78 人質、それはフラグです。
前回のあらすじ
姉のピンチに、颯爽と駆け付けた妹
のピンチに、颯爽と駆け付けた山田。
あと強い奴は埋めときゃええ
これ基本です。
「カラレイド様!」
ゼッセルと違い、カラレイドに土が付いたという事実は騎士達に大きな衝撃を与え、すぐさま何人もの騎士が大荷物に取り付いた。
ズボンをずり下げ、卑猥な行為に及ぼうとしていた猿達も、慌てて武器を拾い上げると警戒態勢に入る。
そんな彼等の下へ山田が足を進めると、一人の騎士が半裸の女性を地面に蹴り倒し、その背中を踏みにじった。
「貴様! 下手な動きをするんじゃない。こいつがどうなっても構わないのか!」
足元の女性の首筋に手にした剣を突き付け怒鳴る騎士、その光景を目にした山田の表情が憎々し気に歪んだ。
「な、なんと言う真似を・・・」
女に襲っていた騎士は、人質を盾に山田へと脅しをかけていた・・・・・・下半身丸出しの致命的な格好のままに。
「くくく、どうした顔色が悪いぞ」
「いや・・・これを平気で直視できるヤツは居ないだろ」
武器を持つ以上両手でズボンを履けない所為であろうが、モロダシは日本格闘に於いても、即反則負けの恐ろしい禁じ手である。
かつてウルカ達が、涙を流すチンピラ達を踏み躙っていた光景も有る意味ヤバかったが、これはそれに倍する地獄模様。
幾ら非常時とはいえ、日本で育った山田には非常に厳しい光景であった。
「もうムリ。子供の目にも有害なので、強制撤去させて貰います」
流石に色々と見てられないと見切りを付けると、人質なんて何のその、山田はそんなの知らぬとばかりに、騎士との距離を一気に詰めた。
「え、おっお前ひぎゃうっ!」
碌に反応できない隙に股間部を拾った鞘で殴り上げると、騎士は儚い悲鳴と共に大地へと崩れ落ちる。
「ぐぎぎぎぃ、おのれ・・・悪魔、め・・・」
「自業自得なんだよなぁ・・・」
恨みの言葉を最後に白目を剥く男だが、上半身はキッチリ鎧で固め、狙って下さいとばかりに股間を丸出しにされれば、そこを狙うのは、ある意味人情と言う物である。
「全裸の方がまだ救いがあるのに」
溜息と共にそう呟くと、人質となった女性の首に目を向ける。
切られていたら薬でも使おうと思っていたのだが、その滑らかな首筋には傷一つ見当たならなかった。
「・・・よし、問題なし」
多少切られても、死ななきゃ大丈夫だろうと雑に考えていた山田だが、結果被害ゼロの救出に満足そうに呟く。
だがこの非人道的な考えには、流石の騎士達も色めき立って非難の声を上げだした。
「問題なしじゃかなろうが! 人質が居るのになんて奴だ!」
「貴様の所為で、その女が死んでいたかもしれんのだぞ!」
「人として恥ずかしくないのか!」
「わが身大事か。なんて下種びた男よ、コイツの様なクズは見た事無いわ」
やたら憤慨した様に捲し立てる騎士達だが、なんだか納得がいかない山田は、憮然とした表情で見返した。
「お前らに言われると終わりなんだが・・・・・・第一人質以前に自身を顧みろっての、特に下半身!」
股間丸出しの変質者に人の道を説かれるなど、この上ない侮辱。
流石の山田も腹に耐えかねると、獲物を握る腕に力が入った。
「もう手加減はしてやらん、魂まで響く一撃をくれてやる」
「ふざけるな、なにが手加減だ! 見ろレオー二のヤツ、泡吹いて白目剝いてるじゃないか!」
そのレオー二とやらを見ると両手で股間を押さえ、胎児の様に丸まって痙攣していた。
「・・・あれは棒を狙ったに過ぎない、次からは玉ごと打ち抜く」
「なん・・・だと・・・」
「下半身丸出しで、人様の尊厳を傷つけた事を悔いるがいい・・・いやホントに反省してください」
こんな地獄は二度ごめんだ、そんな思いを込めて山田は切実にそう語る。
「もうちゃっちゃと終わらせちゃうから、人質でもなんでも好きにすればいいし」
上半身完全武装に下半身全開放。そんは集団と長時間関わるなど本気で嫌すぎだった山田は、話しは終わりだと足を踏み出した。
卑猥なファッションを着こなす騎士達は、向かい来る山田を目にし顔を強張らせはしたものの、果敢にもその闘志を漲らせると気炎を上げた。
