第三十一話 初詣
愛斗の誕生日を祝った日から翌日の朝を迎えた。
珍しく愛斗は、朝早くから目が覚めた。まだ、昨日の気持ちが高ぶっていたせいもあったのだろう。
愛斗は今日、麗花と一緒に婚約指輪を買う予定である。
「婚約指輪って、どれぐらいの金額を出して買えばいいんだろう。まだ、高校生だからな。わからないな」と悩んでいた。
悩んで悩んでも答えが出なかった。考えているうちに、いつのまにか時間が過ぎて、麗花ちゃんと会う時間になってしまった。
愛斗が時計を見ると
「あっ、もう、こんな時間だ。麗花ちゃんが迎えに来てしまう」とつぶやきベットから急いで出て着替えた。
素早く、リビングに行くとアンナとマイクが朝食を食べていた。
「あら、愛斗、朝、自分で起きるなんて珍しいわね」とアンナが言った。
「うん、今日、麗花ちゃんと出かける約束があって」
「そう」とアンナが答えると「おはようございます」と麗花がリビングに入ってきた。
「あれ、愛くん、起きている。今日、雨じゃないよね」と麗花が言った。マイクは、「ゲラゲラ」と笑っていた。
「もう、たまには、起きるよ」と愛斗が言った。
「珍しいこともあるわね」と麗花が言うとアンナも「うんうん」と頷いていた。
愛斗は急いで朝食を取り、出かける準備をしから麗花と一緒に家を出たのだった。
愛斗と麗花は、クリスマスプレゼントを買った会社の近くにある店に向かっていた。
麗花は、ニコニコして楽しそうだった。
二人は店の前に着くと愛斗は、言った。
「麗花ちゃん、ここだよ。クリスマスプレゼントを買った店だよ」
「可愛いらしい店ね。愛くん、私達、まだ、高校生だし、高いものは、いらないからね」と麗花は言った。
「わかったよ。麗花ちゃん」と愛斗は言って二人は、店に入った。
店は、宝石店ではあるがアクセサリー店みたいな感じの店だった。店の中は、
「いらっしゃいませ」と定員さんが声をかけてきた。
「お客様、今日は何をお求めでしょうか」
「あの、僕達、将来、結婚する約束をしたんだ。だから、婚約指輪というか、誕生日でもあるので指輪を買いに来たんです」と愛斗が答えた。
「あら、まぁ、そうですか、ずいぶん、可愛いカップルさんですね」
「それと、僕達、まだ、高校生だし、高校生でも買えるような金額で良いものでお願いします」
「わかりました」と定員さんは答えてから、店の奥の方に入っていった。
少しだってから定員が戻ってくると話し出した。
「これでしたらどうでしょう。あまり、宝石は飾っていませんが、高校生がアルバイトでもすれば買える金額です」と定員は話した。
定員が出してくれた指輪は、気持ち宝石はついているが、デザイン重視の可愛い指輪だった。
「可愛いい指輪」と麗花が声を出した。
「本当だ」と愛斗も声を出した。
「愛くん、私、これがいいよ」と麗花が言うと定員も、「これ、可愛いいですよね」と話した。
「じゃ、これにします」と愛斗は話した。
「わかりました。お客様、指のサイズを測りますので、こちらへ」と定員が麗花に話した。
麗花は、定員に手を差し出すと定員は話した。
「あら、指が細くて長いわね。綺麗な手ですね」というと麗花は少し赤くなりながら「ありがとう」と答えた。
定員は指のサイズを測ると「少し、詰めないとゆるゆるですね」と話した。
「お客様、少し直すので、一週間ほど時間を頂けますか」と定員が愛斗に話した。
「はい。彼女の誕生日は来年早々なのでそれまでできればいいです」
「わかりました。急いで年末までにはできるようにします」と定員は言った。
「はい、お願いします」
「それでは、お会計をお願いします」と定員が言うと愛斗は、プラチナカードを出した。
定員が受け取るとプラチナカードには、アイトー・フランクスの名前があった。
定員は、カードを見て「えっ」と声を出してしまった。
定員は、「この人が、あのアイトー・フランクスさんなんだ」と思いながら会計を済ました。
定員が会計を終えると「とうもありがとうございます。アイトー・フランクス様」と言った。
愛斗は、「あっ、そうか、カードを見て」と思った。
愛斗は、お礼を言って麗花と店を出た。
「麗花ちゃん、年末にはできるみたいだから、僕が取りに来て、来年の誕生日に渡すね」
「愛くん、ありがとう。嬉しい」
「どういたしまして、それと、まだ、時間があるからどうしようか」
「ふふふ、じゃあ、愛くん、デートしよ」
「いいよ、とりあえず、お茶しよ」と愛斗が言って、近くのおしゃれな喫茶店に入った。
二人は、定員さんを呼んで、コーヒーを頼んだ。
麗花は、ニコニコだった。
「ふふふ、ねぇ、愛くん、まだ、貰っていないけど、ありがとうね」
