2話 実力を試すなら模擬戦やるより実際に迷宮潜った方が早いよね
著:軒下烏(作者)
設定:加藤 宣明さん、ゴエモンさん
※おっさんの名前が主人公の名前と似すぎていたため、ライル→ジャックに名前を変更しました。
「セイル!スライムだけに気を取られんな!ラットもいんぞ!」
パーティーを組んだ俺はお互いの戦い方を知る事、そして連携のために、パーティーメンバー……ジャックさんと一緒に潜っていた。
「気付いているっす!装填する隙があれば……!」
「装填より剣を突き刺せ!すぐに拭き取れば粘液による劣化は無視できる!」
そう言いながらジャックさんが大戦斧――を使うまでもなく、俺に襲い掛かろうとしていた『屍肉漁りの鼠』を蹴り飛ばす。
そのまま壁に激突した鼠は動きを止める。同時に、こちらも目の前にいる粘液状の魔物――スライムの核に剣を突き刺す。
核を潰されたスライム、壁に激突し息を止めたラット、そして――先に倒したゴブリン、合計三体の魔物の亡骸を見ながら一呼吸を置く。
「連携というよりこっちがサポートしてもらってばっかで申し訳ないっす」
「気にすんな、むしろ一週間しか冒険者やってないにしては動けてるから、予想よりは手がかからねぇって思ってたところだ。……最初にゴブリンを潰したのはナイスだ、見ての通り俺は遠距離攻撃できねぇからな」
頭に矢が刺さり、錆びた短剣を握ったまま息絶えているゴブリンの亡骸を一瞥したジャックさんはそのまま言葉を続ける。
「さて、少なくともすぐに襲ってくる範囲に魔物はいないみてぇだ。とりあえずセイルの小剣の粘液を拭いたら周囲を警戒しつつ素材の解体作業を……と思ったが、別にしなくてもいいな、こいつら」
「了解っす。――確かに、この中で価値があるのは全身が素材になるスライムくらいっすもんね」
剣に付着した粘液を拭き取りながら、俺も倒した魔物をチラリ、と一瞥する。
スライムの身体を構成する粘液は金属を劣化させる作用があるものの、別の薬品と調合する事で逆に金属を保護する液体に変化するという特性があるため身体そのものに価値があり、ギルド経由で買い取ってもらえる。
ラット、ゴブリンはそこまで素材価値はない。もしも、この二種類の魔物に価値があるとするならば、変わり者の貴族が飼い猫の餌でラットを買い取る事がある程度か、ゴブリンが稀に持っている武器くらいである。
つまり解体の必要はない。このまま放っておいたら腐敗する前に別のラットやスライムが嗅ぎ付け、勝手に処理して綺麗にするだろう。
「ところでセイル、矢筒が見当たらねぇけど、もしかしてお前『道具箱』持ちか?持ってるならスライム入れられねぇか?」
「持ってはいるけど、制約魔法――容量制限と小道具専門を付与している物なんで、スライムは持って帰れないっすよ」
職業無しは魔法を習得する事が難しく、職業があるとしても道具箱など、習得が難しい魔法もある。
ただし、その魔法習得の難易度の高さを無視できる裏技があった。それが『制約魔法』と呼ばれる技術。
本来なら長期に渡る習得手順を、制約をかける事で大幅に短縮できる。冒険者ギルドも新人冒険者が死ぬ可能性を減らすため、制約魔法を習得させられる魔導書を一冊だけ貸し出ししてくれているため、冒険者になる前から魔法使いだったという者を除いて、新人はほとんどの場合何かしらの制約魔法を一つ習得している。
実際に俺は二つの制約を課す事でこの魔法が使えるようになっている。
そのため俺のこの魔法は、人が作った道具以外は入れられず、入れる事ができる物の大きさも小剣程度が上限である。
「なら皮袋で持って帰るか。ギルド支給制約魔法で道具箱を選ぶのは珍しい事じゃねぇけど、小道具専門ってのは面白い制約課してんな、セイル」
「村では狩人やってたんで、ある程度矢とか罠とか持ち込めるようにしたかったのが理由っす。まぁ、魔物素材入れられるようにしなかったのは選択ミスっすね」
「なるほどな。……となると、長期探索時は制約無し道具箱持ち……荷物持ちを雇う必要あんな。俺は無理だがお前経由なら誰かしら雇えるだろ」
「ジャックさんじゃ雇えない理由とかあるんすか?」
その言葉に疑問を持った俺は、スライムの亡骸を皮袋に詰め込みながらジャックさんに問いかける。
道具箱を習熟している荷物持ちを雇う際は、ギルドに頼めば基本的にはどんな人でも仲介をしてもらえるはずだ。
「昔色々あってな、評判わりぃんだよ、俺……まぁ、セイルにパーティー組もうぜって誘ったの騙し討ちみたいなもんだったし、後でギルドで俺の噂とか聞いたのが原因でパーティー解散されても文句は言わねぇから安心しろ」
「……了解っす。ジャックさん悪い人には見えないけど……まぁその時は笑顔で解散告げるっす」
「真面目そうに見えてお前冗談も言えるタイプだったのかよ」
やけに似合う苦笑いの表情を浮かべるジャックさんは、俺の頭に手を置いてわっしわっしと撫で始める。
――そんな平和な空気が続くかと思ったが、ジャックさんはいきなり手を止め通路の先――暗くて見えない、第二層へと続く道を一瞬だけ見た後、すぐにそこから背を向けて、少し強張った表情でその場を早歩きで迷宮入口の方へ歩き始める。
「デカい声あげすぎたな。……一層はボスモンスター以外でも、危険な相手が一種類だけいる。見つからねぇように、いや追いつかれないように少し急いで帰るぞ、セイル」
知識だけは知っていた。赤兜の小人族と呼ばれる、ゴブリンの変異種。少数しか生息しておらず非力ではあるが、武器に毒を塗る習性がある上で足が速く、好戦的で危険な魔物。
――元狩人で気配を察知できる俺が注意しなければ気付かない程度に距離は離れているようだが、二層へと続く道の先。
そのレッドキャップかどうかは分からないものの、確かに何かがいる気配を感じる。
ジャックさんの判断に頷いて、入口まで共に戻り始める。
俺君「更新、空いたな。何があったんや」
地の文君「作者がサボ……い、いや筆が乗ったら一気に書けるってタイプなのと年末年始の忙しさ、それと一度書いてたけど全文書き直したってのが理由らしい……」
俺君「……言い直したけど実際のところは?」
地の文君「サボリスギマシタゴメンナサイ」




