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空海と筆 〜真言宗始まってました〜  作者: moca


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第五十三話  旅行から帰るとやっぱり家が一番ねって言うよね


実家に帰らないといけないらしい。

ここまで頑張ったんだからさ、こっちでもう少しだけ豪遊してもよくね?


筆「もう少しなら大丈夫ですけど、ここにいても結局面倒な人達(政治)にまとわりつかれますよ?」


ヨシッ帰ろう。スグッ帰ろう。


というわけで、立つ鳥跡を濁すっていうしな。

挨拶だけ軽くして帰るか。


んーと、あっちで挨拶、こっちで挨拶。

大事なのは舞妓さんたちに挨拶。

もっと接待してくれてもいいのよ?


んで、面倒なカンチョーさんとかダイグーシさんとかにも挨拶。

ヨシッ、忘れ物ないな。


じゃあ、かんちょーさん、おみおくりありがとね。帰るわー。


え?こんご?いやまあ……

あ、なんか電波が。


えっと、像をたのむね。できたら祀ってあげて。

不動明王なんで、密教モヨロピクね。

あと寺つくるといいよ。そこ、地味に儲かる立地だから。

水運使えよ。あーもうじかん。じゃあねーー。





――空海君の知らない世界★


寛朝の独白


……本当に、帰ってしまわれた。


あの方は、最後まで軽やかであった。


「じゃあ、かんちょーさん、おみおくりありがとね。帰るわー」


まるで旅の帰り道のように、

まるで散歩の終わりのように、

何でもない顔で手を振った。


だが、その背に宿る光は、

人のものではなかった。


「え? こんご? いやまあ……あ、なんか電波が……」


途切れ途切れの言葉。

しかし、我には確かに聞こえた。


「……像を……祀って……不動……密教……寺……水運……」


意味は分からぬ。

だが、魂が震えた。


これは命令ではない。

啓示だ。


不動明王を祀れ。

密教の寺を建てよ。

水運を活かせ。

この地を守れ。


あの方は、未来を見ていたのだ。

我らがまだ知らぬ“関東の形”を。


「じゃあねーー」


軽い声とともに、

光が渦を巻き、

空気が震え、

世界が一瞬だけ止まった。


そして――

あの方は消えた。


まるで最初から存在しなかったかのように。


……膝が震えている。

恐怖ではない。

畏れだ。


あれほどの奇跡を起こしながら、

あれほどの力を持ちながら、

あの方は最後まで“名も無きおっさん”の顔をしていた。


だが我は知っている。


あの方こそ、

関東を救った“真の神官”だ。


いや――

違う。


あの光、

あの言霊、

あの背に宿るもの。


あれは、ただの人ではない。


そして、確信した。


**あの方は……今も生きている。**


時を越え、

世界を越え、

必要な時に現れ、

必要な時に去る。


我が立つ必要はない。

我が剣を取る必要もない。


関東に乱れが訪れたなら――

**あのお方が、再び人々の前に立つ。**


その時、我らはただ、

その道を整え、

その教えを守り、

その名を伝えるだけでよい。


我は震える唇で、

その名を呼んだ。


「……遍照金剛空海様」


その名を口にした瞬間、

胸の奥で何かが確かに灯った。


我は決めた。


あの方の言葉を形にする。


不動明王を祀る寺を建てる。

密教の教えを根付かせる。

水運を整え、この地を豊かにする。


それが――

あの方への恩返しだ。




第五十三話

旅行から帰るとやっぱり家が一番ねって言うよね

おわり


またもタイトル詐欺をした空海。

家にたどり着いてもいない現実を、

本人はまだ知らない。


だが――

この男の旅は、まだ終わらない。


次回 第五十四話

今度こそタイトル回収 サービスサービスゥ(あの声)

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