第146話 俺達の友達が魔法少女な件
最終回です。
マホ達が魔法世界に帰ってから一週間経った。
幸いと捉えるべきか、俺達の活躍が誰にも知られなくて悲しいと捉えるべきか、どうやら元気パワーが戻ったと同時に夢として見ていた俺達の戦いの記憶は誰も覚えていないようで、邪神やら魔法少女やらについて聞かれる事は無かった。
ただし全生物がその場に眠るように倒れており、その間も記憶も倒れた原因も不明と世界中で判明すると大混乱に。学校も一時休校となった。
その件で両親から電話が掛かっていたが、俺はガク先輩と魔法世界をこの世界を行き来する空間を作る研究に没頭していたので、連絡に気付いたのが数日後だったので要らぬ心配を掛けてしまった。
とまぁ、そんなこんな有りつつも、いつまでも混乱を引き摺る訳にはいかないと、今日から学校が再開する事となった。
「うぅ、眠い……。なんでこんな朝早くから学校に行かないといけないの?」
それは例え、世界を救った魔法少女であろうとも例外ではない。
俺の隣を歩いている、世界を救った魔法少女の1人である勇子は欠伸をしながら、学校へ脚を進める。
「昨日電話で話しただろ? ガク先輩が見せたい物があるってさ」
「あれ、そうだったっけ?」
「まだ寝ぼけてるのかよ……」
念のため、わざわざ勇子の家寄っといて良かった。
今の時間はHR開始前40分ほど。朝早いとぼやく勇子の言葉には納得が行くが、ガク先輩に呼ばれたのだから仕方がない。あぁ、ガク先輩なら仕方がないな!
「ふわぁ~あ。あと50時間だけ寝たい……」
「丸2日も寝ようとするんじゃねーよ!」
どれだけ眠いの? ねぇ、どれだけ眠いの?
その台詞の定番は「あと5分だけ」なんだよ。50時間も寝てどうするんだ、1日って24時間だからな? そんな寝たら休日すら丸々潰れるぞ?
「そういやマホの件、ちゃんと誤魔化せたか?」
「え!? う、うん。誤魔化せたよ誤魔化せた!」
マホの件、と言うのは魔法世界に帰った話である。
マホ───と、ペンヨウとライヨウ───はこの世界で暮らしている間は勇子の家で居候していた。そんなマホが突然居なくなれば勇子の両親は心配して、勇子に「マホはどうした?」と聞くだろう。
それを誤魔化せたか。誤魔化すまでは行かなくても、せめて魔法世界については黙っていてくれたのか気になったのだが……あぁ、うん。これ駄目かもしれない。一応テレパシーで確認するか。
❴(つい口が滑って、お母さんお父さんに「マホちゃんは魔法世界に帰った」って話した事、内緒にしとかないと……!)❵
「勇子。俺が超能力者ってこと、忘れたのか?」
「ハッ! しまった!」
そうなる気はしてた。
まぁ何の動物か分からないペンヨウやライヨウを飼ったり───家ではぬいぐるみのフリをしていて、動物と認識されていなかったかもしれないが───身元不明のマホを住まわせて、学校に通えるようにしてる辺り、別世界と言われても勇子の両親は今更驚かないか。
「ほら、それより早く学校に向かうぞ。もし遅れたら……」
「お、遅れたら?」
「ガク先輩に変な実験に付き合わされるかもな。例えば猫耳を生やされたり、姿を妖精に変えられたりとか」
「あ、それは嬉しいかも。猫耳はかわいいし、妖精になったらご飯を沢山食べれるからね!」
「うわぁ……」
「あっ! 今引いたでしょ!」
「引いてない引いてない。勇子もキャラ濃いなぁと思っただけだ」
「ちょっ、それってどういう意味ー!?」
元気と突っ込みが取り柄かと思ってたけど、動じない精神はマホ達と引けに取らないな。猫耳生やされようと、妖精にされようと喜ぶのは普通の感性じゃないと思う。
「学校着いたー!」
雑談しながらも予定通りの時間に学校へ着いた俺達。
やはりと言うより当然なのだが、この時間に登校してくる生徒は少ないどころかパッと見、何処にも見当たらない。
図書室や教室には居るかもしれないが、わざわざそこまで行って確認するほど気になるわけではない。
「今日は遅刻してないよマホちゃ……」
勇子はつい癖でマホ話しかけようとするが、この場にマホは居なく、振り向いた方向には下駄箱しかない。
つーか今日は遅刻してないってなんだ、今日はって。マホ居なかったら毎日遅刻ギリギリ来てたのかよ……うーん。マホが此方に来る前の4月辺りの記憶を遡ってみたけど、一々誰が遅刻してきたとか見てなかったから分からねぇな。
