、、ッ」


声が漏れてしまう。ダメだ、もう抑えきれない。

周りに人が居ないことを確認した私は、思いっきり叫んだ。


「ぃやったわぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」


思いっきり叫んだ。天高く両手を挙げ嬉しさを爆発させる。今日この良き日に!どうして喜ばずにいられると言うのであろうか!

産まれてから早18年。あのレルウィルドとかいう悲劇のヒーロー気取りのクソ婚約者に振り回され続けてきた。

クソが!と何回言いかけた事か。


私との婚約を「私は産まれる前から自由な恋愛が許されてなかったのだ…」と言い、それを大義名分かのように使い女遊びに明け暮れ、私がほかの男子生徒と少し話すだけで「私の婚約者は私を裏切るんだ…」と言って女に慰めを受ける様なヤツ(クソ)


しかも全て私が公爵夫人になるための教育を受けている最中(さなか)の出来事である。私が必死こいて現ミエール公爵夫人に教えを受けている時に、あのクソ野郎は女遊びに熱を上げていたのだ。なんと言う奴だ。後ろから何度も刺そうと思ったが全て妄想に留まらせ、実行しなかった私に跪いて感謝して欲しい。私ほど慈悲深い人はいない、絶対。


男爵令嬢のアミィとかいう小娘にやたら熱を上げていると気付いた私は確実になにか起きると思い、内密に色々と調べていた時だった。

……なんとあの野郎、一線を越えたのだ。

私もその事実を知った時は流石に驚きすぎて言葉が何も出なかった。純潔を重んじる貴族社会でその行為がどれほど疎まれるか分かっていないのだろうか?と頭を抱えた。

そしてあろう事か避妊をしていなかった為、子が出来てしまったのだ。私もそこまでクソだとは思っていなかったが、アレはどこまで行ってもクソだった。

やっぱり1度くらい刺しておくべきだったのでは?と少し後悔した。


醜聞どころでは済まされない息子の愚行を知ったミエール公爵夫妻はそれはもう光の速さで私の実家・ミッドール公爵家にダイヤモンド鉱山を渡す事を条件に、私には内密に婚約破棄をし、私に何か言われる前に私の実家と結託し大公様と婚姻を結ばせたのだ。


胸糞展開もいい所だが正直私的には願ったり叶ったりな状況だった。

私は病気で亡くなってしまった前ミッドール公爵夫人の子供であったため今の現ミッドール公爵夫人とその腹違いの弟・妹には嫌われており実家での良い思い出なんてものは無いに等しいし、レルウィルドなんて言うまでも無くいい思い出なんてものはない。


もうこの上ない解・放・感!


「紆余曲折18年……頑張った甲斐があったわ………」


こうしてはいられない。きっと家に帰ったら絶縁されるのがオチだ。

さっさと荷物をまとめにいかないときっとお母様の遺品まで捨てられてしまう。

お母様というのは、もちろん前ミッドール公爵夫人の事だ。私にありったけの愛情を込めて育ててくれた人。私のお母様はその人1人だけだ。


歓喜に震える身体を必死に起こし、私は待機させておいた馬車へ向かう。

大股で歩くのなんてはしたないけれど今はもういいのよ!私はもう次期ミエール公爵夫人では無いもの!

馬車には私の専属メイドが待っていた。


「コーデリアお嬢様、行先はどちらで?」

「取り敢えずうちに帰るわ!大急ぎで頼むわよ!」

「お任せ下さい」


馬車を走らせるこのメイドは私が10の時にミッドール公爵家のメイド達が使えなさすぎて自分で雇ったメイドだ。名はエルと言う。

私に雇われてメイドをする前は何でも屋のような事をしていたこともあり情報収集といった分野に長けていて、レルウィルドが男爵令嬢(アミィ)に熱中して子を成してしまったことや、ミエール公爵家とミッドール公爵家の情報を集めてくれていた、なんとも有能なメイドだ。






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