1話 ゴブリンから逃げたら、ベテラン戦士のおっさんに出会った
著:軒下烏
設定投下:ゴエモンさん(プロローグ感想欄より)
「やばい、やばい、やばい……」
人工的な壁に囲まれた通路。
俺を狩ろうとする三体の緑色の小人族が、後ろから迫ってくる。
「くそっ、これでも喰らえ……!」
俺は一瞬だけ後ろを向き、左腕に装備されている『籠手弓』と呼ばれる小型の武器から矢を発射する。
狙いを付けていない物だったが、運良く緑色の小人族のうちの一体の足に刺さり、少しだけ相手の進行が遅くなる。
少しだけ余裕はできたものの、矢の装填をするほどでもなく相手から距離を取るのが限界。
状況を打破できる可能性がある単発しか発射できない安物の籠手弓を購入した事を後悔しながら、再び緑色の小人族に背を向けながら、魔法『道具箱』を発動。
中から煙玉を落とし、サブウェポンの小剣を取り出す。
煙幕が無事に出た事を確認し、これで撒ければラッキーと考えながら俺は迷宮の入り口に向かって全力で走る。
――冒険者になって、お前の病気を治す薬を見つけてやる!
俺はそう言って、俺は幼馴染――魔力暴走病と呼ばれる特異な病に陥った少女を村に置いて、そしてこの迷宮都市『ラビュリント』へと来た。
どんな病気でも治し、どんな怪我でも治し、肉体が腐敗してなければ死者すらも蘇らせる事が可能という伝説の霊草、エリクシール。
この都市に存在する巨大迷宮の深部には、それが存在するという噂があったからだ。
そして、村で獣肉を確保する仕事を行っていた俺は、魔物とも戦えると考えた。
冒険者になってもどうにかできるだろう。そう思っていた。
だが、見通しが甘かった。
この都市で活動している冒険者はそれぞれ『先天的才能』や『後天的戦闘技術』という物を持っている。
だが、俺は『先天的才能』は少なくとも発現してなく、田舎から出てきた子供という立場の俺は、この都市に『後天的戦闘技術』を付与してくれる師匠や先輩といったコネは存在しない。
そして、迷宮に潜む生物――魔物は、村の周りにいる動物とは全く違う。
今俺を追いかけてきている緑色の小人族は、単体ならばその魔物の中でも下から二、三番目程度に対処が楽な魔物。
だが、それでも村の周りにいる動物よりは非常に危険だった。俺には勝つ事が難しいほどに。
「はぁー……はぁー……」
俺は迷宮の入り口の防護水晶まで戻ってきて、息を整える。
魔物は防護水晶に近寄ろうとしない。ここまでこれたのなら、逃げ切れたと言ってもいいだろう。
安心したら一気に疲れが噴出し、俺は防護水晶を前に地面に座り込む。
「よお坊主、大丈夫か?」
入口付近にいた大戦斧を持った戦士のような、顎鬚を蓄えた冒険者らしき人が俺に声をかける。
年上のベテランの風格が漂う人で、どうやら息を切らしていた俺を心配して声をかけてくれたようだ。
「なんとか……不慣れでゴブリンから逃げてきまして」
「あー、坊主はもしかして冒険者なりたてか。何日目だ?」
「一週間っす。管理団体――ギルドから一週間も経ってゴブリン一匹狩れないやつは才能がないと急かされまして」
「その返答で大体分かった。坊主は職業無しか。あいつら職業有り前提で言ってくるから気にすんな」
戦士の人も俺の横に座る。
見る限りソロで、誰かを待たせているわけでもないようで別に慌てて迷宮に潜ったりする必要はないのだろう。
「おっさん――お兄さんも職業無しっすか?」
「取り繕う必要はねぇ、おっさんでいいぞ。――俺も職業無しだ。自分で言うのもなんだがスキルがそれなりに強いモノだったから今でも生き残れてるがな」
