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第91話 降伏勧告


〜キヌ視点〜


 3人で戦場へ向かって行くと、そこには異様な光景が広がってた。

 アルト王国の軍は、陣を形成しているものの動く気配はない。でも、敵軍の方では明らかに戦闘をしてる。

 多分、阿吽とシンクが二人だけで暴れてる感じだよね……

 それと、ルザルク達も皆殺しを望んでいないっていうのは戦場の雰囲気を見てたらすぐに分かった。


「ねぇさん方、この状況どう思うっすか?」


「阿吽とシンクが二人で暴れてる」


「だろうな。多分巻き添えを食わないように王国軍は後退したのだろう」


「そうっすよね。ってことは、兄貴達は暴れ放題って事っす……このままだと、間違いなく皆殺しに……」


 うーん、思った以上に暴れてるけど、ギリギリ間に合ったって感じかな。


「この状況を打破するために必要な段階は3つ……」


「え? 何とかなるんっすか!?」


「ん。まずは、ドレイクは竜化したドラゴンの姿で最前線に向かってから、目立つ場所で思いっきり咆哮を上げて。

 それで阿吽とシンクだけじゃなく、敵の指揮官もドレイクの存在に気付く」


「たしかに、これだけ一方的になってるのに、さらに加勢が来たら降伏も考えるかもしれないっすね!」


「まず絶対条件として、敵が降伏しないと止められない。

 私は、ルザルク殿下に降伏勧告をお願いした後に、念話で阿吽達を止める」


 もし、敵が降伏しなかった場合は、私達も暴れて二人に向いてしまう恐怖心を分散するしかない。

 というか、もうそうなったら降伏しないヤツらが全部悪い。

 それに、『アルト王国のために戦った』ということを強調すれば、あとはルザルクが何とかしてくれる……と思う。


 王族であるルザルクが兵士の意識をコントロールできないなら……多分私は、王国兵に対してもすごく怒っちゃうと思う。

 この戦場は、阿吽達が到着するまでは、アルト王国の兵士たちにとって紛れもなく死地だったはず。命を助けられたのに、助けた阿吽達を怖がるなんて、本来は理不尽な事なんだ。


「了解っす! キヌねぇさん、頼むっすね!」


 沸々(ふつふつ)と怒りがこみ上げてきていたが、ドレイクの言葉で我に返る。


「私もドレイクに乗っていこう。攻撃を受けた場合、防御に徹しながらドレイクを回復させる」


「ん。最悪の場合、私も暴れるから。ドレイクは気合い入れて叫んで」


 苦笑いを浮かべながら竜化したドレイクは、ネルフィーを乗せて大きく羽ばたき、空へと舞い上がって行った。


 私も目立つように【光焔万丈】を発動し、味方が敷いている陣の前を移動。

 すぐにルザルク第二王子を見つけ、そのまま近づいて行った。


「ルザルク殿下、阿吽達を止めるためにお願いがある。

 ドレイクが咆哮をあげるから、戦闘が一瞬止まったタイミングで降伏勧告をして」


「っ! キヌさん、待っていました! すみません。僕の力不足なせいで……」


「そんな事は良い。とにかくルザルク殿下にしかできない事だから……お願い」


「わかりました。キヌさんは……どこへ?」


「私も前線に行ってくる。

 ……もし敵が降伏しないなら、私達も暴れるから」


 その言葉にルザルク第二王子とレジェンダの目が大きく見開かれる。

 今の言い回しで、私たちの覚悟は伝わったはず。

 急いで前線まで移動しよう。


 敵陣の方に振り向くと、ドレイクが上空を飛び回り注目を集めていた。

 そして戦場の中央上空で大きく翼を広げ咆哮を上げる。


『ギャルルロアァォォォ!!!』


 んー、70点……かな。

 もう少し怒気と殺気を込めて叫べばいいのに。

 加えて、軽くブレスまで放てれば満点……


 それでも戦場は、一瞬静かになった。

 阿吽達も今なら止まっているはず。すぐに念話をしないと。


≪阿吽、シンク聞こえる?≫


≪お、おう。なんでお前らまで来てるんだ?≫


≪キヌ様! ドレイクは、大丈夫なのですか!?≫


≪ん。もうドレイクは完治した。だからもうやり過ぎないで≫


≪兄貴、シンクねぇさん、ご心配おかけしました! 俺、完全復活っす!≫


≪そうか。んー、ならもういいか。シンクも怒りは収まったか?≫


≪ドレイクが大丈夫なのであれば、これ以上は許してあげましょう。

 しかし、降伏しないのであれば、帝国のクソ虫どもは全て駆除いたしますが≫


≪一度二人とも下がって。ルザルクが降伏勧告をするから≫


 ほどなくしてドレイクは私の居る場所に降りてきた。

 阿吽とシンクも同じ場所に到着すると、ルザルク殿下の声が音声拡張型魔導具を通して聞こえだす。


『イブルディア帝国軍よ、よく聞け! これが……本当に最後の勧告だ。

 もう力の差が分かったであろう!

 今の2人に加え、たった今この戦場に3人の猛者が到着し、アルト王国最高戦力の5人全員が集結した!

 これ以上の戦いは、人道的・道徳的にも無益であると言わざるを得ない!

 いくら戦争であったとしても、命を無駄に散らす事はないはずだ。

 帝国軍人としての“誇りある選択”を期待する……』


 すると、すぐに返答は返ってきた。


『我々帝国軍は、たとえ最後の一人になろうとも、戦いをやめる事は……

 ん、なんだ? なんでお前がここにっ!

 おい! なぜ、うぐわぁぁ!!』


 何かあったのかな?

 急に返答が途絶えたけど……


『すまない! 私は帝国陸軍大佐のジェフ・ベックだ! たった今から、ここの指揮は私が勤める事となった。

 そして、イブルディア帝国軍は、アルト王国軍に降伏する! 武器も全て捨てる! 捕虜にもなろう! だから、これ以上の攻撃は止めて欲しい!』


 なんか途中で喋っている人が変わったけど、同士討ち……かな?

 阿吽とシンクももう落ち着いているし、味方の軍からは嵐のような大喝采が上がっている。

 とりあえず、何とかなった……かな。


 あとはルザルク殿下が上手くまとめるだけ。

 それが大変なんだけど……なんとかするよね?


次話投稿は6/5の予定です!


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― 新着の感想 ―
[一言] 敵の無能指揮官の方は自分だけは殺されないとか謎の考え持ってそうだよなぁ。それか戦力差を全く理解出来ないポンコツか…
[良い点] きぬたんが大人モフに‥感慨無量である [一言] 毎日暑いけど無理せず更新したってな~
[一言] >次話投稿は6/5の予定です! この様な予告があってくれると読みやすいです……が、あまり無理をせず余裕がある時に書いてくれるとありがたいです 体をお大事に
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