叔母さんは魔女?
大学一年生の「望月みきお」は不幸にもアパートが火事で全焼して、仕方無く義理の叔母の屋敷で暮らす事になった。
しかしその屋敷は「魔女の邸宅」などという噂の屋敷だったのです。
そんな事は全く知らない彼を待っていたのは…美し過ぎる叔母と美人のメイドというありえない共同生活だった。
果たして…みきお君の理性は持つのだろうか?
とある日本の地方都市。
郊外の住宅街を抜けた先に、周囲とはまるで不釣り合いなほど豪華な洋館が建っていた。
重厚な鉄門の向こうには大きな噴水があり、季節の花々が色鮮やかに咲き誇る広い庭園。その姿はまるで外国の貴族の屋敷そのものだ。
だが近所の住民は、その屋敷を本当の名前では呼ばない。
「魔女の邸宅」
そんな妙なあだ名で囁いていた。
その日、一台のタクシーが屋敷へ向かって坂道を走っていた。
後部座席に座るのは、ごく普通の大学一年生――望月みきお。
数日前、彼が暮らしていたアパートは漏電による火災で全焼してしまったのだ。
みきお(…幸い命は助かったものの、着替え以外のほとんどを失ってしまったからなぁ…ついて無いぜ…)
そして今日から、親戚である「諸星エマ」の屋敷で暮らすことになったのである。
――もっとも、その屋敷が近所で『魔女の邸宅』と呼ばれていることを、この時のみきおはまだ知らなかった。
みきお「わぁ!本当に立派な屋敷だなぁ…!」
タクシーが門の前で止まって、窓の外にそびえる屋敷を見上げた彼はそう言って感嘆の声を上げた。
料金を払ってタクシーを降りると、彼の目の前には長身で金髪メガネのメイドが静かに立っていた。真っ白なエプロンの黒いメイド服を完璧に着こなし、その姿勢には一分の隙もない。
ルナ「みきお様、ようこそいらっしゃいました!私はこの屋敷の主人、エマ様に仕える金月ルナと申します。」
みきお「金月さん?ご丁寧にどうも!望月みきおですよろしくお願いします!」
ルナ「こちらこそ、よろしくお願いいたします!私の事はルナとお呼びください!」
そう言ってメイドのルナは頭を下げる。
みきお「る、ルナ…さん?」
ルナ「はい!みきお様」
みきお(綺麗な人だなぁ…しかし、メイドさんなんて本当に居るんだ…?)
ルナ「さあエマ様がお待ちですよ!荷物は私がお持ちしますので…」
そう言って彼女はみきおが持っているスーツケースを軽々と持ち上げて運んだ。
みきお(アレ?結構重かったのに…?ルナさんって力持ちなんだなぁ……。)
屋敷の居間らしき部屋に案内されると、20代後半くらいにしか見えない美しい女性が紅茶を飲みながら待っていた。
大きな窓から差し込む午後の日差しに照らされて部屋の中のアンティークらしき調度品が輝いて見えた。
みきお(うわぁ…まるで映画に出てくる女優さんみたいだ…アレ?義姉のリゼさんに似てるな?)
そんな事を考えながらその美しい女性を観察していると…
エマ「いらっしゃい!リゼから話は聞いているわ。」
みきお(…ええと…リゼさんのお姉さんかな…?)