戦士のおっさんは名前を名乗らない。
これについては――『協力態勢を取っていない冒険者同士が迷宮内で出会った時、お互いに名前を名乗らない』というルールがあるからだ。
冒険者は迷宮内のどこで、そしていつ死ぬか分からない。名前を知るほどに知り合った相手の遺品や亡骸を見るのは辛くなるからという事で、あまり深く仲良くならないようにと――冒険者ギルドで一番最初に教えられる事である。
入口付近とはいえ、そのルールに従い俺と戦士のおっさんは名前を名乗らず、会話する。
「ちなみにおっさんのスキルって?」
「言わねぇよ、冒険者たるもの手札はあんま明かすのは良くねぇからな。――ギルドで教えてもらえなかったんか?」
「いや、教えてもらったけど……おっさんがスキルの事を自分から言い始めたので、説明したいのかと思っただけっす」
「まぁ、軽口言えるくらいまでは回復したみてぇだな。その持ち直しの早さは才能だぞ。スキルじゃねぇだろうけど」
軽口で返すと戦士のおっさんはニヤリと返す。
言われてみれば、軽口で返せるほどにもう安心している事に気付く。
勿論、その原因は間違いなく――
「防護水晶まで逃げ切れただけじゃなく、多分優しい先輩がいたから安心できたんだと思うっすよ、一人じゃ多分まだ心臓バクバクだったと思うっす」
「そうだな、ソロでやってる俺が言うのもなんだけど仲間がいると安心できるのは間違いねぇ。――俺みたいにスキルが強いなら別だろうが、職業無しなら仲間を集った方がいいんじゃねぇか?」
「そうっすね……」
俺は思案する。確かに――ゴブリン三体にすら苦戦する俺は、ソロでやるのは早々に限界が来るだろう。
目の前の戦士のおっさんが言うみたいにスキルが強いとかならまだしも、俺はスキルは発現していない。発現できるまで、生き残れるなら保証はない。
戦士のおっさんの言う通り、仲間を集う事でしか深部へ辿り着く事は無理だろう。俺はそれを実感した。
そして、俺がその事を思案しているとおっさんが悪い事を思いついたかのような笑顔で、俺に驚愕の言葉を投げかける。
「――『ジャック』だ。俺の名前だ」
その言葉に――俺は目を見開いた。
――そう、迷宮内で冒険者と出会った場合、協力態勢を取らない場合は名前を名乗らない事が普通である。
「おっさん、いやジャックさん――名前を名乗るって事はまさか……」
「そういう事だ。お前の持ち直しの早さはパーティーリーダー向きだと判断したからな。お前が良ければ一緒にやらねぇか?――返答は『お前の名前』で頼む」
俺は目を瞑り、悩む。
名前を返せば、おっさん――ジャックさんの提案に肯定する事になる。
――一瞬。たった一瞬だけ悩んで、俺はジャックさんにその『言葉』を返す。
「俺の名前は――セイル。セイルっす」
「帆か。良い名前だな。これから宜しく頼むぜ、セイル――」
プテラノドン「設定提供のゴエモンさんありがとう。キャラの名前は軒下烏の方で考えてみたとの事だが……うん、適当だからカンソウ=ランで名前ネタくれる人がいれば改稿で変えるかもしれんとの事だ(※2020/12/30 03:03改稿で変更)。ちなみに幼馴染、つまりメインヒロイン(仮)(予定)(多分)(恐らく)の名前は決めていないし、設定もちょっと料理しやすそうな程度に病名だけ考えた程度で深く考えてないから募集したいとの事だ」
俺君「あとルビについては〇〇(〇〇)みたいな書き方で投稿してくれたら、俺の方で投稿時に修正どうにかしとくやで!ついでに武器がボウガンなのは地の文君……もとい作者の趣味やそうで。まぁ他の人が使いやすいように剣も持たせたようやけど」




