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45:遊撃戦と驚くべき情報ですわ!

 ジオルグ鉱山はデヴァン大森林から東に10日ほど歩いた先に広がる大陸最高峰の鉱山だったのですが、現時点では帝国の支配下に置かれて無謀な開発が続けられてしっちゃかめっちゃかになっているようで……そんな場所を占拠している帝国軍をおびき出すにしても近づきすぎる場所で暴れていたらあからさますぎますし、ベルザ(南方行政都市)に戻ってから遊撃戦を仕掛けているというていを装いながら注意を引き付ける事になりました。


「指揮官が杓子定規なのか魔物達が単純なのかはわかりませんが、行動が読みやすくて助かりますね…って、どうしました?何か気になる点でもありましたか?」

 なので地下道を掘り進んでいるルルさん達とは別行動となりますし、最初は飛ぶ事が出来る(わたくし)1人で遊撃戦(嫌がらせ)をしかける予定だったのですが、驚異的な回復力をみせたアンジェリカも手伝ってくれる事になりまして……ランプデトネイター(180cmの盾剣)の修理が間に合わないのでドワーフ製の大剣とタワーシールド(長方形の大盾)を借りての参戦だったのですが、作戦のイロハがわかっているアンジェリカが居てくれて助かりますわ。


「いえ、私にはそういう細かい駆け引きができないのでアン(アンジェリカ)が居てくれて助かります…なんて事を考えていただけですわ」

 流石に2人だけで帝国軍の拠点に攻め込むのは無謀だという事で物資を運んでいる荷馬車や行き交う伝令などを狙い撃ちにしていたのですが、駐留している帝国軍の人数から必要な物資を割り出して何日おきに荷馬車が通るとかいった計算をアンジェリカがしてくれまして……マリエラ教の聖騎士ともなるとそういう軍事的な作戦にも明るいのでしょう。


(それと比べて私は…アンを運搬しているだけなのですが、これを適材適所といっても良いのでしょうか?)

 最初は板か籠にアンジェリカを乗せて運搬するという案が出ていたのですが、不意の接敵も考えられるので腋の下から腕を通して抱き抱えるように吊り下げる事になりまして……必然的に自慢の巨乳がむにゅりと潰れてムズムズしてしまいますし、体勢的にアンジェリカの温かさとか匂いに包まれる事になってしまい……色々な事を思い出してムラムラしてきてしまうのがこの作戦の重大な欠点なのかもしれません。


「そんな事は…アリシアのおかげで移動が楽ですし、ルルさんが作ってくれたという魔導眼鏡が思いのほか役に立ってくれているだけで」

 なんて謙遜をするアンジェリカがゴツゴツとした眼鏡を持ち上げてみせるのですが、これは対象の聖氣や魔力を測定する為の道具でして……本来ならある程度の出力とか魔力の流れを読み解く物だったのですが、一種のサーモグラフィ(熱源探知)みたいな使い方で隠れている敵兵を発見する事ができるのだそうです。


(機械的に判断している事が良い方向に作用しているとかで…これでは気楽な空の旅と変わりませんわ)

 帝国側の被害が増え続けると護衛を荷馬車に詰め込み迎撃を試みたり襲撃ポイントと思われる場所の近くに伏兵を潜めたりしていたのですが、魔導眼鏡を通せばそのような人達を見つける事が出来ますし……欠点は魔力を持っている物なら無機物にも反応してしまう事なのですが、その辺りは眼鏡の改良待ちといいますか、着用している人が努力と根性でなんとか判別していかなければいけませんでした。


 とにかくそういう感じで縦横無尽に飛び回って手頃な相手を蹴散らしていたのですが、帝国兵の中には魔物以外のごくごく普通の人達も混じっておりまして……去る者追わずで出来るだけ見逃してあげていたのですが、最後まで私達の事を嫌らしい目で見て来ていた人達が居たり声高々に「自分はこのような悪事を働いてきた」みたいな不快な話をしていた人達もいたりするのが頭の痛い問題ですわ。