みきお「初めまして!望月みきおです。」
ルナ「エマ様、みきお様をお連れしました。」
エマ「ご苦労さま、ルナ!こんにちは、お会いするのは初めてよね?みきお君。」
みきお「は、はい!…あの…リゼさんのお姉さんですか?」
エマ「…フフ…私はリゼの母親よ!」
みきお「えぇ〜っ?」
みきおは驚いた、目の前の美しい女性は義姉の母!つまり義理の叔母だったのだ。
エマ「アパートが全焼なんて…災難だったわね?でも安心して、ここを自分の家だと思って良いのよ!」
みきお「マジでリゼさんのお母さんなんですか?てっきりお姉さんかと…」
エマ「フフ…よく言われるのよ、姉妹にしか見えないって…でも…嬉しいわ!」
蠱惑的な笑みを浮かべる彼女はどう見てもせいぜい30代前半で、自分と同い年くらいの娘がいるとは思えなかった。
その後…ルナに案内されて、みきおは彼の部屋としてあてがわれた場所にやって来た。
ベッドや机などの家具は一通り揃っていたがテレビは無かった。
ルナ「こちらが部屋の鍵でございます!」
そう言ってルナは部屋の鍵をみきおに渡す。
みきお「あ、ありがとうございます。しかし良いのかな…?」
ルナ「?どうかされましたか?」
みきお「…いやぁ…こんな豪邸に住まわせてもらっても良いのかな?って…」
ルナ「みきお様はエマ様の娘、リゼお嬢様の義理の弟になります、どうぞ遠慮なく。」
みきお「なるべく早く次のアパートを探しますね!」
ルナ「みきお様はこの屋敷が気に入りませんか?」
ルナは少し悲しそうな表情で彼を見つめた。
みきお「そ、そんな事ないよ!」みきおは慌てて否定する、単に図々しいかと思っただけなのだ。
ルナ「そうですか…それならばずっとこの屋敷に居てくださいね!」そう言ってルナはみきおの手を握ってくる…
みきお「は、はい!喜んで…」
なんとなくルナにほだされた感じだが…みきおの胸は新しい生活に対する不安と期待が入り交じっていた。
一方…居間でお茶を飲んでいるエマはルナに…
エマ「ルナ、あの子の様子はどう?」
ルナ「はい、エマ様…現在は荷物の整理をしておられます。」
エマは静かに窓の外を見つめ、小さく微笑んだ。
エマ「そう?なかなか可愛い子ね?しばらくは退屈しないで済みそうだわ…!」
ルナ「当分はこの屋敷に居てくださるそうですので大丈夫だと思います。」
エマ「フフ…楽しみね?」
そう呟くと、カップに目をやりお茶を飲み干すのだった…!
そしてその夜…トイレから出て廊下を歩いて部屋に戻ろうとしたみきおの前に、バスローブ姿のエマが現れた…湯上りで濡れた髪とほんのりと上気した肌が色っぽい。
みきおはドキドキして、目のやり場に困ってしまった。
エマ「みきお君、ウチのお風呂は温泉並にお肌に良いのよ!ほら!」そう言ってスベスベの腕を見せつけてくる…とても同い年くらいの娘が居るなんて思えないくらいに綺麗な肌だった。
みきお「…き、綺麗な肌ですね…?」
エマ「フフ…ありがとう!みきお君も入ってらしてね!」そう言って、彼女は自室に戻って行った。
みきお「…ふう…あんな綺麗な人と一つ屋根の下なんて…ヤバいよね?」そう呟くみきおだが、その時ルナが声をかけて来た。
ルナ「みきお様、お風呂にご案内いたします。」
みきお「え?タオルとか持ってないけど…?」
ルナ「こちらで用意してございますので、ご心配なく!」
みきおは驚いた、まるでホテルみたいだからだ…
みきお「そ、そうなんだ?凄いなぁ…」
驚きつつも屋敷の中の大浴場に案内され、さらに驚く事に…!
