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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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ヴァンパイアと吸血鬼

前回のあらすじ


テティ、ルノミ、晴嵐の三名が語る『地球』は、同一の物である可能性が高いと判明した。全く違うように思えたテティ・晴嵐の『与太話』だが、ルノミがテティの話の一部を知っており、ヴァンパイアの事も二人は知っている。どうやら晴嵐とルノミの生きた時代より、かなり手前の年代で『テティの前世』があり……そこから生き残ったヴァンパイアがルノミと接触。彼らの行動により、ユニゾティアに人々が現れ、晴嵐の世界から政府役員が姿を消した……この順序なら整合性が取れる……

 馬鹿馬鹿しいと一蹴したいが……『ヴァンパイア』について、晴嵐は否定出来ない。何せ晴嵐の時代を『終末世界』に導いたのは……人を襲って血を啜る化け物『吸血鬼サッカー』の出没が大きく影響している。故に類似する存在の『吸血種』や『ヴァンパイア』も……完全に拒絶しきるのが難しい。いや、むしろこの『ヴァンパイア』が、人知れず実在していたとするならば、吸血鬼サッカーに対してある仮説が立てられる。


「ルノミ……いや、テティも想像できる範囲でいいんだが」


 各々に思案したい所もあるが、それはそれとして、三人が集まった今で無ければ話せない事柄もある。止まってしまった話を、晴嵐がもう一度始動させた。


「ヴァンパイア連中は……世界中にいたと思うか? テティの時代の戦争が終わった後、人知れず、世界の裏に」

「……いると思う」


 地球の未来を知らない……そのはずのテティが真っ先に断じた。


「私の夫に……いえ、私達に復讐しに来た人もいれば、様子を見に逢いに来たヴァンパイアの人もいたわ。だから全滅はしていない。それ以降も生きているなら……自分たちの種が絶滅しないように、人類の中に紛れながら生きていくって感じじゃないかしら? あってる? ルノミ」

「おおよそその通り……だと聞きました。そもそも吸血生物って、血を吸う相手が絶滅したら生きていけない。だから『人類には発展して貰わないといけない』立場だと」


 捕食者と被食者の関係は……実は一方的な関係性じゃない。エサとなる生き物を絶滅するまで喰い尽くせば、捕食者側もいずれ餓えて死ぬ。事実として晴嵐の世界の『吸血鬼サッカー』は、人類の数が減るにつれ、比例して姿を見なくなっていった記憶がある。


「誰でも分かる事じゃな。じゃが……わしの世界の吸血鬼サッカーは、んな理性や計算が働かない、捕食本能しかない化け物だ。なぁルノミ、映画の観過ぎと言わるかもしれないが……」


 言い澱む晴嵐の続きを、ルノミは静かに待っている。これからの仮定は我ながらとんでもないが、既にこの世界、この状況自体がファンタジーの塊だ。今更踏み止まってどうすると腹を決め、改めて続きを口にした。


「世界中に吸血鬼がいて、核弾頭も世界中に降り注いだ。ヴァンパイアも……きっと巻き込まれて死んだだろう」

「……そうですね」

「それでも中には……生き残った奴もいたはずだ。普通の人間より、生命力自体はあるんだろう?」


 テティとルノミは互いに顔を見合わせて……曖昧に頷いた。


「僕とは荒事になってないので、聞いただけの話ですが……」

「高いわ。特に再生力は人間と比較にならない。太陽光に弱いけど、弱点を突かれない限りは……指が折れたぐらいなら、一時間も経たずに回復するはずよ」


 晴嵐の折れた指を見つめつつ、テティが証言する。男は苦く表情を結んで続けた。


「なら……核が使われて、人間なら死んでいるが……ヴァンパイアなら生き残れた。そういう状況も想定できそうか」

「……核の威力が分からないから、私は断じれない」

「それの何が問題……あ、あ、あぁぁぁあっ!?」


 ルノミは気づいたらしい。前置きで『映画云々』と告げていたのも、彼の連想を助けたのだろう。液晶をチカチカと点滅させて……何故『吸血鬼サッカー』が誕生したのか、いや『誕生してしまったのか』を察した。


「核の……放射能による突然変異ミュータント化……!?」


 それこそ創作物……ファンタジーではなく、サバイバルホラーに類する作品群の話だが、ルノミは晴嵐と同じ結論に行きついたようだ。


「…………安っぽい話と思うか?」

「…………」


 冗談ですよね? とからかいもしないルノミ。つまり可能性を否定できないと、暗に認めたようなもの。ゴーレムは晴嵐の世界が、滅びゆく過程を見ていたらしい。吸血鬼の性質は、彼も見聞きしているのだ。

 アレを見れば分かる。理性は蒸発し、獣性と捕食本能を高め、生き血を啜る悍ましい人類の天敵。人類に隠れて共存するなど、全く発想の外だろう。

 沈黙する未来の二人に、戸惑いがちに彼女は声を上げた。


「私を置いていかないで。放射能とかミュータント……って何?」

「先ほど話した『核』が持つ毒素の名前です。被爆……あ、その、核の毒素、放射能の毒素にやられてしまった事を『被爆』って呼ぶんです」

「なんでわざわざ区別するの?」

「厳密には『毒』とは違うんです。原子の崩壊……って言っても分かんないですよね。ものすごく雑に表現しますと『生き物の設計図を壊してしまう』毒なんです」

「設計図を……壊す……?」


 テティは理解しかねるらしい。首をかしげる彼女に、ルノミは根気強く説明を続けた。


「生き物の身体には、一人一人『その人の設計図』が体の中に刻まれています。でも、この設計図が壊されてしまうと……悪性腫瘍が体のあちこちに出来たり、生殖機能……子供が作れなくなったり、異常が発生しやすくなるんです。おまけに治療法はないし、毒がどれだけ回っているかも……症状が出てからじゃないと把握が難しい」

「……厄介なのは理解したわ」


 でも、その話とこの話、何が関係あるの? 疑惑の目線を向ける彼女へ……ルノミは拙くも、説明を続けた。

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