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テクロ・ミーツ・ガール  作者: 梶野カメムシ
4/7

Work 4


サトウ:『まさか、テクロで泳ぐとは思いませんでした』


 怒られなかったけど、サトウさんはあきれたみたいだった。

 テクロの修理はひとまずなし。

 充電せず、日の当たる場所で丸一日乾かして様子を見るって。それで直らなければ修理らしい。 

 ぼくは久しぶりに窓を開け、日向にテクロを寝かせた。

 今日はカホに会いに行けない。

 あの場所で、ぼくをずっと待ってたりしないといいけど。

 何となく窓の外を眺める。ここからじゃ橋は見えないけど、山から続く崖と、そこに小さく突き出した岬が見える。あそこからなら町も橋も一望できるはずだ。

 引きこもる前に一度だけ、あの岬を探したことがある。

 上から見ると近そうだけど、実際に行くと登り坂の続く山道で大変だったっけ。

 でも、岬には行けなかった。道の途中に柵があって、立ち入り禁止だったんだ。岬の下は絶壁だから、しょうがないんだけど。

 あの場所に、カホと二人で行けたらいいな。

 そんなことを考える自分に気が付いて、急に恥ずかしくなった。

 テクロが直れば、不可能じゃないかも?

 いや、危ない場所にカホを誘うのはやっぱりダメだ。

 

 翌日、テクロはちゃんと復活した。

 放課後を待ってから、ぼくはさっそく町に繰り出した。

「あ、来たー!」

 橋の下で、制服姿のカホが待っていた。

「昨日はごめん」

「んーん。調子悪そうだったしね。もう治った?」

「うん。もう直った」

 ぼくとカホは河原に腰を下ろし、話を始める。

 今日の授業の話。好きな給食。昨日見たアニメ。

 それに、ぼくについて。

「タクロウくん、なんで制服じゃないの?」

「あ、ひ、引っ越してきたばかりだから」

「そうなんだ!

 わたしもだよ。先月この町に越して来たんだ」

 道理で見覚えがないはずだ。

「じゃあ、近いうちに学校でも会えるんだね。

 同じクラスだといいなー」

「あ、うん。そうだといいよね」

 口ごもりながら、何とかごまかすぼく。

 テクロで登校するのはさすがに無理だ。バッテリーは三時間しかもたない。 

 今日も、そろそろ時間切れだ。

「じゃあ、また明日ね」

「うん。待ってる」


 夕焼けの中で手を振るカホの影を何度も振り返った。

 生まれてから、今が一番幸せかもしれない。

 でも、彼女が見ているのはテクロなんだ。ぼくじゃない。

 それでも明日また、ぼくは橋に行く。きっと、必ず。

 理屈じゃ止められない気持ちって、本当にあったんだ。

 いつまで続くかわからないけど、今はカホと会いたい。



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