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少年はいずれNになる  作者: 猫飯
控えめな誕生
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「なんか、こう言ったらなんだけど、その嘘通用するのか?  朝から晩までなんて、普通ないだろ」


「大丈夫。俺が行ってる塾って、働いてる大人の人も行ったりしてて、塾っていうより予備校みたいな感じなので、自習室は二十四時間あいてる。だから前、本当に朝から三日くらいそこに篭って、勉強したことある」


「み、三日!? 三日家に帰らずに勉強してたのか!?」


「うん。お姉ちゃん、いい成績とると喜んでくれるし。だから、言い訳じゃないけど、サボったのは今日が初めて」


「普段は真面目なんだなあ……」


「そう。普段は真面目」


 大介が胸を張ると、鯨は笑って「偉いじゃん」と言った。褒められたことが嬉しくて揚々と歩く大介に、鯨は歩幅を合わせた。



 改札を抜けた大介は、ようやく見知った風景を目にして「あ」と声をあげる。


「ここ来たことある」


「いや、お前の地元だから」


 とぼけた発言に素早くツッコミが入った。「ああそうか」と大介が納得すれば、鯨は「本ッ当に春日中学校なんだな?」なんて、本気の疑念をもって尋ねてきた。大介は「当たり前」と言ってから、またあたりを見渡して、「もう大丈夫」と続ける。


「ここまで来たら、一人で帰れる。ありがとうございました」


 すると鯨は、「馬鹿」と言った。突然投げられた侮辱に、大介は目を丸くする。


「家まで送ってくよ」


「一人で帰れる」


「こんな夜道を中学生一人に歩かせられるわけねえだろ」


「そんなものか」


 大介は納得して、「じゃあお願いします」と頭を下げる。そして、「あっち」と自宅のある方を指差した。どこまでものんびりした様子の大介に、鯨は溜息を吐いていた。


 二人並んで夜道を歩く。大介にとっては、塾の通り道なので慣れたものだ。反対に、鯨の方はあまりここに来ることがないらしく、興味深そうにしている。


「田舎だから、あんまり見るものないと思う」


「いや、そこまで田舎じゃねえって。確かに施設とかはさほど多くないけど、別に一面たんぼばっかりってわけじゃないんだから。……それに、ここは治安も良さそうだしな」


「そうかな」


 大介は改めて周囲を確認する。特別治安が良いようには見えない。むしろ、ほとんどの店が閉店してしまっているため、明かりが街灯しかなく、不気味な雰囲気すら持っているように思えた。鯨達の在中する交番がある、先程の場所の方が、よほど明るくて活気があるように感じる。


 大介がそう言うと、鯨は「違うんだよ」と苦笑いした。


「そもそもあそこは、明るいのが間違ってンだ。夜には空いてちゃ駄目な店が開いてたり、水商売の店ばっかりだったり。夜は暗いのが普通なんだよ」


「そんなものか」


 大介は答えた。適当な感想ではあったが、自分の地元の治安を褒められるのは素直にうれしいことだった。


「まあ、有名な進学校があるんだから、自然とそうなるのかもな」


 言った鯨に、大介はまた「そんなものか」とのんきに答えた。「お前それしか言えないのか」と鯨が呆れる。


 それから暫し歩いて、駅前通りを抜けると、住宅街に出た。洋風の一戸建てが、左右両側に立ち並んでいる。ほとんどカーテンがしまっていて、隙間から明かりが漏れていた。どこかから、幼子の笑い声がした。


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