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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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目標物

前回のあらすじ


夜の海の上側から、悪意を持った誰かが迫って来る。戦闘に不慣れなレイと、海に不慣れな晴嵐は、必死に攻撃を避けている。上にいる奴らは密漁者で間違いないが、奴らの持っている『武器』にゾッとする。水中用の銃と思しきものに攻撃され、不慣れなりに晴嵐は賭けに出た。

『オイオイオイ! 話と違うじゃねぇかよ……!』


 今までに存在しない、新世代の武器……そんな事前説明を受けていたのに、いざ実際に使用して性能に呆れた。

 製造元は恐らく『例の島』だろう。そこで取引できる連中から、いくつもの海賊を経由して……要は横流しで売り渡された武器だ。奇妙な形状の武装は、思った以上に効果を発揮しなかった。


『随分派手な武器ですね……あんなキラキラ光って使えるんです?』


 自分と同じ、今回限りの雇われが感想を述べる。襲撃者は思ったまま『新武器』の使用感を愚痴った。


『夜の海なら……まぁ昼間でもそうか? 視界が悪いし『どこに向かって攻撃しているか』が分かるのは便利かね。光ってなかったら、明後日の方向を攻撃しちまうかも』

『射程距離は? 圧倒的に遠隔から狙えるって話でしたが』

『いやぁ、思ったより届かねぇし、発射するモンも散るし……微妙』

『えぇ? もしかしてゴミ掴まされました?』


 裏稼業は食うか食われるか。横流し品に粗悪品が混じっているのも珍しくない。気づかない方が馬鹿だと笑われる世界だ。ハズレの武器と懸念しているようだけど、使用者はこの武器特有の利点に気づいていた。


『明らかに強ぇ所は……連射が効くトコだな。銛を投げたり、ボウガンの仕組みで銛を発射するのもあるが、どれも一発ずつだ。けどコイツは違う』


 特に訓練もしていないので『新武器』の取り扱いは遅い。ゆっくりと下側の、妙に長く幅広い部分に手を伸ばす。空になったソレが『この武器専用のカートリッジ』だ。腰に下げた予備のカートリッジに手を伸ばし、しっかりと噛み合わせて装着した。


『へへっ、これでまた攻撃できるのは破格だぜ。動作も相手に向けて、金具を指で引くだけでいい』

『すごく簡単だし、二十以上さっきの針を飛ばせるんでしたっけ』

『あぁ! しかも連射も出来る! 銛を投げるの馬鹿馬鹿しくなるわ。うぇーい!』

『ちょちょちょ! こっち向けないで下さい!』

『おっ? ビビってる? ビビっちゃってるぅ?』

『危ない! 危ないから!』


 ヘラヘラ笑って『新武器』を向ける荒くれ者。突きつけられた側は、たまったものでは無い。勢いよく首を振る彼を見て、ますます調子に乗りそうになったが……海上の船から発信があった。


『おい人魚共。シーフロートに通報されてるかもしれねェんだ。さっさと黙らせるか、ズラかるか決めねぇと』

『新武器の使い勝手を、確かめてくれって話は?』

『一番は密漁って言っただろうがタコ! 逮捕パクられたら元も子もねェ! モタモタするなら置いていくぞ!』

『へいへい……んじゃ、オレ以外はみんな帰ってろ。もうちょいコイツを試してみる』

『相手は二人ですよ?』

『素人だろ。負けねぇよ。コレもあるし』


 余裕たっぷりに武器を見せつけ、他の人魚族……セイレーン達は船側に引いていく。口ぶりからして本業は密漁。一般人を攻撃するのは、あくまで仕事の邪魔だから。ただ……新武器を手にした人物は、気が大きくなっているようだ。


『っと! なんだぁ? 合流でもする気かよ? 位置がバレれるぜェ!』

『はぁ……さっさと終わらせて下さいよ?』

『へいへい! アイツにゃ、いい的になって貰おうか!』


 一時的に消えていた『ライフストーンの光』に、目の色を変えて武器を構える。先端に銛を括りつけた『新武器』だけど、もう突撃を仕掛ける気はない。そんなことより、もっと有用な使い方を知ったから。


『オラオラオラオラオラァ‼』


『新武器』を使用すると、腕の中で暴れ回る。両手でしっかりと構え反動を抑えて、光る針を大量に放ち続けていた。

 攻撃が当たったらしく、発光する物体と影が躍るように揺れる。動きが鈍いのは、命中したからに違いない。それでも容赦なく『新武器』を叩きこみ続け、カートリッジ切れになるまで攻撃を続ける。


『ヒャハハハハ! こんなに簡単なんだなぁ!』


 指先を動かして、敵に向けるだけで遠距離攻撃が出来る武器……相手はきっと、身体中穴だらけになったに違いない。なんて楽で、素晴らしい武器なのか。使用者は笑いが止まらなかった。念のため空になった『専用カートリッジ』を入れ替え、動きの無い光源に近づいていく。


『へへへ……威力は十分そうだ。さぁて、金目の物でも貰おうかねぇ……』


 他の奴らを追い払ったのは、仕留めた相手から丸っとすべて奪うためか。夜の海に漂う目標物へ、武器を構えたまま近づいていく。逃げようとしたら指を引けばいいし、接近戦も銛がついている。何より相手は直撃したはず。満足に動けないだろうと高を括って。

 ライフストーンの光に近づき、ヘラヘラと笑って迫る。反応の無い相手に近づいて……呆然とするしかない。

 闇の中、シルエットと光源を頼りに近づいたのは……『ライフストーンを括りつけた人魚族の水着』だった。


『――は?』


 新武器によって、水着には穴が開いている。けれど出血の痕跡がない。何がどうかと理解する前に、闇の中から鋭く矢のように……裸身の男が突撃してきた。


『な、何⁉』

『ヒュッ!』


 腕に握った一本のナイフが、新武器を握った海賊の手を貫く。

 この男が『ライフストーンの光』を目標物にしたように……脱いだ服にライフストーン括りつけて、別の影が接近した瞬間に仕掛けたのだった。

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