「そうだった。マホちゃんは魔法世界に帰っちゃったんだった」
「寂しくなるよなぁ」
マホだけではない。リュウも魔法世界に帰ってしまった為、これからは三馬鹿ではなく勇子とランも二馬鹿になってしま……なんか、二馬鹿って言い方しっくり来ないな。お馬鹿ーズとかの方がしっくり来そう。
「力男ー!」
「ぶべらっ!」
俺がわりとどうでも良いことを考えていると、突如として後ろから突撃された。
背中の痛みに耐えながら後ろを振り向くと、そこには部長の姿があった。なお、俺に突撃してきたランは俺の肩に腕を回して背中に張り付いてきている。はよ退け。
「ラン、今日も部活か?」
「ああ! それに今日は新部長を決める日なんだぜ!」
「新部長……あ、そうか。部長が部長を辞めるからか」
「ワイは部長を止める。だからこれからは名前で呼んでくれ!」
「いや、俺部長の名前知らないんだけど」
「『長神 優正』だ!」
あ、そうなんだ。初めて知った。
じゃあこれから優正先輩と呼べば……あぁでも、この人敬語とかそういうの外すよう言ってたからな。先輩とか敬称付けずに呼び捨てで良いか。
「力男! もしオレが部長に選ばれたら何かくれ!」
「じゃあその辺の石と草で良い?」
「ありがとうな力男!」
「ごめん冗談。ちゃんとしたやつ用意する」
聖徳太子ですら落ち込むようなプレゼント渡す言ったのに、感謝言うのは止めろ。俺の良心に罪悪感が突き刺さる。
俺は後でランに結果を聞いたあと、それに見合ったプレゼントを用意しようと心に誓い、部室へ向かうランと部長もとい優正と別れ、俺と勇子は自身の教室へ再度脚を進める。
「ランちゃん、今日もテンション高かったね」
「大会が終わって、優正も部活引退して、気合い入れるぞーとでも思ってたんだろ」
部長だからってのもあるだろうが、体験入部した時は優正がその場を全て仕切ってたからな。
その優正が居なくなったとなれば場を仕切る人物が居なくなる。つまりこれからの陸上部は自分達で引っ張るしかない。だからいつも以上気合いを入れているのだろう。
「ほら、早く教室行くぞ」
「はい先生!」
「誰が先生だ」
先生役は勉強教える時だけで充分だからな。
ランと優正の姿を見て少しは元気を取り戻したのか、ふざける程度の余裕は回復したらしい。この調子なら大丈夫そうだな。
「おっはよ~!」
「おはよう勇子ちゃん」
「おはよう」
「おはようございます」
勇子の挨拶に咲黄、緑、マホの3人は返事をする。
わざわざ勇子が来るのを朝早くから待ってもらっていたみんなには頭が上がらないな……肝心の勇子はそこまで頭が回っておらず、教室に着いた直後にマホとの思い出が蘇ってきたのか、若干涙目になってフラフラ歩きながら自身の机に顔を伏せたけど。
「うぅ……」
「勇子、まだ落ち込んでいるのかしら」
「だってぇ……」
「勇子ちゃんが悲しんでたら、マホちゃんも一緒に悲しくなっちゃうよ」
「それは、分かってるけど」
「そうですよ。折角此方の世界に来たのに、元気よく再会出来ないじゃないですか」
「うぅ、それはそうだけど」
「私も勇子ちゃんが元気になるよう手助けしますから」
「でもマホちゃんが居ないと寂しいよぉ。ねぇ、マホちゃんもそう思う、よ……ね?」
そこで、ようやく勇子はある違和感に気付いた。
まずは幻覚だと思い目を擦る。しかし視界は何も変わらない。
夢だと思って頬をつねる。だが痛いだけで何も変わらない。
もしやと思って目の前の人物の頬を触る。当然ながら触った感覚がある。
「?????」
「勇子ちゃん、一週間ぶりですね」
「いやちょっと待って!?」
魔法世界に帰った筈のマホが、何気無い顔でこの世界に来ており平然と会話をする様子に、勇子は大声で突っ込んだ。
「え? え? え? なんでマホちゃんが? 魔法世界に帰ったんだよね?」
「俺が連れてきた」
「連れてきた!?」
マホ達が魔法世界に帰って解散した後、俺はガク先輩に自身が転生者であり、その自分が居れば魔法世界とこの世界を行き来出来るのではと提案した。
必要条件が揃っているだけで成功するかまでは不確定であったが、何故か思ったよりアッサリ成功した。
どうやら俺がいつ頃かに飲んだ元気になる薬の影響で、扱える超能力もとい元気パワーが増えていたのが原因らしい。
そうえばそんなのあったな。ゲーム的には最大MPが10倍以上に増えるって言うバグみてぇな状態になったけど、俺そんな超能力使わないし出力もそこまで無いから宝の持ち腐れになってたけど……ここでそれが生きるなんてな。
