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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第302話 天狗の掟


~天狗谷 最奥~


 両側を断崖に挟まれた谷底は、奥へ進むほど細くなる。

 だが最奥だけは、大きく口を開けるように拓けていた。


 そこは、天を衝く岩峰が円形に連なり、底には常に風が渦巻いている。

 吹き上げる気流が岩肌を削り、赤茶けた鉱脈と黒い岩盤を露出させていた。

 空は見えるが、飛び上がろうとすれば乱流に叩き落とされる。


 正に、風を掴む者だけが生き残れる地形。

 ——そして、掟に従う者だけが生かされる場所でもある。


 その広場の中心で、一人の若い天狗が膝をついていた。

 武具は何も持たされず、額を地に擦りつけている。


「あ、あの……申し訳、ありません」


 地に着いた両手足と同様に、発される声も大きく震えていた。


 広間の最奥に鎮座する存在――

 天狗族の長である大天狗・天刑(てんけい)は、静かにそれを見下ろしつつ、数拍置いて口を開いた。


「問う」


 風よりも冷たい声が木霊する。


「お前は、命を受けたな?」


「……は、はい」


「命令は“谷の結界を維持せよ”。

 ……誰の許可で、結界石の配置を変えた」


 若い天狗は一瞬、言葉に詰まった。


「……気流が乱れておりました。

 あのままでは、下層が――」


「答えになっておらぬ」


 天刑は、ゆっくりと立ち上がる。


「個の判断で、結界石を動かしたな」


「……っ」


「掟にあるか? “考えろ”と」


 数秒の沈黙。

 その間に若き天狗は、隠し立てや言い訳は無意味だと悟る。


「……ありません」


「ならば、裁きを受ける義務がある」


 次の瞬間だった。


「待て!」


 割って入る声。

 片翼の天狗――真鴉(まがら)が、片翼を翻しながら二人の間に飛び込んだ。


「結果として、被害は出ていない! むしろ――」


「異端が、口を開くな!」


 強い否定の言葉。だが、天刑は真鴉へと視線すら向けない。


「掟は“結果”を見ない。

 “従ったか否か”のみで裁く」


「それは裁きじゃない。ただの――」


「まだ、言うか」


 天刑は、そこで初めて真鴉を見る。


「……残る片翼も、失いたいのか?」


 その言葉に、周囲の天狗たちが息を呑む。


 ――かつて、

 真鴉は長である天刑に異を唱え、挑み、敗れた。

 皆の前で片翼を引き裂かれ、空を奪われた。


 それだけの事をされながら、今回も真鴉は拳を握り締め、退かなかった。

 己の信念のため。そして、未来の天狗族のために。


「……それでも――」


 言い終える前、天刑は小さく息を吐き言葉を遮る。


「愚か、也」


 次の瞬間。

 風の塊が上空から叩きつけられた。

 若い天狗の身体が宙を舞い、岩壁に激突し周囲に鈍い音が響き渡る。


 翼が――あり得ない方向に折れ曲がっていた。


 命は奪わない。

 だが、空は奪う。

 それが、この谷の掟。


「異端者に、飛ぶ資格はない。翼は、従う者のためにある」


 真鴉はこうなると分かっていながら、何もできなかった。

 その事実が、胸を抉る。

 自身の無力さに残った片翼を震わせ歯を食いしばりながら、(うつむ)きかけた。


 ――その時。


「……なるほどな」


 場違いな声が、谷に落ちた。

 天刑も、真鴉も、全ての天狗が声の方に視線を向ける。


 岩棚の縁。

 荒巻く風の中で、三つの影が立っている。

 その中心で、風に髪を揺らしながらゆっくりと広場全体を見渡した阿吽は……、心底アホらしそうに言った。


「マジでゲロ(・・)みてぇな理屈だわ」


 天狗たちが一斉にざわめく。

 既にキヌは、翼を折られた若い天狗の治療に動き出し、ユラもそれに追従している。


「空を飛べるほど自由な種族のくせに、“個の思考”を捨てろってか? そんなもん、クソ程つまんねぇだろ」


 天刑を見据えながら言い放つ。

 それは天狗族からすれば馬鹿馬鹿しいセリフ。だが、異端と呼ばれる真鴉からすれば清々しい程に真っ直ぐで……、誰よりも高らかに叫びたい口上だった。


「何奴だ? ……まぁ良い。侵入者は何人たりとも生きては返さぬ」


「お前が天刑だな?」


 阿吽は口の端を吊り上げ、静かに告げた。


「そんな掟、俺が叩き壊してやんよ」

 


次話は3/13(金)投稿予定です♪

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― 新着の感想 ―
なんか阿吽どこに行ってもトラブルに巻き込まれてる笑てか自分から突っ込んでるのか
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