第十二話:爆音の放送部と、公開処刑
「イチャついてんじゃねぇぇぇ!!!」
用務員室の扉を木屑に変えて現れたのは、首から無駄にデカいハイテク武器をぶら下げた校内放送部員・響 爆だった。
「響……! お前、何しとんねん!!」
俺が激怒して叫ぶと、響は首から下げたガジェットのスイッチを『ON』にした。
『SF・校内実況ハイパー拡声器』
・【基本性能】:
マイクに向かって喋った声が、校内全域のスピーカーに大音量で自動放送される。
・【特殊効果】:
照れ隠しや本音を自動検知し、エコー付きで強調抽出する。
「フハハハ! 俺の支給品はこれだ! クラスの恥ずかしい秘密を校内に晒し上げる、精神攻撃系兵器よ!」
「最悪な兵器持ってくんな!!」
響は拡声器のマイクを口元に近づけると、朗々と校内アナウンスを開始した。
『あー、校内の皆様! こちら3階用務員室前です! ただいま南出選手、救井さんとめちゃくちゃいい雰囲気でキス寸前だったところを邪魔され、顔を真っ赤にして激怒しております!』
『〜激怒しております……激怒しております……(エコー)』
校内中に響き渡る俺の公開処刑アナウンス。
「校内放送につなぐなぁぁぁぁぁっ!!!」
俺の絶叫も虚しく、スピーカーからは『えっ、南出くんと救井さんが!?』という校庭の生存者たちのどよめきが聞こえてくる。
「南出くん、恥ずかしいよぉ……!」
救井も顔を真っ赤にして俺の後ろに隠れた。
「ヒヒヒ! 効いているな南出! 精神的ダメージで自滅するがいい!」
響が調子に乗ってマイクに叫び続ける。
『ちなみに南出選手、胸から魔法少女の変身音「キュピピピ〜ン♪」を鳴らしながらデレデレしておりました!』
『〜デレデレしておりました……しておりました……(エコー)』
「……ぶちっ」
俺の中で、何かが音を立てて弾けた。
伊達武蔵の日本刀も、自爆接着ガンも耐えてきた俺だが、思春期の尊厳を校内放送で粉砕されることだけは許容できない。
「響……お前だけは……絶対に許さん……!」
俺はゆらりと影を纏い、ハリセンを握りしめて一歩前に踏み出した。
「ひっ!? な、なんだその殺気は!?」
響が青ざめながら拡声器のノズルを俺に向けた。
「食らえ! 『150デシベル・爆音ソニックブーム』!!」
ズババババババッ!!
拡声器から可視化された音波の波線が放たれ、強烈な風圧が俺を襲う!
だが――今の俺には、恐怖など一ミリもなかった。 あるのは純粋な怒りと恥ずかしさだけだ。
「うおおおおおおっ!!」
俺は爆音の風圧を正面から強行突破し、響の懐へと一気に肉薄した!
「なっ……音波の中を突っ込んできただと!?」
「人の甘酸っぱい空間を……邪魔した罪は重いんじゃぁぁぁ!!」
俺は全身の筋力を右腕に込め、確率変動型ハリセンを響のメガホンめがけて振り下ろした!
頼む……出ろぉぉぉぉぉ!! 5%ぇぇぇぇっ!!
ズドォォォォォォン!!!!
出た。怒りの100倍クリティカルだ!!
「ぬがぁぁぁぁぁぁっ!?」
5%の超・衝撃波と、拡声器の音波増幅機能が最悪の形で相互作用を起こし、メガホン内で大規模な音響爆破が発生!
「うわあああぁぁぁ……っ(大爆音)」
自分の放った超・爆音エコーに呑み込まれた響は、そのまま3階の廊下を音速で転がり、階段の踊り場の窓を突き破って校庭へと吹っ飛んでいった!
チュドォォォォン!!
校庭の砂場で紫色の光線が炸裂し、響の反応が一瞬で消滅した
(※校長室で「おや、放送部? うるさかったね〜、お茶飲む?」と出迎えられていた)。
「ハァ……ハァ……っ! 倒した……!」
俺は煙を上げるハリセンを手に、肩で息をついた。
『あー、ただいま放送部の響くん消滅〜。なお、今の放送は全校生徒および近隣住民にしっかり届いておりました〜』
「担任! 余計な補足すな!!!」
アナウンスに限界のツッコミを叩き込み、俺はその場にガクッと膝をついた。
「南出くん、大丈夫……?」
救井が駆け寄ってきて、心配そうに俺の顔を覗き込む。
「おう……体は大丈夫やけど、心のダメージが全治3ヶ月や……」
「ふふっ、私……南出くんが怒ってくれたの、ちょっと嬉しかったよ」
救井が少し照れくさそうに微笑み、俺の手をぎゅっと握りしめてくれた。
(あかん……やっぱりこのデスゲーム、絶対に二人で生き残ったる……!)
心の傷を救井の笑顔で癒やしながら、俺たちはついに最上階・4階のさらに奥、屋上へと続く階段を見上げるのだった――。




