最終話 家族と友との昼下がり
「ホークよ……。一つ訊いてよいか……」
「……どうぞ」
少し時間が経ち、ホークはやや回復したが、クーガーは倒れたままだった。
「最後にわしが受けたあの光はなんだ?」
「あれはイレイサーの魔法です。それが、僕の竜神のワンドに一回だけ使えるように魔法が封じ込められていました」
「古代魔法か……。話には聞いておったが、本当にあるとは……」
「僕の切札中の切札でした」
「ふふふ……。お前は案外、博打打ちなのだな」
そう言ってクーガーは倒れたまま大きく息をつく。
「それにしてもホークよ、お前には戦では負けてばかりだったな……。ふふふ、これでは戦王の異名を返上せねばならぬ……」
「……」
「オストガルドに今回の戦いで大勝しておかねば今後、我が国が危うくなる。そう思いたった遠征だったが結果は大敗じゃ……。大した男だ、お前は……」
「僕はほとんど何もしていませんよ。皆が作戦通りに動いてくれただけです」
「ふふふ……まあ、そう謙遜するな。いずれにせよ今回の大敗で我が国グランドパレスも力を大分失うことになる……。わしは博打に負けたのだろう……」
クーガーの息が荒くなってきた。
「クーガー王?」
「ぜえぜえ……魔玉を飲んだ代償がきたようじゃ……。だがこれでよい……。戦で死ぬのなら本望じゃ、わしらしい最期だろう……」
クーガーは仰向けになったまま、空を見あげている。
「空が青いのう……」
クーガーはそう言うとこと切れた。
「……ご立派な最期でした」
ホークはクーガーの亡骸の目を手で閉じた。
クーガーの死と今回の大敗を受けて、グランドパレス軍は何も求めない、無条件講和条約をオストガルドと結んだ。その報はすべての国にいき届き、事実上戦争は終結した。
グランドパレスとの戦いから一月程経ったある日……
ホークは畑で土いじりをしていた。その様子をレンやファルコン、またカイトやシア、息子のシルスが見ている。
「……お前は変わらないな。面白いか?」
「面白い。年を取って、本当に面白いと思うようになってきた」
「まさか百姓になるとか言うんじゃないだろうな?」
「なりたいなあ。なったら駄目か?」
「勘弁してくれよ……。まだまだお前の力がいるんだからな」
「はははっ。じゃあ、もう暫く百姓になるのはあずけとこうか」
そんなことを話している時に、郵便が来た。
「ああ、丁度いた。ホーク様。あなたに手紙が来ています。珍しいですね。エルフィンからです」
ホークは畑から出て、手紙を受け取った。
「……」
ホークは黙って手紙の封を切り読み進めた。手紙はファナからのものだ。
「レン」
「何? ホーク?」
「僕達は新婚旅行に行ってなかったな。替わりに今度エルフィンに旅行に行ってみるかい?エルフィンから僕ら家族宛てに招待状が来ているみたいだ。平和になったから親睦を深めたいってさ。ファナにも会えるよ?」
「ファナちゃんに? 懐かしいわ! 行ってみたい!」
「よし決まりだな。ファルコンも連れて行こう」
ファルコンはシルスと一緒にカイトとシアに遊んでもらっていた。無邪気に駆け回っている。
穏やかな午後の昼下がりだった。
おわり




