表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/66

43:ルル結晶と魔科学ですわ

 ジオルグ鉱山の話をしに来た(わたくし)は妙な流れでルルさんの実験に付き合う事になってしまったのですが、案内をしてくれていたドワーフさんから「やめとけやめとけ」と強く引き止められてしまい……。


「ルルの実験てほら、あれだろ?爆発したり痺れたりとかで碌でも無い事が多いし…つーかお前もいつまでも夢物語みたいな事を言ってないでもう少し堅実にだなぁ…腕自体はいいんだから変な実験ばかりしてないで腕を磨いたらどうなんだ?」


「はぁー!?ウチだって色々と考えているんですーこの実験が成功したらほんまに凄い事になるんやらから…今まで出力が足りていないって切り捨てられていたモノがババーンって効率化されるんやから!ていうか皆は考え方が古いねん!火属性の魔法が使えない人間は鍛冶師になれへんっていうのか?多少腕力が劣る女子供は精火連(鍛冶師組合)に入れへんなんておかしいやん!」


「入れねー訳じゃねーよ、枠があるんだから単純に能力順で…そもそも性別が問題ならジジとかエリザとかの幹部連中はどうなるんだよ?って、大層な事を言っているような気がするけど…こいつの場合は自分の研究の事しか考えていないからな、騙されるんじゃないぞ?」

 なんて釘を刺されたりワチャワチャしているのを見せつけられたりしていたのですが、ルルさんがジオルグ鉱山の奪還をしようと息巻いているのは里長(さとおさ)のお孫さんだからとかではないようで、鉱石の割り当てが少なすぎるから分捕りに行こうと考えているのだそうです。


「だって、ウチの作る物って鉄とか鉱石を沢山使うから…しょうがないやん!」


「こっちだって少ない素材を公平に割り振ってんだよ!つーかお前が吹っ飛ばしている材料があったらどれだけの武器や防具が作れたかを考えた事があるのか!?」

 とか怒鳴り合っていたのですが、小屋一杯の大型機械を作るための材料を別の物に使えていればと思うのもわかりますし……。


「まあまあお2人とも、落ち着いて…と、言いますか、結局ルルさんって何を作っておりますの?どうにも説明不足を感じるといいますか、いまいち何をしようとしているのかがわかりませんわ」

 このままヒートアップしていってもと思って仲裁に入るのですが、案内役のドワーフさんが「よくわからん事をしている」みたいな反応をしていますし、私も何かしらの機械を作っているのだという事くらいしかわからないので何とも言えないのですよね。


「そんなの最初から説明して…って、え、あれ?…してるで?してる…よな?」

 私の疑問に対して鼻息荒く言い返して来たルルさんの自信が徐々になくなっていくのですが、視線を向けられたドワーフさんは「いや、ぜんぜん」とでも言いたげに首を横に振っておりまして……こんな調子では相互理解が深まる筈がありませんわ。


「そんな馬鹿な!?だって、ウチは…あれー?」

 たぶん身内であるギルバさんあたりには喋った事があったのかもしれませんが、皆を纏める立場(里長)に居るギルバさんは全員の意見を集約しつつ公平に判断する必要がありまして……資材を大量に消費する事に反対されたのか運用上の課題が多すぎたのかはわかりませんが、否定されて意固地になったルルさんが他の人達に説明するのを省いてしまったのか忘れていたのかといったところが事の真相なのでしょう。


パッと見の感想(機械を見た感想)になるのですが、ルルさんの研究は素晴らしいものだと思いますし将来的には機械化を進めて行くというのもありなのかもしれませんが…まずはどのような事をしているのかを教えてくれませんか?その上で手伝える事があったら手伝いますので」

