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success!  作者: kimberlite
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episode20・梅雨とライバルの予感(4)

「中森商業って、この前のミーティングで話してた最有力校じゃねーか!?」

 島岡が指差した学校の名前を見て、ケンは不意を突かれたように声をあげる。若菜や真弓たちも今井のくじ運に悪態をつかざるをえなかった。

「キャプテン、いい人なのにね」

 人柄とくじ運は必ずしも比例しないものだと思いながらも、若菜はくじの結果に対して天を仰いだ。


「まあ、こればっかりは仕方ないとしか言えないな、これから中森商業の偵察に向かうんだが、お前らも来るか?」

 島岡は割りきったような表情でトーナメント表を回収すると、偵察にいくと言う。 若菜たちも予選の早い段階で当たる相手ということで彼についていくことにした。


「そういえば、監督には連絡したの?」

「あ、監督からはお兄ちゃん経由で連絡しておきますね」

 真弓の質問に対して舞がスマホを取り出し、早瀬に電話を掛ける。

「あ、お兄ちゃん? 舞だよ。相手校の偵察にいくから~今日は氷室さんと上杉さん、赤石くんと島岡くんの4人は休むって伝えておいて、じゃ」

「「「「……」」」」

 舞の、兄への電話とはいえ甘え全開ボイスに他の4人は言葉を失い、舞と目を合わせないようにする。こういうときは他人のふりが一番なのだ。

「(ねえ、あれラムタラだよね)」

 乗客のひそひそ話が若菜たちの耳に届いてる。聖ラムタラ学園は名門のミッション系、地元の人なら制服のデザインが分かるくらいには知名度があり、バスを降りるまでの若菜たちは針のむしろに立たされていた。


「みなさん、ごめんなさい。ついつい普段の口調で電話してしまって」

 バスを降りた舞は4人に謝る。普段の口調という一言に突っ込みをいれたくなる気持ちをこらえたくなる若菜たちだったが、舞も反省しているようなので4人は許すことにして、目的地へと向かった。


「あれだな、もうすぐだ」

 島岡が指差した先にはスタンドが見えている。早速そのスタンドへと入っていく若菜たち。

「ちょうどいいタイミングだ、試合が始まるところか、相手は洞爺高校、北海道の強豪だな」

 一般的に甲子園の予選大会は南から順に開催されていく。そのため、一番最後に大会が開かれるのは北海道ということになり、道外の強豪と練習試合が組まれることは決して珍しくなかった。

「中森が後攻だな、ピッチャーは見慣れないサウスポーだな、背番号も二桁だし1年生か」

「……!」

 島岡がそう続けると、マウンドの方を見たケンは若菜の方を見る。同じく、ケンの方を見た若菜もケンを見て、そして、二人はその名を叫ぶ。

「「八代守!」」

「ん、知ってるのかい?」

 その名前に反応するのは若菜たちの近くの席にいた中年の男性、彼はビデオを構えており、並々ならぬ雰囲気で試合を観察していた。

「はい、彼はリトルの時のチームメイトです」

「そうか、名前を教えてくれてありがとう。おじさんはこういう者だ」

 彼はそう言って若菜に名刺を渡すと設置しているビデオカメラの元に戻っていった。


 八代の左腕からボールが放たれ、それがミットへと収まる。

「速い、氷室にもヒケを取らない」

「左だから、なおさら速く感じるね」

 八代のピッチングを見ながら、島岡と真弓が印象を口にする。これだけじゃないと言わんばかりにケンが口を出す。

「しかも、あれだけじゃない、あいつには決め球まである」

 ケンの発言に驚きを隠せない真弓と島岡、それを知ってか知らずか、守がその決め球を投じる。その球筋に島岡と真弓は言葉を失った。

「落差の大きなフォーク、リトルの頃から守の決め球だった。速球だけじゃなくてこっちも磨きがかかってる」


「ゲームセット!」

 試合は10ー0で中森商業の快勝、八代は7回を投げて、被安打5、四球2、奪三振10という圧巻の投球内容だった。

「あはは、これはヤバイかもね」

「ああ、打線だけじゃなくて、投手力も上がってる」

「しかも、他地区の有力校にあれだけの試合内容だ。順当なら甲子園は堅いな」

「正直、戦意がなくなりそう」

 試合を見届けた若菜たちの一言目は実力差を突きつけられたことによる諦めの言葉だった。そこに渇をいれたのは舞だった。

「確かに相手は強かったですが、データもとれました。諦めるのはまだ早いです!」

 その発言で、4人は我に帰る。相手のデータをとって粗捜しをすることが目的だったと、そして舞は決してくじけずにそれを行っていたと。

「そうだな、早瀬の言うとおりだ」

「俺たちが諦めちゃいけなかったよ」

「まだ、戦ったわけじゃないし」

「よし、全力で立ち向かおう!」


「「「「「オー!!!!!」」」」」

 こうして、5人は来るべき地区大会に向けてあらためて気合いを入れ直したのだった。


 その夜、若菜は部屋で男性からもらった名刺を眺めていた。そして、彼女は呟く。

「プロ野球のスカウト、か」

 彼女が持っている名刺、そこにはこうかかれていた。

 -阪神タイガース・スカウト-

 影山英道(かげやまひでみち)

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