(だからといって、命乞いをしてくる人達を無慈悲に殺して回るのも後味が悪いですし)

 そもそも私達が暴れ回っている事を上層部に伝えてもらわないといけないので逃がしてあげるのが既定路線だったのですが、何かモヤモヤしてしまう感じでして……。


「別にノルマがある訳でもございませんし…今日はこれくらいにしておきますか?」

 そんな事を考えているとアンジェリカが休憩を申し出てくれまして……ルルさん達との定例会も近づいて来ていますし、そろそろ切り上げた方が良いのでしょうか?


「そう…ですわね、そうしましょうか」

 アンジェリカを抱きしめながら呟くとそれだけで気持ちがスッと軽くなったような感じがしまして、本当にどれだけ感謝をしてもしきれませんわ。


 そんな感じで襲撃と休憩を繰り返しながら遊撃戦を繰り広げていたのですが、地下道チームのドワーフさんからの情報提供や帝国兵から奪い取った命令書とかを読み解いていった結果、ジオルグ鉱山ではゴブリンとかホブゴブリンとかオーク達がせっせと採掘作業をしている事がわかって来まして……そんな場所を護衛という名目で黒騎士(リビングアーマー)が巡回していたのですが、帝国の占領地なのに肉人形タイプ(魔力を吸うタイプ)の魔物がいないのはどういう事なのでしょう?


(居ない方が楽ではあるのですが、吸っている余裕がないほど捕まっている人達が酷使されているという可能性がありますのよね?)

 隣接しているジオルドという鉱山街には極々少数の女性達が雑用係として働いているのが確認できたのですが、帝都に送られた人達の事を考えても残っている人の数が少なすぎまして……魔力を吸う事も出来ないくらい弱った人達が鉱山の中で酷使されているのかもしれません。


「それは…本当ですの?」

 そのような戦いを続けていたとある日、荷馬車を襲撃した時にリッテンベルン家の判子が押された手紙を見つける事になりまして……。


「はい、これを見てください…鉱山側からの指示書にリッテンベルン家の印が押されていまして…現時点で(女帝による粛清後)リッテンベルンの印を使えるのは1人だけですし、偽装工作でなければ宰相自らがジオルド(鉱山街)に滞在しているという事になるのですが」

 この手紙がそれなりの損害を与えている私達に対する偽文という可能性があったのですが、複数の指示書を見比べた感じではリッテンベルン宰相が鉱山街に滞在している可能性が高いのだそうです。


(私にはよくわかりませんが…アンが言うのでしたら滞在しているという前提で動くべきなのかもしれませんわ)

 リッテンベルン宰相は長期間帝都を離れない事で知られていますし、本当に滞在しているのだったら接触する千載一遇のチャンスで……この事はルルさん達にも伝えておく必要があるのかもしれません。


「個人的な実験をしようとしているといった話もありましたし、鉱山側で不穏な動きがあるという事で前線の偵察も兼ねて出て来たのかもしれませんが…これが本当の事ならチャンスですね」

 流石に鉱山街に居る間は護衛の数が物凄い事になっているのかもしれませんが、復路(移動中)となると人数が限られてきますし……帝都での仕事もあるのでずっとジオルド(鉱山街)に滞在するという訳にもいかない筈です。


「ええ、行きを押さえられなかったのが痛いですが…帰り道を狙ってみますか?」

 帝国の重鎮という事で安全なルートを使っていたのかもしれませんし、私達2人だけでは全部のルートを押さえる事ができなかったのですが……。


「そうですね、襲撃を繰り返して帝国軍が利用している移動ルートは把握できましたし、復路は確実に押さえられると思います」

 それでも私達の土地勘がなかったから見逃していたという可能性が高いですし、ジオルグ鉱山を見張っているドワーフさん達に話を通せば取り逃がす可能性をほぼ0にする事が出来るのかもしれません。