「でも待って。マホちゃんが帰ったの、私この目で見たんだけど?」
「ああ、ちゃんと全員帰っていったな」
「じゃあなんで……」
「ガク先輩と俺でなんかこう、色々上手い具合にやって空間作ってなんやかんやで魔法世界を行き来出来るようにした」
「説明が雑!」
そら転生者の話とかしたら、色々とややこしくなるからな。取り敢えず良い感じになんか色々噛み合ったとでも思っておけ。
マホと勇子は一週間ぶりの再会になるが、実は空間自体はその日の夕方に繋がったのだ。
だが空間がすぐに閉じて帰れなくなるのはマズイと一晩様子を見て翌日の朝。ガク先輩と一緒にマホの元へ会いに行ったのだ。
あの時のマホの顔は面白かったなぁ……。
別れを告げたと思ったら、翌日に何気無い顔してマホの実家である喫茶店で食事してる俺とガク先輩を見て宇宙猫状態になってたからな。その後凄い混乱してたけど。
また、俺が両親の連絡に気付かなかった話に戻るが、それはこの一週間、千里眼と念聴、そしてテレポートを駆使してある人物達を探していて忙しかったからである。
「ドッキリ大成功デ……ア、ごめんなさイ。ロッカーの中飛び出して脅かそうとしたラ、扉が開かないんですけド。誰か開けてくれませんカ!?」
「いったい何してるのかしら……」
その1人が、勇子を驚かそうとロッカーに隠れた結果、ドアが開かずに緑に外から開けてもらうと言うちょっと恥ずかしい思いをしたリュウである。
「リュウくん!? ワタカラちゃんと旅に出た筈じゃ……」
「実は義姉さんにもう一度学校へ通うよう頼まれましてネ。僕にはまだ義姉さんを守れるほどの力は無いようでス」
「いや、単に毒キノコとか毒草をピンポイントで拾ってきて、それ食って体調悪くなる奴みたら誰だって安全な場所に居てくれって思うだろ」
過保護と言うか、これまで世間をあまり知らなかった事が災いしたのか、俺が超能力を苦労して見付けたリュウは思いっきり体調を悪くしていた……うん、本当に何してるんだろうね。
一緒にリュウ&ワタカラ探索に協力していたガク先輩曰く、体調不良の原因はリュウ自身が拾ってきた毒キノコや毒草が理由のようで、身体が丈夫なワタカラは問題無かったようだが、リュウは耐えれなかったようだ。
流石のブラコンも一緒に居れるのは嬉しいが、毎日毒で苦しむ義弟は見てられないと、もし一緒に居たいのなら知識を身に付けてからにしてくれと、俺達の世界にリュウを送還したのである。
「マ、まぁそれは良いんでス。それより咲黄さン、そろそろその鞄を開けても良いのでハ?」
「うん、そうだね」
ゴホンと咳払いをして自身の恥ずかしい出来事を誤魔化すリュウ。
実際は全く誤魔化せていないが、ここでそれを追及し続けても後がつかえているのでスルーをし、咲黄はリュウに言われた通り自身の鞄を開ける。
「みんな、出てきて良いよ~」
「ぷはあっ! 流石に五匹で鞄の中に入るのは苦しいセイ」
「なら魔法少女の姿になれば良かった思うライ」
「部外者は学校に入れないからこの対応は仕方ないフク」
「今日が店の定休日で助かったクラ」
「久しぶりワニ」
そこから出てきたのは5匹の妖精であった。
5匹はそれぞれ喋りながら、息苦しそうに───1つの鞄に5匹も入ってたらギュウギュウだろうから本当にその通りなのだろうが───鞄から飛び出してくる。
「みんな、なんで……妖精国に帰った筈じゃ」
「本来なら忙しくて此方に来る暇なんて無かったフクが、誰かさんの願いのお陰で何もかも直ってたフク」
「もしかして、ここまで考えてのアレだったライ?」
「あぁ。空間が閉じるのは予想外だったがな」
俺がアドバイスを送り、ペンヨウが元気パワーに願った「邪神によって目茶苦茶にされた世界が元に戻りますように」と言う願いの中には、妖精国や妖精達自身も含まれていた。
その為、予定していた復旧作業の全てが無くなり予想していた忙しさは半減。流石に半年以上、国が動きを止めていたのでその辺りの動きを再開したりなどやるべき事は多いようだが、少なくとも時間を裂いてまで此方に来れる程度には余裕があるらしい。
「王様としての仕事はどうだ? ワニヨウ」
「ファ〇チキが食べたい毎日ワニ」
また、罪人として妖精国に赴いたワニヨウだったが、今までの事が全て許されて再び王様としての地位に座っていた。