まるで温泉旅館の大浴場みたいに広くて、お湯は乳白色のお湯だった。
みきお「す、凄い…まるで温泉だ!」
ルナ「エマ様はこの国の温泉文化に感動して、自宅にもこのような大浴場を作らせたのです!」
みきお「そう言えば、ずっと外国で生活していたんですよね?」
ルナ「はい!私もずっとエマ様にお仕えしております。」
みきお「やっぱ日本の温泉文化は最高だよね?」そう言って喜んでお風呂に入るみきおだった。
こんな立派な大浴場を独り占め出来るなんて思わなかったみきお…
みきお「あぁ…気持ち良いなぁ…毎日こんなお風呂に入れるなんて…最高だなぁ…なるべく早く次のアパートを探すつもりだったけど…ずっとここに居たいや…」
みきおは浴室の天井を見上げて…
みきお「アニキが結婚するのを機にアパートで一人暮らしを始めたけど…」
そのアパートも火事で全焼してしまいこの屋敷に住む事になったのだが…今ではむしろラッキーだとすら思っていた。
みきお「エマさんもルナさんも美人だし…まるで天国だなぁ…アレ?まさか本当に火事で死んで…転生したとかじゃないよな?」
なんて事を考えてぼーっとしていると、誰かが入って来た、メイドのルナである。
彼女はバスタオルを巻いた姿で髪の毛を纏めていた…
ルナ「お背中お流しいたします!」
みきお「えっ?いやいや結構です!っていうかなんで?」
ルナ「エマ様のお言いつけですので!」
みきおは真っ赤になった。
みきお「む、無理無理!」そう言いつつも、ルナの大きな胸元に目を奪われる。
ルナ「私ではお気に召しませんか?」ルナはわざと少し悲しそうな顔をしてみせる。
みきお「そういう問題じゃないから!とにかく一人にしてください!」
ルナ「失礼いたしました…エマ様には内緒にしてください…」
みきおの剣幕にルナは後ずさりしながら帰って行った…
みきお「ふぅ…エマさんもルナさんも…なんか僕を誘惑してるみたいだぞ?…いやまさかな…そんなにモテた事無いし…」
彼はブツブツと独り言を言いながらエマとルナの事を考えていた。
みきお「こんなんで僕…やっていけるのかな?兄貴には"過ちを犯すなよ!"なんて言われたけど…こういう意味だったのかな…?」
引越しの前、兄のあきら氏は彼に忠告していたのだった…しかしそれが本当はどういう意味だったのかはまだ彼は知らないでいる。
一方、寝室のエマは…赤い液体の入ったワイングラスを片手に窓の外を見ていた。
エマ「アルフレッド」
アルフレッド「はい!エマ様…」
姿は見えないが、年配の男性の声が暗闇の中から響いてきた。
エマ「みきお君の様子はどうかしら?」
アルフレッド「はい、みきお様の心拍数は通常より10ほど高くなりました、エマ様の時よりも上昇はしておりません…現在の数値は正常値に戻っております。」
エマ「そう?フフ…ルナの殿方の扱いはまだまだね?」
そう言って窓の外の月を見上げるのだった。
アルフレッド「現在、邸内のセキュリティには異常はございません、このままみきお様の監視を続けますか?」
エマ「プライバシーを侵害してはいけないもの…監視はもうイイわ!」
アルフレッド「かしこまりました、みきお様の監視を解除します。」
アルフレッドがそういうと彼女はグラスの液体を見つめて「街の方はどう?」とアルフレッドに問いかけた。
アルフレッド「街で異常なエネルギーが観測されました!これで3週連続です。」
エマ「また?困ったわね……」
アルフレッド「報道はされていませんが、ネット上の噂では人間蒸発事件が発生しているとの事です!」
エマ「アルフレッド、明日は出かけるから車の準備をお願い!」
アルフレッド「かしこまりました!」
そんな感じの会話が交わされているとは知らないみきおは、バルコニーから夜空を眺めていた。
みきお「今夜は満月か…満月の夜は事件や事故が多いっていうけど…」
彼は天文学者を目指しているので、星を見るのが好きだった…しかしそんな彼の心にエマとルナという美女が忍び込んで来ていた。
みきお「エマさん…本当に彼女が僕の叔母さんなのか…?確かに義姉のリゼさんに似てるけど…あんな綺麗で若いなんて…」
彼はエマの顔を思い浮かべて「ふう…」とため息をついた。
その時、屋敷の居間にある大時計が12時を告げる音が聞こえて来た。
みきお「…何を考えてるんだ僕は?…もう寝よう…」
そう呟くと自室に戻って行くのだった…!
満月の光が静かに「魔女の邸宅」を照らしていた。
その屋敷に隠された本当の秘密をまだ…みきおは何ひとつ知らないでいた。
つづく
昔から年上のお姉さんに憧れるシチュエーションが大好きだったので、こんなギャルゲーみたいな設定を思いつきまして作品にしました!
昔、同人ゲームを作ったりしたのでシナリオを考えるのが好きなんですね!
気軽に楽しんでいただけたら幸いです。
さて、次回からはいよいよ「人間蒸発事件」が動き始めます。ラブコメとSFミステリー、どちらも楽しんでいただけたら嬉しいです。