 ヒートアップしていくと支離滅裂になっていくといいますか、話が飛びまくるせいでルルさんの考えが周囲の人達に伝わっていなかったのかもしれません。


「せ、せやな、爺ちゃんにダメだって言われてウチは意固地に…よくしてくれているおっちゃん達にはもうちょっと説明するべきやったな」

 という感じでルルさんも説明不足だった事を反省してくれたのですが、まず前提となるこちらの世界における魔道具の扱いというのは“魔法を模した道具”というくらいの扱いでして、魔物達が内包している魔石や魔力が込められている特殊な鉱石を利用して作られる魔法の代用品という扱いのだそうです。


「で、問題となってくるのがその出力なんやけど…燃料として魔石を使っている関係で一気にドバーって使ったらすぐにガス欠になるやろ?だから細々と取り出して安定させる必要があるんやけど、これやと出来る事に限りがありすぎるねん」

 結果、魔道具は生活魔法程度の出力しか出ませんし、そういう魔道具を日常的に使えるような人達はそもそも代用品を使う必要(人を雇えば良い)がないので発展性に乏しく改良をしていこうと考えた場合も大量のエネルギー源(魔石や鉱石)を必要とするので高コストになり過ぎるのだそうです。


「で、ウチが研究している魔導機械(まどうきかい)についてなんやけど、これは魔力をブーストする効果があって…欠点は増幅したエネルギーをどうやって保存していくかっていう問題やったんやけど、何とか空の魔石を使えないかって考えていた時に発見したのが…この結晶やねん」

 そんな事を言いながら見せてくれたのがブローチくらい(5cmくらい)の赤黒い結晶体に精密機械がくっつている魔導機械でして……ようするにワームトレントの結晶をエネルギータンクにした増幅機でお手軽なパワーアップをというのがルルさんの研究なのだそうです。


「ワームトレントの方は無理な後付けですぐに駄目になったみたいやけど、これが完成したら今まで技量(魔力)が足りへんからってさせてもらえなかった作業が出来るようになるし、この技術で作ったものごっつい武器を開発したら爺ちゃん達が無駄に命をかける必要も…って事は良いねん、とにかく変換炉(室外機)で取り入れたマナをこいつに注入している時にやって来たのが…あんた達やった訳や!」

 とか言われながら指をさされてしまったのですが、ようするに物凄いタイミングで私達がやって来たという事なのでしょう。


「ふーむ、なんだかよくわからねーけど…魔道具がパワーアップするのならそれはそれで良いとは思うが…増幅、ねぇ…なんか俺達の頑張りって何だったんだろうなっていう感じなんだよな」

 説明を聞いていたドワーフさんが腕組みをしながら唸っていたのですが、何でもかんでもパワーアップさせる事が出来るとなりますと、今まで魔石(エネルギー源)という縛りの中で研鑽をおこなってきた自分達の努力が馬鹿にされているように感じてしまったのかもしれません。


「口を挟んでしまって申し訳ありません、少し偉そうに言わせてもらいますと…それが時代の流れというものではありませんか?その上でどうするのかというのが問題で、職人の腕の見せどころなのでは?」

 未知の技術という事で二の足を踏んでいるのかもしれませんが、出来る事が増えていくのは良い事だと思いますし……なんていう私の意見はドワーフさんに鼻で笑われてしまいます。


「はっ、それくらいの事はわかっているし…ハンマー一本で何とかして来た身としては色々あんだよ」

 口ではそのような憎まれ口をたたいているドワーフさんなのですが、奇妙な奴だと思いながらもルルさんの事を認めているようですし、遠くないうちにルルさんの研究成果は日の目を見る事になるのかもしれません。


(と、なりますと…私も頑張らないといけませんわ)

 ルルさんが作っている結晶なのでルル結晶と呼ばせてもらいますが、これが完成したら色々なパワーアップがお手軽に出来るようになってくるようですし……。


「それで、具体的にどのような事をお手伝いすればよいのですか?魔導機械とか魔科学(まかがく)とかそういう事に関してはサッパリですし」

 とにかく魔導機械の細かな説明を始めようとしていたルルさんを遮り本筋に戻していくのですが、私達はどのようなお手伝いをすればいいのでしょう?


