57.なんで?
オレはげっそりしながら宿のドアを開ける。
ニーアは洗濯があるからと言って裏庭に残っている。せめてもの罪滅ぼしに洗濯を手伝おうかとも思ったけど、デリカシー問題が頭をよぎってオレは大人しく引き上げた。それに、楽しそうに洗濯の準備を始めていたニーアの顔を見ると、邪魔するのも悪いかなとも思った。未だ不明なことが多いニーアだけど、メイド仕事は心の底から好きなんだってことは、その姿を見てしっかり理解できる。
宿の中に入ると、仲間達とコロロが一緒に座って朝食を取っているところだった。
ナトリはわざわざ自分の分の食事代払って食ってんだろうな。
……毎度思うけど、ナトリが仮面の口の部分に空いてる隙間に食料を突っ込んでる姿は、とっても不思議な光景だ。
でも、その横ではマフラー越しに飯を食ってる奴がいるから、なんとも思わんわ。むしろソーエンの食い方の方が謎に包まれているわ。
「イキョウさん!!ルナトリックさん凄いですよ!!魔法の知識がいっぱいです!!」
シアスタは興奮しながらテーブル越しに入り口にいるオレの名を呼ぶ。
ナトリの知識はシアスタが興奮するほどなのか。やっぱナトリは凄いなぁ。
「よかったね」
それだけ言ってオレはおばちゃんから朝食を貰うためにカウンターに向かった。
もう朝っぱらからめっちゃ疲れたから今日は静かにゆっくり過ごしたい。出来れば海を見ながらのんびりしたい。
「おばちゃん、オレとコイツの分の朝ごはん頂戴」
頭に乗ってるソーキスの分も一緒に貰おう。
ソーキスとしては量が足りないだろうけど、後で何か食わせるかオレの魔力を吸わせればいいだろ。
「はいよ。調子はどうだい?」
「まだダメっぽい……」
「あれまぁそうかい……おかずちょっとだけサービスしてあげるから元気だしな」
「ありがと、オレ頑張るよ」
「気張らずゆっくり治して行くのが一番だよ。この町の空気にでもゆっくり当たって休めなさいな」
「うっす」
おばちゃんは毎朝オレのオレの調子を聞いては朝食を少しだけサービスしてくれる。
そのサービスされた朝食とソーキスの分を受け取って、プレートを両手にテーブルに向かうけど……。
四人用の席に無理矢理七人が座ってるからギッチギチじゃん。オレとソーキスが座る隙間ないじゃん。
しゃーない。空いてるほかの席に座るか。
適当に座ってテーブルに朝食を置く。
「お前も降りれ」
「はーい」
飯を食べる為ならソーキスも素直に従う。
オレ達二人は並んで席に座って、大人しく静かに朝食を取ることにしよう。もう今日は疲れた、オレは静かに過ごすんだ。
「お前のマッシュポテト、少し多いな」
すると、食べかけのプレートを持ったソーエンがオレの隣に移動して座ってきた。
なんだ、ソーエンはこっちに来たのか。
「阿呆と馬鹿が居るなら、当然我輩はここだな」
なんだ、ナトリもこっちに来たのか。
ロロを肩に乗せたナトリも、食べかけのプレートを持ってオレの向かい側に座ってきた。
これで四席全部埋まったな。
「失礼しますね」
……シアスタもこっち来たのか。わざわざ椅子を持ってきて、ソーエンとオレの間に座りやがった。
「わたしたちは」「ここ」
もはやプレートを持ってすらいない双子がオレの膝の上に座ってきやがる。
「イキョウ殿の周りはいつも賑やかでありますね」
コロロは全然いいよ。オレとソーキスの間に座りな。あと双子の分のプレート持ってきてもらって悪いね。
…………?
「なんで?」
「なにがですか?」
マッシュポテトを頬張ってるシアスタが、オレを不思議そうに見てくる。
「いや……いいや」
もう疑問を持つことにも疲れた。それほど朝のシアスタ達の問答と、ニーアの拷問でオレの頭は疲弊していた。
だから何も考えずに無心で朝食を取ることにした。
あと、途中から加わったニーアが無言でずっとこっちを見ながら朝食を取ってるのは……怖かったです。




