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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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吸血鬼の真実

前回のあらすじ


テティ、ルノミ、晴嵐の順番に並び替えれば、一つの歴史の流れとして、地球の話に整合性が取れると言う。その前提を元に晴嵐は質問した。ヴァンパイア連中は世界各所にいたか? と。話を進めていくうちにルノミがある可能性に行きついた。安っぽい想像か? と問いかける晴嵐に、答える事が出来ない。置いていかれたテティが詳細を尋ねる。

「これは……その、僕らの世界での、創作物の話でよくある設定なんですけど……」


 前置きが長くなってしまうが仕方ない。テティは向こうの……いや、晴嵐やルノミが生きた時代の娯楽の事を知らないのだから。


「生物の設計図が壊れると……突然変異って現象が起きやすくなるんです。大体は悪性腫瘍になるんですけど、元々の生き物の身体に、異質な変化が起きる現象ですね」

「……それって、必ずいい方向に行くの?」

「何とも言えません。現実的な話をするなら、大して意味が無いものから、むしろ不利になるような変異もあり得るでしょう」

「遠回しな反語ね。創作物の場合は……逆に優位になるような『突然変異』が起きるって事?」


 ルノミが液晶頭部で瞬きする。彼女の理解力はズバ抜けて高い。当たらずとも遠からずな言葉を、ルノミは肯定しつつ、否定した。


「そういう創作物もあります。けど、僕や晴嵐さんや話したいのとは、ちょっと方向性が違います」

「方向性?」


 テティは釈然としない顔つきだ。サブカルチャーに強いルノミが、彼女の想像した方向性を補填しつつ続きを話す。


「テティさんが想像したのは、人間の背中に翼が生えて、空を自由に飛べるようになったりとか……ですか?」

「そこまでのメルヘンは考えなかったわよ。亜竜種の尻尾がヒューマンに生えたりするとか、今のあなたみたいに腕が四本生えたりとか」

「ありますね。そうした作品も。突然変異が祝福みたいに、特別な力として身体に宿るパターン……普通に生きていた人間が、ヒーローになるきっかけ……みたいな感じです」

「悪い事にも使われそう。晴嵐ならどうする?」

「何故わしに聞いた」


 突然テティが晴嵐に振ると、彼は大袈裟に肩を竦めて見せた。ドブネズミ根性を見越しての冗談である。噴き出して笑うルノミを横目に、晴嵐は話を戻した。


「話のタネになる現象なんざ、大体両極端に使われる事が多い。今のルノミは『人間に変化をもたらす』方向性じゃが、他にも使い方はある」

「どういう事?」

「わしら人間が不利になるような、突然変異の方向性じゃよ。その生き物や種族にとっては有利でも、人類にとっては非常に困る……そういう変異の形だ」


 たとえば? と目線で促すテティに……嫌な過去を思い出しながらも、晴嵐は語った。


「要は『身近な生き物が、突然化け物になって襲い掛かって来る』内容の……作り物の恐怖を安全圏から、かりそめのスリルを味わうホラーやサスペンス創作物で、突然変異って現象は結構よく用いられておったんじゃ。

 例えば、人間が化け物になるとか、鳥とか動物が無茶苦茶狂暴になって、人間を積極的に襲ってくるとか……あと植物が動き回って、人間を捕食し始めるのもあったかのぅ……」

「ダンジョンのエネミーが、そのまま外部に出て来る……みたいな?」

「ん……順番が逆かもしれません。ダンジョンの一部の敵に……この手の創作物の元ネタ使っている、のかも」

「人を襲うモンスターとしては、完璧な造形じゃ。しかも著作権を気にしなくていい。ここの世界の中なら、バレようがない上に訴えられない。作った奴らが全滅してるからな」

「笑えないですよ」


 晴嵐、相変わらず黒いジョークがキツい。失笑すら買えない空気を、過去の地球人が破る。


「つまり……突然変異って現象は使いやすいのね? 雑に扱えて、それなりに説得力を持たせられる。創作ほど都合よくはないけど、現実にも起こり得る概念……その理解でいい?」


 晴嵐は感嘆の苦笑を漏らした。流石テティ、凡人と頭の出来が違う。この説明で『現代感覚』に追いつくのだから大したものだ。ここから先は、晴嵐がルノミの説明を引き継いだ。……ここから先は、経験者の彼の役目だから。


「ところが……わしの世界では、創作物が創作じゃなくなった。世界中に核弾頭が降り注いで、それを引き金に『人の生き血を啜る化け物ども』が出現しちまった。どういう原理か知らないが、人間が変異した……と、ずっと思っていたわい」


 テティは……晴嵐が何を言わんとするかを理解した。彼らが、テティから見た未来の彼らが、何を想像したのかを察した。


「その核って兵器が世界中に使われて、同じように人類の影で生きていた『ヴァンパイア』も巻き込まて……」

「映画や創作物で見られるような『狂暴化』『理性の消失』の『突然変異』の症状が起きた。それが……」

「恐らくそれが、わしの世界に出没した化け物……『吸血鬼サッカー』の正体じゃろう」


 晴嵐の世界を滅茶苦茶に破壊し、人類を滅亡へ追いやった元凶の一つ……吸血鬼サッカー。どこから現れて、どうして生まれたのか、結局誰も解き明かせなかった。

 この想像も憶測の域を出ないが、ルノミとテティの証言を基に仮定を重ねている。的外れでもないだろう。


「いきなり人間が『血を吸う化け物』になって、何故か太陽光や銀が弱点の奇妙な生態に変異した……と説明されるより『最初からそうした弱点と性質を保持していた、人に似たヴァンパイアが実在していて……そっちが化け物に変異した』って方が筋は通る。どっちも飛躍した話ではあるが」

「今更感はありますね」

「じゃな」


 異世界、ユニゾティアへ到達した彼らとしては……頭ごなしに『ファンタジー』と否定できない立場。最低限の考察過程は踏めたと思う。古く埃を被っていた謎だが、思わぬ解明に知的な満足感は得られた。一息つく晴嵐に対して……『過去の地球人』のテティは、疲れたような嘆息を漏らす。


「でも……私としては複雑だわ。私が生きた時代、遥か先の未来だとしても……そんな風に地球が滅んでしまったなんて。死人が言えた義理じゃないけど……」


 過去に生きた人間として、未来の人類が自滅に近い滅び方をして……黙ってままも難しい。

 何も出来なかった未来の二人は……返す言葉が無かった。

用語解説


吸血鬼サッカーの正体


 彼らの地球で人類の影で生存していた種族、ヴァンパイア。世界中に存在していたがために、世界に核が降り注いだ際に巻き込まれた。人間よりも生命力に優れた彼らは、生き残りこそしたものの……放射能によって突然変異を引き起こす。

 理性無き吸血本能に飲まれた怪物の正体は……核の被害者でもあったのだ。

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