1:召喚されましたわ!
※はじめましての人ははじめまして、時折妙に癖の強い作品を書いている猫です。今度は妙にノリの良いお嬢様が大変な目にあったり頑張ったりするお話なのですが、人を選ぶ内容になってしまうと思われるのでこれは合わないなーっと思ったら他の作品を読む事を推奨しておきます。
(あら…?)
学校から帰宅した私が鞄を置いて、白を基調としたダブルボタンワンピース型の制服というなかなかマニアックな制服を脱ごうとしたところで何故か真っ白な神殿のような場所に居る事に気が付いて……ツルリと磨き上げた大理石のホールのような場所には小川を模した水路が走っていたり名前の分からない大きめの植物が植えられていたりと品よく整っていたのですが、まったく見覚えのない場所だったので驚いてしまいました。
(これは…巷で流行りの異世界転移というものかしら?)
こういうのは低俗なネット文学のお決まりのパターンという奴で……気になる事があるとすればトラックに跳ねられるとか過労死するとか謎の光に包まれるとかいうそれっぽい兆候が無かった事なのですが、そういう出来事が無い事もあるにはあるので気にしたら負けなのでしょう。
とにかくそういう奇想天外な出来事に対して少しばかり面を食らってしまったのですが、周囲を見回すと一段低い……私の立っている場所が一段高い場所になっているだけなのですが、見下ろすような場所で祈りを捧げていた神官風の人達が「まさか、本当に?」とか「女神様のご神託の通りだ!」とかザワついておりました。
(白い部屋に白い衣装なのでアウトオブ眼中でしたが、こちらの世界の人達は物凄い恰好をしておりますのね)
肩や腋が露出しているホルターネックのフード付きワンピース型のローブを着こんでいるのですが、前垂れっぽくなっている……と、いってもいいような大きなスリットから生足が見えているのは色々と目のやり場に困ってしまうと思います。
とはいえ髪の色や瞳の色がカラフルなので二次元的な格好良さがありますし、宗教色の強い場所なので儀式的な意味合いが強い服装をしているだけなのかもしれないのですが……この露出度がこの世界のデフォルトだった場合、容姿に自信がない人は少しだけ生きづらい世界なのかもしれません。
(エッチな作品の中というのはごめん被りたいのですが…私の勘では違いますのよね)
何にしても、こういう話題はなかなかセンシティブな話題なので触れづらい事この上ないですわ!
(ともかく、私を呼び出すとは目の付け所だけは100点満点の人達だと褒めて差し上げますわ!)
あまり奇妙な服装をジロジロと見ているのもどうかと思いますし、程々のところで切り上げ高笑いの一つでもしてあげたくなるのですが……転移の影響なのか声が出ないのですよね。
(こういう時に喋れないというのはストレスが溜まりますわね)
そんな事を考えながら高校生らしからぬ自慢の巨乳を強調するように腕を組んでみるのですが、転移の影響なのか胸のサイズが大きくなっているようですし……髪の色も少しだけ変わっているようなのですよね。
(これは、まあ…仕方がないですわね)
自分で言うのも何なのですが、腰まで届く艶やかなミルキーブロンドの髪や誰もが羨むボン・キュ・ボンのスタイルやら美の女神もかくやという美貌にも誇りを持っていたのですが……髪質に関しては妙に丸まりやすいという欠点がありましたし、もう少しだけ身長が伸びてくれればと思っておりましたので、その辺りが改善されているのなら良しとしておきましょう。というよりそうであって欲しいですわ!
「あー…あー、どうやら喋れるようですわね、それで…貴方達が私を呼び出したのかしら?」
パッと調べた感じでは妙に光り輝いている以外は変化のなかった容姿の事や異世界に呼び出されてしまった事を思い悩んでいても仕方がないですし、ウジウジと悩み続けているのは私の主義主張にももとるので横に置いておく事にして……相も変わらず呼び出したと思わしき人達は美しすぎる私の出現に驚きザワついており、ようやく喋れるようになった私の方から声をかけてさしあげました。
「は、はい、その通りですじゃ…と、言いたいのですが」
「ハッキリとしないのね?どういう事かしら?」
呼び出された側より呼び出した側が戸惑っているというよくわからない状況なのですが、こういうゲームや小説みたいなものがあったのでしょうか?と頭の中で考えてしまい……思い浮かぶものが無かったので私が知っている作品ではないのでしょう。
「申し遅れました、私はターナー・ホーンと言い…ここ、マリエラ教で神官長をさせてもらっておる者で…この度おこなわれた降臨の儀の責任者もしておるのじゃが…」
私の疑問に対して出て来たのは白を基調とした金細工の入ったミトラと地位の高さを表すローブを着た好々爺といった雰囲気を漂わせている130センチちょっとのお爺ちゃんで……見た目としてはフサフサの眉で目が隠れていますし立派なお髭を蓄えている人なのですが、身長から考えるとドワーフやハーフフット的な種族なのでしょうか?