どうやら妖精達は存在は俺達では感知出来なかったものの、邪神との戦いを見ていたようでワニヨウの記憶の件や諸々を把握していたそうで、それなら仕方無いとこれまでの罪を無かった事にしたようだ。
ワニヨウ自身は納得がいかない様子だったが、フクヨウに「仕事大変すぎフク。猫の手も借りたいから、手慣れてるなら手伝えフク」と、もの凄い形相で頼まれたようで、渋々ながら了承。落ち着きを取り戻したら、自ら牢に入る覚悟のようだ。
まぁ此方に来る余裕があるって事は、そこまで忙しくないだろうがな。
フクヨウとしては適当に理由付けて、ワニヨウを王様としての地位に縛ろうとしているのだろう。多分だが、理由が理由だけに牢に入る必要は無いとでも思ってるんだろうな。
「ふむ。勢揃いしているようだね」
「ガク先輩!」
「見せたいモノ、もといサプライズでマホくん達を連れてきたがどうだったかな?」
「ビックリもビックリ、超ビックリしたよ!」
「それならこれを考えた咲黄くんと緑くんも嬉しいだろうね」
「え!? 咲黄ちゃんと緑ちゃん、マホちゃん達が此方の世界に居るって知ってたの!?」
「今更なのね」
「ハハハ……」
教室に入ってきたガク先輩の言葉に勇子は驚くが、最初から平然とマホと一緒に教室に居る時点で疑問に思わなかったのだろうか。
俺とガク先輩が5日ほど掛けてマホ達を探して───そんなに掛かった大半の理由は、旅に出ているワタカラとリュウに遭遇するのに時間を要した為───此方の世界に一時的にでも来るように説得をした。
すると全員が全員、ずっと居られるわけでは無いがその提案に賛成。それじゃあ予定が会い次第もう一度連絡すると話し、元の世界に帰ったら、科学部の部室に来ていた咲黄と緑にバッタリ遭遇。
どうやら元気が無い勇子をどうにかしたいと相談に来たようだったが、俺達の後ろにある空間を見て何をしているのか2人に問い止められ素直に白状。
魔法世界に簡単に行けるようになった事に驚かれつつも、どうせなら勇子を驚かせたいと咲黄と緑の2人はサプライズを考案。俺達全員がそれに乗っかり、今に至るのである。
(❴勇子くんは相当驚いているようだね。かく言う私も、力男くんが別世界出身者と聞いて驚いたがね)❵
❰(誰にも言うなよ?)❱
❴(分かってるさ。ここで君の秘密を言って無駄に混乱を招くようなマネはしないさ)❵
この人本当に驚いてるのかなぁ。
ガク先輩に転生者だと話した俺だが、それ以外のメンバーにその事は一切喋っていない。もう全てが終わったから、ここで今更転生うんぬんの過去話をした所で特に意味は無いし。
「さて。勇子くん、マホくん。再会したのは良いけれど、互いに伝え忘れてる事は無いかね?」
「「あっ」」
ガク先輩の言葉に2人は気付く。
驚いたり、サプライズを仕掛けたりはしたけれど、まだ伝えていない大事な事があると。
「勇子ちゃん」
「なぁに。マホちゃん」
「ただいまです!」
「うん、おかえり!」
勇子とマホが互いにハグをしている光景を眺めながら、俺は今後の喧しくも楽しい生活を考えて笑顔を浮かべるのであった。
~THE END~
はい、今回で完結です。
締めの台詞は誰にしようか悩みましたが、世界観としては魔法少女が主役なのでマホと勇子に任せました。
最後の「笑顔を浮かべたのであった」は、第1話ラストの「スカイブルーとワニ男が戦っている中、俺は今後の生活を考えて笑顔を浮かべていた。」のセルフオマージュです。
最終回には学生組を全員登場させたかったので、そのついでとして陸上部の部長の本名を出しました。
『長神 優正』の意味合いは「優しく、そして正しくありますように」です。今回唐突に決めました。
他にも語りたい内容はありますが、長くなるので割愛。そして最後に一つ、宣伝させてもらいますね。
一度はマホ達とお別れした俺達だったが、無事に再開する事が出来て、ラスボスも倒して見事にハッピーエンド!
だが俺達の日常は終わらない! テストだったり、俺がマジュと対面したり、ワタカラがリュウを尾行したり、勇子がダイエットを決意したり、俺達が妖精国に遊びに行ったり、授業参観が開かれたり、緑の店を手伝ったり……うん。なんか、平和な日常でも相変わらずカオスになりそうだな。
番外編:俺達の日常が続いていくで章(仮)
はい。本編が完結したので番外編スタートです。
番外編の投稿開始日は未定です。