「舐めるなよ、人質を取るなど恥さらし! 我は決してぐがぁぁああああ!」
そこじゃない、もっと恥じるべき所あるんじゃね、と思いつつ、山田が股間に一撃をかますと、背骨が折れ兼ねない程に仰け反った騎士は、血の涙を流して果てた。
その様子を見て顔を青く染めた騎達士だが、恐怖を振り払うように大声を上げると、一斉に山田へと切りかかる。
「く、くそ! 誇り高き騎士ぎゃひぁぁぁあああ!」
「うぉおおおお! 王国に栄光あひぃいいいんっ!」
「騎士の剣が!意思が!下賤な傭兵などにみぎゃふぅぅうぅぅぅぅぅ!」
下半身を露出させた誇り高い栄光の騎士団とやらは、果敢に山田へと挑み掛かるがその悉くが悲鳴と共に散っいく。
そんな山田と半裸組とのその凄惨の戦闘を遠巻きにし、神妙な表情で見守る下半身まで鎧で身を固めた騎士達。
クジ運悪く、お楽しみの順番待ちをしていた彼等だが、今日ほど己が不運に感謝した日は無かったという。
そんなある意味幸運だった彼等の目の前で、ズボンレスの集団は急所狙う卑劣な悪漢と勇敢に戦い・・・そして哀し気な悲鳴と共に消えていった。
「てめぇ、いい加減いしろ!」
キン・コン・カンと、まるで楽器を弾く様に、騎士達を容易く沈めていく山田を目掛け、NOズボン最後の生き残り、ゼッセルが駆ける。
「雑魚相手に気持ち良くなってじゃねーぞ! 俺が相手してやらぁ!」
鎖で絡め取り次第、スキルをぶち込んでやると意気込む彼だが、その足は図らずも止められる事になる。
二人の間に割り込んだ虎の雑種タイアーが、その特徴的な縞々尻尾をくねらせ、ゼッセルの進路に割って入ったのだ。
「くくく、どこ行こうってんだ、俺の事も構ってくれよ」
「あぁ!雑種風情が邪魔すんじゃねー、ヤッちまうぞオラ!」
「なんだぁ? そんなチンケナもんで俺とヤろうってのか。うひひひ、ヤマダと比べたら貧弱な・・・いや、同じくらいか? んん、逆にコイツの方がデカいんじゃ・・・」
「おいやめろばかやろう」
顎に手を当て、何かを思案しだしたタイアーの背中に、今日一番のダメージを受けた山田の悲痛な叫びがぶつけられる。
「そういうのはだめよくない」
「お、おう・・・」
山田のダメ出しに、タイアーの尻尾がシュンと垂れ下がると、勝気な表情が哀しそうに曇った―――この日、彼女は始めて山田に叱られた・・・下ネタが理由で。
「お前もズボンを履けよ変質者、とんだとばっちりじゃねーか」
「うるせーんだよ!・・・ちょ、ちょと待ってろや」
新たな戦端が開かれるかと思われたが、今更ながらに下半身の無防備さに気付いたゼッセルは慌ててズボンの下へ駆け戻る。
こうして傷ついたバラフィとローズを、タイアーとシープアが庇い。
騎士達に襲われていた女性達も、山田の手に因って一応の保護を得る。
ゼッセルが身嗜みを整え、他の騎士達が慎重に周囲を取り囲む中、場には奇妙な停滞感が訪れていた。
「・・・なんかもう、凄いヤル気が無くなって来たんだが」
傷心の山田は、包囲したまま手出しを控える騎士達を見据えると、このままお開きに出来ないかと疲れた様に独り言ちるのだった。
大荷物の下から這い出たカラレイドもまた、疲れの滲む呟きを溜息と共に零す。
「ふぅ、とんだ目にあったな」
「お怪我は有りませんかカラレイド隊長、よろしければお薬を」
「いや心配ない、あの重量には多少難儀はしたがな。このような不意打ち、二度とは喰らわん」
部下の差し出し回復薬を押し戻し、女達の元に駆けつけ山田へと視線を移す。
「部下達がああも容易く・・・あの男もCランクか。はてさて、少し面倒になって来たものだな」
「あれは完全に鎧を脱いだ者達の失態でしょう。慎重に当たれば、打ち取る事も可能かと思いますが」
「だろうな。だがその前に一つ、奴等との交渉の席を設けると事としよう。案外話の分かる奴等かも知れんしな」
カラレイドは鎧に付いた土を叩き落としながら、騎士達と睨み合う乱入者達の前へと足を進めた。
「さて、改めて名乗っておこう。私は騎士団第一隊隊長カラレイド。突然襲い掛かって来たお前達は、騎士団に逆らう不穏分子・・・と言う事になるのだが」