「どういたしまして」
「それと、初詣は一緒に行こうよ」
「行こう、行こう。僕も一緒に行こうと言うところだったんだ」と愛斗が言うと定員がコーヒーを持ってきた。
「このあと、何処か行きたいところある」と愛斗が聞いた。
「私、見たい映画があるの。アニメだけど、いい」
「いいよ、僕もアニメが好きだから、行こうよ」と愛斗が答え、コーヒーを飲んだあと二人は映画を見に行った。
映画を見に行ったあと二人は、公園をぶらぶらしてから、家に帰ったのだった。
家に帰るとアンナに冷やかされた。
「愛斗、今日、婚約指輪を買いに行ったのかなぁ」とアンナが言った。
「えっ、なんでわかるの」
「愛斗が麗花ちゃんに話しているところを聞いたのよ。それで、いいの買えた」
「うん、買えた。高級な物は買わなかったけど」
「高校生らしくて、いいんじゃない」
「そうかな」
「そうよ」とアンナと話したあと愛斗は、風呂に入った。
愛斗は、「初詣の日にアメリカ行きのこと言わなければな」と考えていたのだった。
それから、月日が流れ年末になると愛斗は、婚約指輪を取りに行った。
婚約指輪を受け取ってから、家に帰ってくると麗花が待っていた。
「あれ、麗花ちゃん、待っていたの」
「うん、早く、指輪が見たくて」
「仕方がないなぁ、まだ、誕生日前だけど、もう、渡すよ。誕生日、おめでとう」
「ありがとう、愛斗くん」と麗花が言ってプレゼントを開けた。
「どう、麗花ちゃん」
「可愛いい。早速、はめてもいい」
「いいよ」と愛斗が答えると麗花は、指輪をはめたのだった。
二人は、一緒に過ごし大晦日の夜になると年越しそばを食べた。食べ終わってから、近くの神社へ初詣に出かけた。
神社に着くと、人が大勢いた。
「愛くん、お参りしようよ」と麗花は言って二人は、お参りの順番待ちの列に並んだ。
自分たちの順番になると二人は手を合わせてお参りした。
「どうか、ずっと、愛くんと一緒にいられますように」と麗花は祈った。
「次世代AIチップが早く完成して、なるべく早く戻って麗花ちゃんと一緒にいられますように」と愛斗は祈った。
二人は祈った後、甘酒を飲んだ。
「美味しいね」と麗花が言うと愛斗も「うん」と答えた。
「ねぇ、麗花ちゃん、行きたいところがあるんだ」
「何処」と麗花が聞くと「内緒」と愛斗が答えた。
愛斗は、麗花の左手を繋いだ。麗花の人差し指には、婚約指輪が光っていた。
愛斗は、「こっち、こっち」と言って、神社の境内を抜けて長い階段のところに行った。
階段はすごく長く麗花は階段を見上げながら言った。
「愛くん、長い階段だね」
「うん、小さい頃、ここの階段を登って行ったことがあるんだ」
「そうなの」
「麗花ちゃん、さぁ、頑張って登ろう」と愛斗が言うと二人はすかさず登って行った。
階段を登りきると街全体が見渡せる場所にたどり着いた。
「ここだよ。麗花ちゃん」
「わぁ、夜景が綺麗。こんな、ところがあったのね」
「夜景が綺麗でしょ」
「うん」
愛斗は、麗花と向かい合わせになって深呼吸をしてから話した。
「麗花ちゃん、愛している。だから、将来、僕と結婚してください」
「えっ」と麗花は声を出した。
「麗花ちゃんに、ちゃんと言ってなかったから、プロポーズだよ」
「ふふふ、嬉しい。私も、愛くんが大好きよ。どうか、末永くお願いします」と麗花は言った。
「麗花ちゃん、まだ、結婚できる歳ではないということもあるかど、僕ね、少しの間、アメリカに戻ろうと思うんだ」
「アメリカに、なんで」
「うん、次世代AIチップを完成させるために一度、帰ろうと思っているんだ」と愛斗が言うと麗花は少しの間、黙っていた。
麗花は考えた。「そうよ、一年ぐらい大丈夫よ」と自分に言い聞かせてから答えた。
「なんとなく、そんな気がしていたの。私、頑張って待っているからね」
「麗花ちゃん。ありがとう。早く、完成させてから帰ってくるよ」と愛斗は言って麗花を抱きしめた。
「愛くん、早く帰ってきてね。それで、いつから行くの」
「二年生になる前ぐらいかな、学校は休学届けを出そうと思っているんだ。期間は、一年間の予定」
「そう、そうなると、私が一年先輩になってしまうわね」
「そうだね。五十嵐先生に相談してみようと思っているんだ」
「そう。わかった。待っているよ。早く、帰ってきてね」と麗花は言って愛斗にキスをした。
そして、除夜の鐘が「ゴーン、ゴーン」と聴こえてきた。年が明けたのだった。
「麗花ちゃん、誕生日、おめでとう」
「ありがとう、愛くん」と麗花は言って、また、キスをしたのだった。
二人とも十六歳になった年である。
そして、二人の門出を祝う年でもあった。