「では…アンはどのルートを使うと思います?」


「それは…今までの傾向ですと」

 そんな感じでリッテンベルン宰相を押さえる計画を立てていますと、ルルさん達の地下道作戦の方も佳境に入っておりまして……。


「呼び出してごめんなー魔導眼鏡の調子も聞きたかったし、そろそろ地下道が完成するから2人にも来てもらおうと思ってな」

 とかいう感じで工事中の地下道に訪れる事になったのですが、人力とは思えない巨大な地下道がジオルグ鉱山まで伸びておりまして……鉱石を運び出す為のトロッコ用のレールが複数敷かれていますし、土系の魔法を使っているのか硬い岩盤をスコップとツルハシだけで掘り返しながら内壁を硬化させて支えていたりとその作業効率の良さには驚いてしまいますわ。


「どや?もうほとんど完成しているし、鉱山の中に捕らえられている連中の場所も大方調べあげたから後は突入するだけやな」

 なんてルルさんが胸を張っていたのですが、作業をしている人達の多くが満足げに頷いておりまして……もうすぐ完成間近なのでとりあえず見せびらかしたかったといった感じなのかもしれません。


「それは、おめでとうございます…私達もルルさんの発明(魔導眼鏡)のおかげで楽ができましたし、お伝えしないといけない事があったので丁度良かったですわ、なんとリッテンベルン宰相が…」

 私達は帝国の重鎮であるリッテンベルン宰相がジオルド(鉱山街)に滞在しているという驚くべき情報をルルさん達に伝えるのですが……。


「なんやて!?つーてもそのリッテンなんとかっていうのがどう凄いのかはわからへんのやけど…作戦の変更とかが無いと不味い感じか?」


「そりゃあ変更した方がいいとは思うが…いきなり決行日を変えるのは難しいぞ?場所によってはもう一押しで壁をぶち抜くっていう場所もあるくらいだからな、リッテンなんたらが出て行くのを待っている間に崩れて発見されましたじゃあ笑い話にもならねぇ」

 みたいな感じでして、地下道作戦に参加していた知り合いのドワーフさん達や手すき(休憩中)のドワーフさん達が集まり難しい顔をしていたのですが、今から決行日を変える事が出来ないと頭を抱える事になりまして……ズラせないのならズラせないで腹を括るだけですわ!


「では…難しく考える必要はありませんわ、このまま突入して…奴隷としてこき使われている人達を助け出します、そして大変な目に合っている女性達も助け出して…リッテンベルン宰相を捕まえて何故こんな酷い事をしているのかを吐かせるだけですわ!」

 私が自信満々に言い切ると「そんな簡単に言われても」みたいな顔をしている人達がいたのですが、私的な理由で鉱山の奪還を目指しているルルさんがパチンと手を叩きまして……。


「まあ、こんな所でゴチャゴチャと考えていても仕方が無いし…皆もそろそろ酒でも飲んでどんちゃん騒ぎをしたいんやろ?じゃあ…しゃーないよな?このまま勢いで押し切るで!」


「おう、ちーとばかし面倒ごとが増えたのかも知れねーが、やる事は変わらねぇ…捕まっている連中を助け出す、それだけだ!」

 ルルさん達の言葉に周囲のドワーフ達も静かに「そうだそうだ」と言葉を交わし始めまして、皆さんの目つきが変わったのを見届けてから私とアンジェリカは視線を交わしながら微笑んでみせました。

※魔力を見るだけなら魔導眼鏡が無くても大丈夫なのですが(相応の集中力が必要になりますが)人の形が強調表示されるのでわかりやすくなるといった感じです。そもそも魔力というのは濃淡として見える感じなので密集されていると判別が難しかったりもしますし、既存の“魔力を消す”系の魔力を見破る事が出来るのが魔導眼鏡の利点なのかもしれません。

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