「魔科学…いいな、格好いいやん、じゃあ暫定魔科学とさせてもらうけど、この魔導機械の増幅値のデータが足りてなくてな、このままだと何処まで安全マージンを取ったらいいのかわからへんからつー事で、その辺りの試運転に付き合って欲しいんや」

 との事で、属性が混じる魔力より純粋な力の源である聖氣の方がデータがとりやすいようで……私のような神躯持ちがテスターになるのが理想なのだそうです。


「わかりました、では微力ながらルルさんの夢を実現させるためにお手伝いをしますわ!」


「ありがとう、ここまでわかってくれたのはあんたが始めてで…めっちゃ嬉しい、じゃあ、早速…この装置を神躯の近くに装着した方がいいんやけど…測定機器の反応的にあんたの場合は胸にあるんか?じゃあ左右でバランスを取るためにこっちのプロトタイプの方も取り付けてみたいんやけど」

 なんて目元を拭いながら結晶が取り付けられたブローチ型の機械を取り出しまして……。


「待ってください、その…何か物凄く嫌な予感がするのでやっぱり少しだけ考えさせて貰っても?」


「なんでや!?今まで滅茶苦茶ノリ気やったやん、何があかんの?大丈夫やって、安全性はウチが保証するし…増幅する時にプルプルと震えて擽ったいくらいやから」


「震えますの!?って、え、ルルさんがご自分で試して?」

 そんなローターみたいな物をただでさえ糞ザコになっているおっぱいに取りつけられたら大変な事になってしまうのですが、保守的なドワーフさん達が懸念していたように碌でもない研究だったのかもしれません。


「ちゃうって、別に変な目的じゃなくて…動作実験で…とにかく大丈夫やって、ヴィーンって震えるだけやから…良い感じにコリが解れるで?」


「余計に嫌ですわ!やっぱりこの話は無かった事に…」

 どう考えても断るべき案件だと思うのですが、ルルさんが生贄を逃がすまいと腰の辺りに抱き着き引き留めにかかっておりまして……。


「ルル~頼んでいた搾乳機って出来てるー?あと~こっちにアリシアが来ているって聞いたんだけど…って、あー居たー!もう、探したんだから!母乳を搾らせてくれるって言っていたのに何でこんな所に居るのよ!」

 このままではローター責めを受けてしまうと思って逃げ出そうとしているタイミングでマリーちゃん(妖精さん)がやって来たのですが、本当に色々とタイミングが悪すぎますわ!


「ん、なんや?おっぱいを搾らなあかんのか?よし、じゃあ…ただ増幅させるだけやったら地味かなーって思っていたとこやし、こうなったら合体させてみーひんか?」


「どうしてそうなりますの!?」


「大丈夫やって、エネルギーの流れを調整して吸い出せるようにするだけやから…うぉおおおお何かよくわからんけど色々なアイデアが浮かんで来たでぇえええ!!」

 なんてヒートアップしてしまったルルさんが碌でもない魔改造を施し始めてしまったのですが、本当にどうしてこうなってしまったのかが謎すぎますし、一度走り出したら暴走し続けているルルさんがマッドサイエンティストすぎて対応に困ってしまいますわ!

※因みに魔道具は魔石や特殊な鉱石をエネルギー源としているバッテリー式の道具類で、魔導機械は空気中のマナや使用者の魔力や組み込まれている魔石のエネルギーを圧縮したり変換・増幅したりする内燃機関内蔵の機械みたいな感じです。しかも黎明期も黎明期なので魔導機械はすぐに爆発したりエネルギー漏れが起きていたりしているのもルルさんの研究がいまいち広まらない理由の一つだったりします。


 後は同程度の効果を発揮させる為には数十倍の材料費と運用費が必要となってくるのが忌避されるポイントで、唯一の利点は出力を上げやすいという点で将来性だけは魔科学の方に軍配が上がるのかもしれませんが、現時点では解決しなければいけない問題が山積みなので細々と研究をさせておく方が良いという判断を下されてしまったといった感じです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