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最終話 vs 称号狂い 150回目の婚約、そして……

 149回目の婚約破棄をして数日が経過いたしました。

 149回目の依頼人であるクリス様より最近流行りの歌劇のチケットを頂きましたが、連れ立っていくような友人はおりません。ビブリオが使わないのももったいないと言うので、彼と行くことにいたしました。


 チケットはカップルシートなるもので、劇場2階最前列の二人掛けのソファー席でした。

 背中に銀色の樽のようなものを背負い、お腹の部分に食べ物を入れた籠を身につけた売り子の方がやってきましたので、観劇中に軽くつまめるフルーツサンドイッチと、オレンジジュールを二人分注文いたしました。売り子の方にお話を伺ったところ、背中の樽は中にエールが入っており、魔法で冷やした状態を維持しているそうです。


 歌劇の演目は、対立する二つの家の男女が恋に落ち、両家から反対されながらも最終的には結ばれる、といった内容で、流行歌劇作家の新作です。

 金鉱脈の利権を牛耳る家の息子キンタロウ様と、青果の販売で国一番の売り上げを誇る家の娘にして、桃から生まれたモモコさんの恋愛が主なのですが、途中に悪魔城竜宮の主で人類の仇敵、乙姫と鉄仮面の悲恋話や、キンタロウ様率いる熊の魔獣軍団と悪魔城竜宮から地上に攻めてくるサメの魔獣軍団とのバトルなどがあり、娯楽性に富んだ内容となっておりました。


 歌劇が終わった後、興奮が抑えられなかった私達は、近くのレストランにて感想を言い合っておりました。

「鉄仮面が乙姫をかばって、溶鉱炉に落ちていくシーンは涙なしには見られなかったね」

 ビブリオにしては意外な感想ですね。

「私には熊軍団とのサメ軍団のバトルが予想外でしたわ。まさかサメが空を飛べるように進化するとは思いませんでした。これからはヴェルトラウトハイト辺境伯家でも空飛ぶサメの魔獣対策も考えた方が良いのでしょうか」

 サメ軍団が敗れた後、サメとイカが融合して、復讐を誓う伏線があったので、次回作がありそうでしたし、また観に行きたいものです。


 感想合戦もそろそろ終わりかと思ったタイミングで、ビブリオが真剣な顔をして、自分と婚約してほしいと伝えてきました。

「ええ。構いませんわ。ビブリオに恋人がいるとは意外ですが。お相手はどなたですか?」

「え? ああ、そうか、そう思われるのか。これだけ婚約破棄の仕事を受けてきたから、信用できないかもしれないけど、僕はサナと結婚したいんだ。もう、婚約破棄なんてさせないから、僕と婚約してほしい」

 ビブリオの表情が今までで一番真剣で、普段からこれくらい真面目であれば、もっと女性人気が出るでしょうに、と思いながら、言葉を紡ぎます。


「私は149回も婚約破棄された悪役令嬢ですよ?」

「それを言うなら僕はそのプロデューサーだからね」

 ビブリオに笑顔が戻ります。


「私はヴェルトラウトハイト辺境伯家の令嬢ですので、政略結婚でないなら、私より強い男性としか結婚するつもりはありませんの」

 どこかで聞いたような話だな、と笑いながらビブリオは返事をいたします。

「サナに似合う男になるために、体も鍛えたし、魔法はもともと得意だし、今ならサナに勝てると思うよ。いつだったか、他国の武闘派令嬢の時に、サナを助けた動きを思い出してほしいな」


 確かに武力留学(意味不明)に来ていたリーラ・ブトーハ様とバトルをしていた時に、私はビブリオに助けられています。あの時の動きを考えますと、身体能力も私以上になっていることは明らかです。私はリーラ様の本気のパンチを避けることができませんでしたし、人を抱えてあの連打から逃げ切れているならば、肉体的にも私より強いでしょう。


「そうですわね。父に確認を取る必要がありますが、ヘルト家も含めて前向きに話し合いをいたしましょう」

「サナ自身はどう思っているんだ?」

「ビブリオのことは憎からず思っていますし、一緒に過ごしてきた婚約破棄生活も楽しいものでしたわ。違いますわね。ビブリオのことは……、す、す、好きですわ」


 ビブリオがうれしそうにしながら、なにやら、内ポケットから小さな箱を取り出しました。

「ヴェルトラウトハイト家とヘルト家の話し合いが終わるまで、正式に婚約者としてお披露目はできないと思うけど、先に渡しておくよ」

 箱には赤い宝石を埋め込んだ黒い指輪が入っておりました。この黒い色には見覚えがあります。騎士団副団長であるレヨン様が討伐した黒龍の鱗ですね。


「僕もサナが大好きだよ。最初の婚約破棄の時に、ヘルト家を通して婚約を持ち掛けようかと思ったんだけど、『称号』を検証したいって気持ちが、おっと、もとい、サナの悪評を消すのが先かなと思って」

 ごまかせておりませんわ。まあ、そんなビブリオだから、一緒にいて楽しいと思えるのですわね。

 指輪をはめてみます。いつのまにサイズを測ったのかわかりませんが、私の指にぴったりです。

「これからもよろしくお願いしますね」


****


 今日はサナ・ヴェルトラウトハイトとビブリオ・ヘルトの結婚式当日です。

 ビブリオから婚約を持ち掛けられてから、両家の調整をしたり、ビブリオの両親の挨拶をしたり、ヴェルトラウトハイト辺境伯領に魔王種の魔獣が大量発生して討伐に当たったり、忙しい日々を過ごしておりました。


 結婚式も佳境を迎えています。神父様に誓いの言葉を述べ、指輪を交換いたしました。ビブリオにベールを上げてもらい、誓いのキスをいたしました。周囲から拍手で祝福を受けて幸せな気分に浸っております。

 次は、「称号(S)収集(S)レア(R)もの大好き団()」の皆様からお祝いに出し物があるそうなので、その準備を待つ間、控室に戻ったところで、ビブリオが叫びます。

「うわっ。なんだ、この『称号』は!」

 またですか、この称号狂いは。

 ビブリオに原因となった「称号」を見せてもらい、二人で笑い合います。


----

サナ・ヴェルトラウトハイト

職業

魔拳法家


称号

ハッピーエンド:魔王種の大発生イベントで死亡せずに、結婚(エンディング)に至ったヒロインの証。スチル閲覧とエピソード閲覧が可能になる。末永くお幸せに!


ビブリオ・ヴェルトラウトハイト

職業

魔法剣士


称号

ハッピーエンド:魔王種の大発生イベントでヒロインキャラを守り切り、結婚(エンディング)に至ったヒーローの証。スチル閲覧とエピソード閲覧が可能になる。末永くお幸せに!

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 スチル閲覧など、相変わらず意味の分からない単語がありますが、フロルス・ソフト様からの結婚の祝福があるというのも悪くないですね。


 この後、SSR団が出し物の演武を披露している最中に、足が10本生えたサメの魔物軍団が空から襲撃して来るなど、変わらずに忙しい日々を過ごす予感に眩暈を感じることもありましたが、婚約破棄から始まった悪役令嬢の一連の茶番劇はこれにておしまいとなります。


「ビブリオ! 本物の空飛ぶサメの魔物ですよ! 討伐に行きますよ!」




ここまでお読みいただきありがとうございました。

これにて完結ですわ!

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