気を荒げている周囲の騎士とは違い、その声は静かで落ち着いてものであったが、声色には脅迫めいた響きが込められている。
「もし事態の推移も知らず、単なる狭義心で手を出しただけと言うのなら、今なら引き返す道も残っているのだぞ」
「まぁその辺の事情は良く分からないが、彼女達は一応お客様なんでね。流石に見過ごすと今後の商売がやり辛くなる」
「ふむ、つまりは金の問題か。どうだ我等に付くなら好きなだけくれてやる・・・ついでに、いい思いもさせてやるぞ」
具体的にどの様な思いかは口にしないが、男なら凡そ察しが付く筈である。
更にカラレイドは、周囲の木々にも鋭い視線を投げかけると、大声で呼びかけた。
「これは後ろに潜んでいるお前達にも言える事だ! どうせこいつ等の仲間なのだろう、いい加減姿を見せたらどうだ!」
その大声がビリビリと大気を揺らすと、木の陰に身を隠していていた幾つもの人影がザワザワと揺れた。
人影は暫く身を潜めていたが、無言で睨み付けるカラレイドの眼光に屈し、観念して一人また一人と姿を現した。
「ま、まってくれ、俺達はただ、ヤマダがローズ達に悪さしないか心配になって、付いて来ただけなんだ」
そう言い訳を口したのは、先程樹海の入り口で山田に絡んだ二十人ほどの男達。
彼等はローズ達と何とかお近づきになれないかと、諦め悪く後を付けて来たのだた、思わぬ展開に度肝を抜かれる事になる。
この窮地、点数を稼ぐには持ってこいの場面であるが、騎士団相手に乗り出す事など到底出来ず。
さりとて捨て置いてしまうには余りに惜しいと、この場を離れる事も出来ず。
結局、何か美味い汁でも吸えないかと、ハイエナの様に事の成り行きを覗き見していた次第である。
「そのあれだ、状況がわからねーし。な、何か手助け出来る事でも無いかと、様子を見てたんだよ」
「それだけか? どうせ我らの背後でも突こうと、隙でも伺っていたのだろう」
「ち、違う! 騎士団に逆らう積りなんて更々ねーよ」
「ほう、ではあわよくば、女共に手を出さんと息を潜めていたか?」
「うっ! そ、そんな、別に・・・」
思わぬ指摘に口籠る傭兵に見て、カラレイドは口の端を吊り上げる。
「ふ、図星か。なら話は早い、大人しくして居れば、後でお前等にもコイツ等を使わせてやる」
「な! 幾ら騎士団だからって、バラフィ達は物じゃねーんだぞ!」
「ではどうする。腰の剣を抜いて我らに振るう積りか?」
「い、いや、そう言うわけじゃ・・・」
傭兵達は不安げな表情を浮かべると、互いの顔を見合わせる。
「お、おい。幾ら何でも騎士団に楯突くとか、ありえんだろう」
「そうだぜ、相手が騎士団じゃ、俺等が訴え出ても逆にこっちが悪者にされちまう」
「確かに。騎士に、貴族に歯向かっても勝ち目なんてありゃしねーよ・・・それに・・・」
言葉を途切れさせた男の目が、地面で横たわるバラフィへと向かう。
破かれた衣服が僅かに覆う胸の膨らみ、はだけたスカートから覗く白い太もも、更には艶めかしい曲線を描く身体の輪郭を凝視した傭兵は、ごくりと生唾を飲み込んだ。
「騎士団の言葉は領主様の命令みたいなもんだろ・・・これは逆らえねぇだろ、ふつう」
熱の籠った眼差しで肢体を舐める男の言葉に、周囲に傭兵達も黙って頷きを返す。
「くはははは、そうだぜぇこれは騎士団からの、つまり侯爵様の命令って訳だ。お前らは何も悪くねぇ」
分り易い傭兵達の反応に、ゼッセルの甲高い笑い声が響く。
「最早コイツ等は罪人だ、好きに手を出しても咎められる事は無い。後の事はコッチで上手く処理してやるから案ずるな」
続くカラレイドの後押しで、男達の中に有る極々小さい、脆弱な倫理が容易く溶けた。
「そう言う事なら、仕方ないよなぁ・・・」
「心苦しいが・・・仕方、ないぜ・・・」
「あぁ、仕方ねぇ、仕方ねぇよ・・・」
その無念そうな言葉とは裏腹に、鼻息の荒い彼等の表情は嫌らしく歪んでいる。
既に彼等は、騎士達相手に腰の剣の振るう事を諦め、バラフィ達相手に腰を振る事に思いを馳せていた。
