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第47話 援軍

「アザトースさん!」


 私は地面に横合わっているアザトースさんに駆け寄り抱き抱えると、急いで祝福の歌を口ずさむ。

 生きてさえいれば私の治癒の力で助けられるはずだ。


 だが破壊神ファフニルは追撃の手を緩めない。

 再び私達に向かって巨大な爪が振り下ろされた。


 もう避けられない。

 私は覚悟を決めて目を閉じる。


「……!」


 しかしいつまで経ってもファフニルの爪は私には届かなかった。


「こんなところで諦めるのか? お前らしくもない」


「……?」


 聞き覚えのある声に目を開けると、私の目の前に勇者オルトシャンが立っていた。

 ファフニルの爪はオルトシャンの手にしている霊剣フツノミタマによって斬り飛ばされていた。


「オルトシャンさん、どうしてここに?」


「ふっ、私だけではないぞ」


 オルトシャンさんの指差す方向を見ると、鎧に美しい天馬の紋章を身に付けた一軍がこちらに向かってくる。

 あれはゲルダ侯爵家の紋章だ。


「全軍突撃! あの禍々しい竜を討ちとるのだ!」


 陣頭で指揮を執るゲルダ侯爵の傍らには、激励の歌を口ずさんでいるエミリアの姿も見える。


「みなさん、お願いします!」


 私はこの場を魔族や兵士達に任せ、オプティムさんに協力してもらってアザトースさんを後方へ下げる。

 アザトースさんの傷は深い。

 早く治療しなければ本当に命に関わる。


 私は祝福の歌を口ずさみ、アザトースさんの怪我を癒す。


 しかしいくら勇者オルトシャンやゲルダ侯爵の兵士達が加わったとしても相手は破壊の神である。

 その巨体から繰り出される一撃の前に兵士達は次々と傷つき倒れていく。


 とてもアザトースさんの回復を待っている余裕なんてない。


 誰もが諦めかけたその時だった。



「はははははは、ずいぶんと苦戦をしているようだな」


 高らかな笑い声と共に現れたのは、鎧に女神の紋章を付けた大軍だ。

 女神ティターニアの紋章の使用を許されているのはイザベリア聖王国の王家のみ。

 王家直属の軍隊である。

 その数は五万は下らないだろう。

 そしてその大軍を指揮していたのは──


「げ、エイリーク殿下」


 私は思わず聖女にあるまじき声を発してしまった。

 エイリーク王子の隣には彼にそっくりな顔をした勇ましい将が控えている。

 王位継承権二位のビバリー王子だ。


 エイリーク王子は軍刀を掲げてビバリー王子に命を下す。


「ビバリーよ、この私は奴の右を攻める。貴様は左から攻めろ。挟み撃ちにするぞ!」


「はい、兄上!」


 王国軍はそれぞれエイリーク王子とビバリー王子を指揮官として二手に分かれて、ファフニルを挟撃する。


「まさかあのエイリーク王子があんなに勇敢な姿を見せるなんて……」


 と口にしたところで私は考えを改めた。


 先程ファフニルの右側の爪は勇者オルトシャンに斬り飛ばされており攻撃力は半減している。

 逆にファフニルの左側は傷ひとつなく、左側で戦っている兵士や魔族達は次々とその爪の一撃を受けて負傷していく。


 ビバリー王子は我が身を省みずに勇敢にファフニルに挑む一方、エイリーク王子は安全な後方から兵士達に突撃命令を出すだけで何もしていない。


 でもまあ元々総大将は前線で戦うものではないからこの事でエイリーク王子を臆病者扱いするのは筋違いか。


 好意的に解釈すればそうなのだが、この後のエイリーク王子の行動で彼の名声は誰にも擁護できない程地の底に落ちる事になる。



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