表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対最強女子高生 〜わたし陰陽師ってやつです。先生、式神になってくれません?  作者: 猫の玉三郎
ひとりコックリさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/42

五話 ひと コックリさん

 ひとりコックリさんは霊を呼び出さない。


 そう口を挟んだのは田代(たしろ)という名の生徒だった。江古田の友人で、このことは塾仲間から聞いたと言う。


「普通のコックリさんは霊を呼び出していろいろ答えてもらうんでしょ。ひとりでやっちゃいけないのは、霊がそのひとりを標的にしちゃうから……だけど、この『ひとりコックリさん』は霊を呼ばないの。おまじないみたいなもので、紙だってぜんぜん違——」


 言い終わるよりも先に異変が起こった。


 江古田の座っている椅子と机がカタカタと音を立てた。誰かが小さく揺らしているような音が小刻みに続く。カタカタ、カタカタ。江古田の顔からみるみる血の気がなくなり、蒼白になった。何か声を出そうとしているのか口がわずかに動いているのだが、漏れるのは呼気だけだ。


 勝手に動く机と椅子。

 紙面から離れられない女生徒。


「ひっ……!」


 恐怖に顔を引きつらせた女子たちが一歩下がった。


(くっそ、これもう明らかに霊現象じゃん)


 藁田は手首に着けていた桃色の数珠に手をやった。大丈夫、落ち着いて。自分に言い聞かせて深く息を吸い込み、己れに発破をかけた。気合い負けしちゃいけない。


(こちとらオカルトものは大好物なんじゃい! 情報化社会の申し子をなめんなよっ!)


 ぎりっと奥歯を食いしばると、ブレザーのポケットからお清めの塩を取り出した。斎場などでもらえる小さな個包装だ。勢いよく封を切ると机の上にぶちまけた。


「くらえ清めの塩ッ!!」


 そしてすかさず振り返り、あっけに取られている他の生徒に向かって「パプリーズか制汗スプレー!!」と喝をいれた。なんのことか分からずキョトンとする生徒もいたが、心当たりのある生徒が自分の荷物を漁りはじめる。


 江古田の机はぴたりと動きを止めていた。


「これでいいですか」と差し出されたのは銀イオンが配合された制汗スプレーだった。


「目つぶって!」


 そう言うと江古田の全身にスプレーをかける。シューっという音とともに白いもやが広がった。使用量をはるかにオーバーし、缶がみるみる冷えていく。しかしそれが功を奏したのか、江古田が十円玉から指を離した。転がるように椅子から離れると、みんなのいる場所へと避難した。


「……すごい、さすが藁田さん」


 誰が言ったのか感嘆の声が漏れた。室内はまだスプレーのもやで煙たく、すこぶるフローラルな匂いがしている。生徒たちはようやく安堵したようでぎこちない笑みを浮かべていた。


 でもその時——


 カタ。

 カタカタ。


 机の足がまた動いた。誰もいないのに、勝手に。

 全員が悟った。江古田は離れられたが、異常現象を引き起こしているモノはまだここにいる。


 誰かのごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。恐怖で誰もが身動きできないなか、突然ガラガラと扉が開いた。すると一刃の清涼な風が部屋の中に入ってきて、窓辺の重いカーテンを揺らす。


「すいません、イアンいますかー?」


 扉から声をかけたのはひとりの女子生徒だった。ふわっとしたボブヘアに大きな瞳がきらりと光る女子生徒。

 ——三葉唯香だった。


「みつばちゃん!」


 そう叫ぶとひとりの男子生徒がぴゅーんとその子に擦り寄った。今にも泣き出しそうな彼は文芸部の石田イアンといって、なよっとしていて気が弱い。父親がイギリス人のハーフだった。


 気付くと部屋にあった異変が治まっていた。重たい空気は三葉の登場によって霧散し、机もピタリと動きを止めている。その上にはいまだ白い紙と十円玉があるのだが、先ほどの異変などまるでなかったかのように無害な顔をしていた。


 三葉の視線がすっと机の上に注がれるのを藁田は見た。そして部屋を見回してからイアンに耳打ちをすると、彼は不思議そうな顔をして出ていってしまった。何か言いつけられたようだ。


 彼女は例の机に歩み寄り、笑顔で振り返った。


「すいません、これはなんですか?」


 指をさしたのはコックリさんの用紙だった。



 ◇



 換気のために窓とドアを全開にして、隣の教室を借りた。さすがにさっきまで変なことが起こっていた部屋に居続けるのは気分が悪い。解散するのも心ぼそくて、全員が項垂れながら移動をした。


 藁田も詳しく話が聞きたかったので、三葉に乗っかる形で説明を求めた。もちろんさっきまでの威勢はなく、オドオドしながらである。


『ひとりコックリさん』をやっていた江古田、友人の田代、藁田を呼びにいった山渕、他にも部員が数名いる。石田イアンだけは席を外していてこれで全員だ。それに加えて藁田と三葉。


 江古田はぐったりとしていて、気力の全てが削がれているように見えた。無理もないだろう。開放感を求めてこちらでも窓と扉を全開にする。


「ま、まず、ひとりコックリさんについて、教えてください」


 話の途中であったために、藁田も全容を聞いていない。『霊は呼ばない』『ただのおまじない』言葉の意味はわかるが、繋がりはしない。江古田はしゃべれそうにないので、代わりに田代が口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