先程まで騎士団の無法に怒りを燃やしていた若い傭兵すら、際どい肢体を目にし、その身体を好きに出来ると聞いた途端、その意見を変えていた。
「・・・バラフィさんが悪いんだ、僕がこんなに想っているのに、分かってくれないから」
恋心と下心を取り違えた、ヤリたい盛りの若い傭兵は熱い欲望を滾らせ、騎士の甘言に容易く溺れたのだった。
「さて、お前も乗った方が得だと思うがな、余計な危険を回避できる上に、金や女も手に入るのだぞ」
下卑た顔つきの傭兵達に興味を無くすと、カラレイドは山田へと声を掛ける。
「あーでも、そちらの騎士様達に、随分と粗相をしてしまった訳なんですが」
困り顔でそう指さす先には、おけつ丸出しで痙攣している、無様に伸びた騎士達の姿があった。
「・・・・・・まぁ死んでいる訳でもなし、アイツ等にはいい薬になるだろう」
「はぁ、それでいいんですか?」
僅かの間、カラレイドは眉間に皺を寄せはしたものの、小さく肩を竦めるだけでさらっと流した。
「幾ら任務外とは言え、油断し過ぎる方にも積は有る。それにお前程の実力者になら、相応の配慮を示すのは吝かでは無い。どうだ、なんなら先に試食を済ませても構わんぞ」
そう言って山田の近く、未だに地面で蹲る半裸の女性へと視線を向けた。
「そこの女などはどうだ? 私の目から見てもかなりの上等な容姿をしているが」
「・・・確かに、たいした美人さんですね」
「ひっ」
カラレイドと山田、二人から視線を注がれた女傭兵、フローラはその身を小さく震わせた。
バラフィを庇い重傷を負った彼女は、治療を受け持ち直しはしたものの肉体的な消耗は著しく、結局は取り押さえられ仲間と共に地に伏せていた。
山田によって一度は助けられた身の上だが、改めて懐柔を迫られた山田が如何動くのか。見上げる視線は不安で揺れていた。
現に先日まで仲間面していた傭兵共でさえ、あっさりと自分達を裏切り、今では薄汚い視線を無遠慮に投げ掛けているのだ。
ましてや目の前の男に対し、彼女達のパーティーは先日、酷い侮蔑を注いだばかりである。
誤解とは言え、その後もキチンとした謝罪など無く、むしろ強請集りで更なる無礼を働いている始末。
フローラには到底、山田が自分達へ好意的な気持ちを持っているとは思えなかった。
そんな男が金と女を蹴り、騎士団と敵対するという危険を冒してまで、気に入らない自分達を守る事など有るだろうか?
男なんて所詮、下半身主義者の、クズで愚かな害虫の集まりだと信じるフローラは、目の前の山田に対しても強い不信感を抱いている。
そんな山田がにじり寄り、服を脱ぎ始めたのを目にした時、心の中に深い絶望と諦観の想いが広がるのを感じた。
「やっぱり・・・男なんて・・・」
彼女は瞳を固く閉じると、訪れる悲惨な未来を否定する様にギュッと身を縮めた。
(お姉さま―――)
「―――まぁ魅力的な提案なのは間違い無いんだが・・・」
しかし予想した惨状は訪れず、山田の声と共に震える肩へそっと上着が掛けられる。
驚いた彼女が恐る恐る視線と上げると、この身を守る様に騎士団に立ち塞がる男の背中が瞳に映った。
「初プレイがこれとか、ハードルが高すぎるんだよな」
そう呟いた男は手にした鞘を投げ捨てると、腰の剣を抜き放つ。
「見せプはゲームだけで十分。禿げた行政に目を付けられている以上、企業努力をしてる振り位はして見せないとな」
そして剣先を騎士達に突きつけると、信じられない事に甘言を切り裂き、彼女達を救うと行動で示した。
フローラには言葉の意味は分からなかったが、その声から、背中から、自分を守ろうとする明確な意思を確かに感じ。
「あ、あぁ・・・」
自然と口から零れ出した、吐息とも言葉とも言えない空気の流れ。
自分の為に強大な騎士団に毅然と立ち向かうその後姿に、形容のし難い感情がその身を走る。
フローラは心に、絶望でも無い諦念でも無い、何か熱い想いが広がるのを痛い程強く、ハッキリと自覚出来たのだった。
フルチングはやり過ぎか?
上品なボケを目指す私としては
その辺は修正箇所として検討している所存。
なので後でもうちょとエレガントな表現に変えかも。