そんないかにも異世界っぽいお爺ちゃんであるターナー神官長が説明をしてくれたのですが、説明自体はどこかあやふやで、要領を得ないものでした。
「このような事を言っては不心得者と思われるのかもしれませんが、マリエラ様からこのようなご神託を頂くのも200年ぶりの事でして…我々も戸惑っておりますのじゃ」
との事で、ターナー神官長の説明では数か月前……因みに今私達が居るアメリアル大陸の区切りは4期360日が基準で……つまり言語チートが発動していた訳なのですが、地球由来の語句や単位が入り混じる事になるのは困りものですわね。
とにかく数か月前、聖母神マリエラ様より異世界からの転移者の存在を仄めかされたようで、半信半疑ながらも女神様からのご神託だと準備をしていたら私がやって来た……という感じなのだそうです。
「つまり呼び出される事はわかっていたけど呼び出される理由がわからないまま受け入れの準備だけはしていた…という事なのです?」
「おっしゃる通りでございます」
ここまで堂々と頷かれてしまうと困ってしまうのですが、マリエラ様は愛と豊穣の女神であり……人々の暮らしを見守っているタイプの神様なのでご神託を出すこと事態が稀で、事の次第を確かめる為に文献を漁るところから始めたのだそうです。だからといって、なのですが……。
「そう、ですわね…例えば女神様が動かなければいけないようなとんでもない事件が起きているとか、これから天変地異が起きようとしているとか…とにかくそういう危機的状況に陥っているという訳ではない…という認識で良いのかしら?」
大した理由もないまま呼び出されたというのでしたら元居た世界に戻して欲しいと思ってしまうのですが、この手の異世界転移で戻れる作品が少ないのでこの後どうなってしまうのでしょう?
「いえ、その、何も問題が無い訳ではないのですが…お恥ずかしい話ですので」
「あら?じゃあ…その問題とやらを解決してあげたら良いのね、それなら話が早いですわ!」
こういう時はわかりやすく危機に瀕している人達を助けてーというのがお決まりのパターンですし、目指すべき目標があるのはありがたいですわ。
「それが…そう、ですね、御身の為にも…我々が置かれている状況を説明しておく必要があるのでしょう」
そう前置きをしてから話してくれた内容を纏めると、この世界……セレスティアーズという異世界に存在しているアメリアル大陸ではザインブルグ帝国という超大国が支配権を確立しており、先帝とその後を継いだミレーヌ・ド・ザインブルグ皇帝が暴虐の限りを尽くして大変な事になっているのだそうです。
具体的な悪行としては帝国が使役している魔物達による被害や女帝が推進している人間狩り……女子供と見れば連れ去られてしまうという強制連行にあっている状況で、人口の3割程度が居なくなってしまったのだそうです。
そういう圧政に抵抗する人達も軒並み処刑されてしまい、女帝の手足となって動いている代官達や騎士達から逃れるようにいくつかのグループで纏まり必死の抵抗をしている状況で……。
(それは…結構大変な事になっているような気がするのですが?と、いうより…異世界らしく魔物がおりますのね)
日本という平和な国で暮らしていた私からすると物凄く大変な事になっているような気がするのですが、ターナー神官長達からしたら帝国内のいざこざはどこまでいっても人間同士の争いであり、信仰の対象である女神様の手を煩わせるべき事柄ではないと考えているようでした。
(女神が実在する世界だからでしょうか?この世界だとマリエラ様という神様が異様なレベルで信じられておりますのね)
私なら女神の力だろうと何だろうとパパッと解決してくれるのなら解決して欲しいと願ってしまうのですが、ターナー神官長達は違う考えを持っているようで……彼らの信仰心が純粋で清らかであればあるほど、私も言動に注意し敬わなければいけないのかもしれません。
「なかなかヘビーな状況になっておりますのね、ですがお任せてください…と、自信満々に断言して差し上げたいのですが、いきなり帝国や魔物と戦うのは…私は戦いの素人ではありますので」
言語チートがあるので何かしらのチート能力があるのかもしれませんが、日々のストレッチや体育の授業、そしてクラブ活動としてのテニスくらいしかまともな運動をしてこなかった私が何処まで戦えるのかがわからず……いきなり切った張ったの大立ち回りを要求されても困ってしまいます。
「その辺りはご安心ください、我々もこの日の為に準備を進めておりましたので…ただ…その、マリエラ様のなさる事ですので我らのような矮小な者達では考えもつかないようなお考えがあるのだと思いますが、女神の使徒であられる聖勇者様にはこちらの世界に呼ばれた理由を探っていただけたらと思っておりますじゃ」
「まあ、それくらいなら…でも、その…仰々しいので聖勇者という呼び方はどうにかなりません?」
正直に言うとダサい呼び方だから嫌なのですが、聖勇者がどういう位置を占めているのかがわからなさすぎて否定しづらいですわ!
「いえいえそんな!マリエラ様からのご神託があり異世界より呼び出された使徒様を聖勇者と言わずに何と申しますか!!まさかこの年になって聖勇者様にお目にかかれるとは思ってもおらず…望外の喜びに数十年は若返った気持ちですじゃ!」
なんて感極まったように泣き出されてしまうとダサいから嫌だとは言いづらくて……こうなったら聖勇者の称号を受け入れるしかありません。
「わ、わかりましたわ…とにかくその辺りの謎は異世界より召喚された聖勇者であるアリシア・W・神楽坂が丸っと解決してみせますわ!皆様方は大船に乗ったつもりでドーンとご安心くださいませ!」
色々とややこしい事情があるみたいなのですが、私の華麗なる活躍でこちらの世界と皆様方を救ってみせますわ!
※ここまでお読みくださりありがとうございます、猫の活力になりますのでブクマークや☆を押していただけると小躍りいたします。またスタートダッシュ期間として本日20時10分にも2話目が投稿されますのでそちらもお読みいただけると幸いです。




