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20.入学試問(理論)

「ま、魔導学院では実技だけでなく理論も重視される。い、一応そちらの試問もしておこう……基礎魔力量700で六角方陣を利用した際の最適化された炎魔法は?」


 すごくその場から逃げたそうにしながらも、試問官としての責務を意識したジョイヤーロ先生は怖々お姉ちゃんに向き直りながら、試問の続きを行う。そして、お姉ちゃんはそれに間髪入れずに答えていった。


「モアッハの経線平行弾ですね」

「チエイ=ホリマンの定理から導かれる最適な地下水脈探索方陣は?」

「一般には1-星形七角形が用いられますが時間対魔力という観点での最適という意味では2-星形十三角形の方が適正かと思われます」

「なっ――確かに!?ち、ちなみにヤングル・モッハ炎水比の極限収束値は?」

「ルート2プラス三乗根ルート3分の73×円周率の二乗プラス自然対数の底ですね。どの本にも答えが乗ってなかったので七歳くらいのころに自分で解きました。懐かしいです」

「未解決問題解いとるやんけ!!」


 ジョイヤーロ先生、遂に口調までも変わってしまった。そのまま両手で頭を抱えるとよろよろと膝をつく。

「ご、合格……と言いたいところじゃが……君にこの魔導学院で教えられる内容など何もない……すまぬ……」


 泣きそうになりながら、ジョイヤーロ先生は地面に『の』の字をうじうじと書き始めた。


「まぁ、あたしはそこまで学院に興味があったわけじゃないので……駄目なら駄目で田舎に戻ってるぅくんと一緒にイチャイチャ過ごしますけど」


 お姉ちゃんは興味なさそうにそう言う。


「あーでもせっかく王都に出てきたわけだししばらくは二人っきりで新婚生活っぽく過ごすのはありだなぁこの前盗賊を差し出したら懸賞金もらえたし学費も払わなくてよくなったらなおさらしばらく買い物には困らないしいざとなったらドラゴンでも狩れば多少のお金にはなるだろうからるぅくんと二人暮らしもできるんじゃないかなぐへへへへへへへ……じゅるり」


 なんか気づいたらお姉ちゃんはよだれを垂らしていた。一方困った顔をするのはジョイヤーロ先生だ。


「き、君みたいな力のある人間が力を生かさず過ごすのはもったいなー―」

「はぁ?るぅくんのために使う以上に、力の有効な使い方なんてこの世にあるわけないでしょう?ちょっとは考えて物を言ってくださいよ、ジョイヤーロせ・ん・せ・い」


 全く敬意の籠っていない口調で、冷たくお姉ちゃんはジョイヤーロ先生に向き直る。それだけで、周囲の温度が10度くらい下がってしまったような気がした。まして、先ほどお姉ちゃんの力を見てしまったジョイヤーロ先生は、その殺気をまともに受けて足ががくがくと震えだす。


「い、いや……そのぉ……」

「何ですか?言いたいことがあるならどうぞ」


 そう言うお姉ちゃんの右手には、火の玉が発生していた。最初は握りこぶしくらいだったそれは徐々に大きくなり、人の頭サイズからやがて人間大にまでなる。もしも当てられたらひとたまりもないそれを見せられ、ジョイヤーロ先生は苦し紛れに言った。


「そ、そ、そんなにルビルート君が大事ならば、ルビルート君を学生として受け入れるから、君が従者として登録してはどうじゃ!?」


 その、言葉に――

 お姉ちゃんは、ゆっくりと火の玉を収める。


「……確かに。やっぱりどう考えても崇高にして至高にして絶好にして最高のるぅくんをこともあろうにあたしごときが従者にするなんていくら従者制度が建前程度のものだったとしても絶対に許されるべきことじゃないし、それに比べてあたしがるぅくんの従者をするという関係性は実に世界の真理と比較して自然と言わざるを得ない気がするなぁ。うん、るぅくんさえよければ、あたしはいいけれど……どうする?」


 お姉ちゃんにそう聞かれ、ジョイヤーロ先生から懇願するようなまなざしを向けられた俺は――ゆっくりと頷いた。


「うん、僕はいいよ。魔導学院に入学する!」


 かくして、なんの因果か、魔法の才もほとんどない俺が、最強のお姉ちゃんを従者に、魔導学院に入学することになってしまったのだった。

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