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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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地球人の会合

前回のあらすじ


 焦がすほどの憎悪に身を委ね……29階層のボス格、髑髏の魔法使いが晴嵐の一撃に倒れる。だが彼は許しはしなかった。過剰なまでの攻撃を繰り返す彼を、ルノミにが強引に引きはがす。

 新兵を率いるタイラー卿は『彼を悪い例』と呼び、この場を締めた。

 誰も、釈然としないまま……

 29階層を突破し、30階層に到達後……聖歌公国新兵と、彼らとたまたま合流した探索者一団は解散となった。要は訓練完了で、兵士たちは全員ダンジョンの外に離脱。タイラー卿含む教官役から、反省会フィードバックをするという。解散直前にテティがルノミに話しかけ、後日三人で話し合う場を設けた。


「で、どこから話しましょうか? もうセイランに触れても大丈夫?」


 そうして四日後、やっとテティに時間が出来たので……迷宮の外、聖歌公国の『ライブラリ』で対談の場を設けることに。ルノミ、晴嵐、テティの三名が、談話室の丸いテーブルを囲んでいた。


「指には触れない方がいいと思います。まだ骨折が治ってない」


 ルノミのそれは皮肉か冗談か。二人の視線の先、晴嵐の左手小指と薬指は、29階層の戦闘でへし折れている。指には添え木と……ポーション色に染まったガーゼが巻かれていた。


「ま、一般の人が上級ポーションなんて使わないものね」

「いえ、その……廉価版で治療しているそうです。晴嵐さんはケチでして」

「せめて倹約家と言え」


 まだ痛みが残っているのか、それとも別の理由か……晴嵐はずっとしかめっ面だ。不機嫌な彼に対して、テティの言葉がチクチク刺さる。


「迷宮ポイントで購入できなくもないでしょ? あなた『活躍』したんだから」

「…………別に嬉しくない」

「でしょうね。あのキレ方を見れば分かるわよ。新兵たちの間でも語り草よ?」


 冗談なのか、反省を促しているのか……多分両方だろう。晴嵐をジト目で睨みつつ尋ねれば、バツが悪そうに晴嵐は目を逸らした。


「…………あそこまでキレ散らかす事は、お主たちには無いわい」

「触れたら暴走する逆鱗持ちの過去に、迂闊に触れたくないのだけど?」

「……宇谷や奥川を冒涜しなければ平気じゃよ。やりようがないだろ。お主には」

「そうね。全然知らない人だわ」


 口にしつつもテティは警戒の色を解かないが、しょうがない。問題なく関われていた人でも、あんな暴走を見た後では……迂闊に触れたくなくなる。微妙になった空気を察して、ルノミのフォローが入った。


「晴嵐さんの過去で……死んだ人が化け物になって蘇り、襲い掛かって来る場面があったんです。29階層のボスの幻覚は……晴嵐さんの地雷をピンポイントで踏みぬいた。だからあれは、酷い事故のようなものだと思います」


 大体あっているので、晴嵐はスルーする。しかしテティは首を傾げた。


「地雷って何?」

「あ、えぇと……地面に埋め込んで、何かが踏んだら爆発する罠の事です」

「……向こうの世界は物騒なのを作るのね」

「知らないんですか?」

「少なくても、私の記憶には無いわ」


 前置きもそこそこに、三人は本題に入る。テティ・アルキエラが『前世』とする世界が……『地球』という名称なことについて、だ。


「晴嵐さんの話を聞いて、テティさんは『同じ世界』とは認識していなかった……ですよね?」

「今も実感が無いわ。私の世界に『地雷』なんて兵器は存在しない。セイランの話していた世界を滅ぼす兵器も想像が及ばないわ。超長距離から、一方的に攻撃できる兵器だって知らない」

「あぁ……ミサイルと核兵器の事ですね」

「聞いてもピンと来ないわ」


 疑問点はいくつもあるが……最初に気にするのは『テティは晴嵐やルノミの話を聞いて、地球を一切連想できない』所だ。

 これは逆も然りである。晴嵐はテティの話を聞いて、地球の事だと思いもしなかった。その最大の理由は……


「僕も詳しい原理までは知らないのですけど……確か滅びる前の技術なら、世界の端から端まで狙えたはずです」

「……おかげで、核弾頭が世界中に降り注いじまったがな」

「そんなに恐ろしいの? 核って……」

「こっちも原理は詳しくないんですけど、一発で大都市一つを灰に出来る威力がありました。しかも放射能汚染……僕たちの世界の技術でも、治療法が確立されていない猛毒までばら撒きます」

「なんでそんなものを作っちゃったのよ……?」

「どうして……なんでしょうね……」


 すべてを台無しにした後で、やったことに後悔する。よくある話と笑えるのは、個人単位で済んでいる間だけ。世界を滅ぼす原因となれば……深い後悔しか湧いてこない。

 テティは首を振るばかりだが、晴嵐は静かに頷く。少なくても、晴嵐とルノミの間で見解は合致しているのは確かだ。


「向こうの世界じゃ『核』ってのは常識の一つじゃった。テティ、わしらの『地球』と本当に同じなのか?」

「にわかには信じられないけど……偶然で名称が合致する事ってある?」

「……確かにな」


 常識が通じないのに、世界の名称だけ同一……これを『偶然』で片づけられるか。釈然としない思いの中、ルノミが手を上げた。


「あの……すいません、テティさん? には、二度手間かもしれないんですけど……」

「何かしら?」

「テティさんの前世……あ、えぇと『与太話』でしたっけ? を聞かせて欲しいです。もしかしたら晴嵐さんに分からなくても――」

「あなたならピンと来るかもって?」

「はい」


 ルノミは真剣に言った。晴嵐としては期待薄な提案だが、彼の感性は『クソジジイ』とはかけ離れている。可能性はゼロではない……のか? 半信半疑の晴嵐の前で、テティはどこか嬉しそうに『与太話』を始めた。

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