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第46話 破壊神


 ゾーランド公爵の屋敷跡の周りには話に聞いていた通りの異形の者が跋扈していた。


 その姿は人間や魔族どころかこの世界に存在するどの生物とも異なっている。


 どこが顔なのか、手足なのか、そんな区別すら付かない。

 脊椎動物や軟体動物といったこの世界での常識的な括りで考えるのも馬鹿らしくなってしまうような謎めいた形をしている。

 まさに形容不能といったところだ。


 目も耳も見えないのにどうやって感知しているのか不明だが、異形の者達は私達に気が付いたようで軍隊のように一糸乱れぬ隊列を組んで近付いてくる。


 私はまずはダメもとで破邪の力を試してみる事にした。

 巻き込まれないように魔族達を下がらせると、膝を折って祈りの姿勢を取る。


 しかし異形の者達には何の影響も見られない。

 やはり魔物の類ではないようだ。


「ならば手当たり次第殲滅すればいい。者ども続け!」


「おおー!」


 アザトースさんの号令で魔族達が異形の者達に突っ込み、手当たり次第蹴散らしていく。

 少し遅れてゾーランド公爵領の兵士達が続く。


 激励の歌で皆が強化されているのものあるけど、異形の者達一体一体はさほど脅威ではなさそうだ。


 しかし倒された異形の者達は黒い霧と形を変えて辺りを漂う。

 兵士と魔族達は困惑しながら異形の者を倒していく。

 そして異形の者の数が半数になった頃だった。


「本当にしぶといですわね」


 聞き覚えがある声が屋敷の周りに響き渡った。


「この声……キーラ!? まさか、屋敷の爆発に巻き込まれたんじゃ?」


 辺りに立ち込めている黒い霧が一ヶ所に集まり、それは巨大な漆黒の竜に姿を変えた。

 この姿には見覚えがある。


 慈愛の女神ティターニアと対になる存在、破壊神ファフニルだ。

 伝承によればファフニルは自我を持たずただ本能のまま破壊のみを繰り返すという。


「お久しぶりですねシェリナ。わざわざここまで来てくれるなんて、魔界に向かう手間が省けましたわ」


 キーラの声がする方を見ると、ファフニルの頭部からキーラの上半身がキノコのように生えていた。


「キーラ、これは一体どういう事? あなたは何をやっているの!?」


「女神も魔王もお父様もエイリーク殿下も本当に役に立たない人達ばかり。こんな役立たずばかりの世界なんてもういりませんわ。全てを破壊し尽くした後、私が望むままの新しい世界を創造して差し上げますわ」


「キーラ……あなたは屋敷で引き籠ってる振りをして破壊の神を呼び出す儀式を行っていたのね」


「ええ、幸い私のお屋敷には無能な使用人が沢山いましたからね。破壊神を呼び出す為の生贄を用意する手間が省けましたわ」


 辺りにキーラの笑い声が響き渡る。


「シェリナ、一番目障りなのはあなたなのよ! 今すぐ死んでちょうだい!」


 破壊神ファフニルは巨大な爪を持つその腕を私目掛けて振り下ろす。

 とても避けられない。


 その時、私の前に飛び込んできた者がいた。


「シェリナ、危ない! ……ぐあっ!」


「……!?」


 私の身代わりになってファフニルの爪の一撃を受けたアザトースさんはそのまま後方へ飛ばされ、力なく横たわり動かなくなった。


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