三年生-14
しばらくして二人が帰ってきた。
何だか前よりも少し雰囲気が変わっているような気がする。
言い合いをしていた時はどうなってしまうか心配だったけど、何とかなったならよかった。
「私はアルベルト様が犯人だとは信じてないわ」
フランメが私たちに言う。
「……でも、頭ごなしにそれだけ言ったって変わらない。私はあの人が犯人じゃないっていう証拠を集めて、それを証明するわ!」
手を強く握りしめて私たちに宣言した。
「だから、私は私で行動する。あなたたちも好きなようにして」
「私はフランメと一緒にやるわ」
リンダがフランメに駆け寄った。
「おっし。決まりだな」
ゲイルが手をパチンと叩く。
「俺たち三人はあの領主を犯人だと仮定して調べる。お前らはその反対だ。どっちが真実か確かめようぜ」
「望むところよ」
この三対二の構図、何だか懐かしい。
でもその時と変わっていることも確かにある。
今の関係が、私は好きだ。
フランメとリンダはフランメの自室を使い、私たちは今まで使っていた部屋をそのまま使うこととなった。
ゲイルが頭をかきながら疑問を口にする。
「そもそも何で領主様がおっさんの鉱山を潰そうとするんだ? 何の得がある?」
「確かにそうね……」
リリーも眉をひそめる。
「シリウス鉱山は、国内でも最多の採掘量を誇っているわ。そこが潰れたら、彼にだって入ってくる税収が減るはずよ。自分で自分の首を絞めるような真似、普通はしないわ」
じゃあ他に何の理由がある?
三人で目を合わせて首を傾けるが、辻褄の合う答えは見つからなかった。
「そういえば、リリーの服汚れてるけど、なんかあったの?」
「え? あー。実はフランメを追っかけてたら窓から落ちちゃって」
「うっそお」
「ほんとほんと。手帳で足滑らせてさ」
リリーがポケットから手帳を取り出す。全体的にドロドロだ。
「これ黄金蝶のやつでさ。思わず隠しちゃったよ」
「持ってて大丈夫なの?」
「今のところ誰も探してないっぽいから何とかなってる」
「ーーてか、領主手帳を無くしたみたいなこと言ってなかったか?」
ゲイルの一言に、リリーが動きを止める。
「そ、そんなことある?」
「前おばちゃんたちが言ってたじゃねえか」
「……………」
リリーが顔を真っ青にさせ口をワナワナと震わせた。
「ーーあの人、厨二病なんだ」
「は? いや違うだろ。リナ、鉱山で見つけた紙持ってるか?」
「うん、持ってる」
なんだかゲイルが頼もしい。
これがスカートを穿いた結果か。
「お前今失礼なこと考えただろ」
「別に」
ボロボロの紙と真っ白の紙を見比べても、同じ紙だとは到底思えない。
触り心地も何もかも違う。
破られた跡と合わせてみても一致するようなしないような。
行き詰まって窓の外を眺める。
騎士団の隊服を着た人がいる。アンドレさんに手を振っているから、もう帰るのだろうか。
太陽が沈みかけて景色が橙色だ。
ーーん、騎士。
『気づいたことがあったら教えてね』
ハッと思い出す。
いけない。子供が三人で頭を捻るよりも確実な方法があることをすっかり忘れていた。
「エレーナさんに言おうよ!」
「確かに、それいいな」
「エレーナさん帰っちゃうっ」
大声で呼ぼうとしたが、伯爵がいるのも見える。あの人の前で怪しまれるようなことはしたくない。
今渡さなかったら次いつ来るかわからない。
「ゲイルどうにかして!」
「任せろ!」
ゲイルが窓を開けて口に両手を当てる。
「エレーナさーーん!! サインくださーーーーい!」
風魔法で声を拡張させたから、多分大陸中に彼の声が響いただろう。
私とリリーは耳を抑えて悶え苦しんだ。
エレーナさんもポカンとした表情をした後、ふふふと笑う。
「いいわよ! 今から君のところに行くから、そこから離れてー!」
彼女の言う通りに窓から離れる。瞬きをした間に、窓枠にはエレーナさんが立っていた。
「すげぇ! 見えなかった!」
「ふふ、私は風型だから速いのよ。で、どこにサインを書けばいいの?」
「あ、実はそうじゃなくて……」
私はエレーナさんに手帳から破った紙と、ボロボロの紙を見せる。
「この紙が同じものかどうか調べて欲しいんです」
「なるほど。今回のことと関係が?」
「もし同じものだと判明したら、犯人が分かるかもしれないんです」
「なるほど」
わかったわ。とエレーナさんは二枚の紙を受け取った。
「すぐ調べて、結果がわかったら報告するわね」
「「「ありがとうございます!」」」
また窓から玄関口まで移動したエレーナさんが見えなくなるまで手を振った。




