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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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次の調査先は……

前回のあらすじ


ルノミと晴嵐が共にダンジョンを進める事に、合理性が無いとテティに指摘され、無意識に入れ込んでいた自分を知覚する晴嵐。また、ルノミは妙にダンジョンについて察しが良く、何らかの特殊な手段でダンジョン主と接触できるかもしれない。様々な面から、地球の男二人は別行動し、役割分担すべきと結論を出した。

「それじゃあ……僕は今後もダンジョンに潜ってみます。もしかしたら『裏技』を発見して、ショートカットや接触方法を見つけられるかも」

「任せるが……変な話に引っかかるなよ。頼むから」

「気を付けます!」


 ピシリと敬礼するルノミの姿に、何故だが晴嵐の不安は大きくなった。やはりどうにも頼りないと言うか、脇の甘さを感じてしまう。それでも任せるしかないと割り切って、晴嵐はテティに聞いた。


「んで、千年前の史跡調査についてじゃが……わしは首都ユウナギで調べるより、他所に行くべきじゃよな? ルノミはダンジョン近辺に居座るのだから、こっちに慣れて来た所で、因縁の相手に接触しない程度の調査なら出来る」

「そうね。必要ならメールで連絡すればいいんじゃない?」

「ですね! 役割分担しながらでも、ライフストーンがあればお進捗報告も出来ますし。欲しい情報がでてきたら、遠慮なく僕も言いますね」

「あぁ、わしもそうさせて貰おう」


 向こうでもこちらでも馴染みの機能のメール……遠距離からメッセージを送受信できるのはありがたい。役割分担の利点を、大いに生かせる環境と言えよう。ここまでは良いのだが、晴嵐は僅かに表情を曇らせた。


「しかし……行き先をどうしたものか。ここ聖歌公国のユウナギに来るまで、ユニゾティアの各所を巡って来たが……他に良い場所があるか?」

「ここまでどんなルートを通って来たか、教えてくれる?」

「まずはホラーソン村から始まり、緑の国の城壁都市レジスにそこそこ滞在。その後に亜竜自治区に移動し、武人祭を肌で味わっている最中に『戦争』が発生。傭兵として登録した後に、ルノミの存在を知って首都ユウナギで接触。しばらくダンジョンに同行した……わしがここに来るまでの経緯を纏めるなら、こんな所か」


 晴嵐のユニゾティアをどう歩いたか、その旅路を大雑把にまとめるとこうなる。

 ……意外と回った国自体は少ない。亜竜『自治区』な分、あそこを国家とカウントしていいかは怪いが、独特の風土・空気感はあったからまぁ良し。テティは宙に視線を泳がせてから、知恵を求める彼に示した。


「それなら……次は『東国列島』じゃない? 内陸はざっと回れたみたいだし、海の向こう側を目指してみたら?」


 どこかで聞き覚えのある名称だ。軽く目を閉じて思案に耽ると、比較的すぐに晴嵐は思い出した。


「確か……侍がいる国の事か?」

「知っていたの?」

「戦争時の傭兵時代に、東国列島出身の侍がおってな。相当に修練を積んていた奴で、本人は武者修行中とか言っておったが……とてもそうは見えんかった」

「手ごわかった?」

「対峙はしておらんが……進んで敵対したくない」


 晴嵐は侍の活躍を思い出す。確か戦争中に『狂化』の魔法が発動し、聖歌公国側面を突かれそうになった場面があった。その際傭兵隊は、側面に動く不自然な者どもへの応対を任され、結果的に『狂化』の魔法にかかった山賊どもを、最前線で迎撃する流れに。晴嵐も善戦したとは思うが、それ以上に『侍』は戦果を挙げていたと感じている。

 彼が脳内で回想していると、ルノミは液晶を輝かせていた。


「サムライ!? って事は……ニンジャもいるんですか!?」

「知らんわい。どうでも――」

「いるらしいわよ?」

「カワバンガ! ニンジャだ‼」

「ルノミ?」


 サブカルチャーに浸ったルノミからすれば……忍者に憧れを抱いたとしても不思議はないか。何故か他国によって脚色された『ニンジャ』が人気で、日本に戻って来ても受け入れられていた気がする。「忍者亀……わからないかぁ……」と呟いたのを無視しようとしたが、ルノミはまだまだ喰いついた。


「晴嵐さん。もしかして東国列島って……『日本』の昔の光景に近いんじゃ!?」

「あー……そうかもしれん。わしの見た侍も和服に日本刀じゃった。流石にチョンマゲはしておらんかったが」


 共に見張りをして、夜食にありつけた時も……出された炊き込みご飯について、同じような感想を言い合った記憶もある。バジルペーストにオリーブオイル、ベーコンにオニオンスライスの具材を『炊き込みご飯』と呼びたくないと。

 逆に言えば……晴嵐の、日本人に馴染みのある『炊き込みご飯』を連想したに違いない。まだこの目で見ていないが、可能性はありそうだ。

 二人の会話を補助するように、テティも東国列島について話した。


「あなた達の……晴嵐やルノミの地域って、サムライやニンジャがいたの?」

「あー……かつてはそういう身分や人たちがいた、って感じですかね。僕たちの祖先、昔の人たち……みたいな?」

「それこそ『史実』として残っておったよ。現在まで……いや、滅亡が始まるまで、桜や梅を愛で、田んぼに実った米を食して、発酵食品の味噌汁に納豆、焼き魚をいただいて……」

「秋には真っ赤になったモミジを眺めて、寒い大晦日には年越しそばも食べましたね。コタツに潜りながら食べるミカンも美味いんだ」

「参ったな。しばらく経験していないのに……どれもみな、懐かしい」


 自分自身の文化圏やルーツには……人間皆、特別な思い入れがあるものだ。ボロボロに滅びてしまった地球だが、それでも古き良き日本的光景に感傷を覚えてしまう。二人が郷愁の光景に浸る中、眺めるテティは静かに思案していた。

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