最終章大地への赦し
気がつくと、村尾は、雲の上に横たわっていた。
人間としてではなくアフリカのサバンナの大地を凛々しく駆け抜けるオグロヌーとして…。
周りには、大勢のヌーの群れが横たわっていた。
青々とした空の下の雲に横たわっており、開放感があった。
雲の果ては、先が見えずどこまで続いていた。
ヌーの群れが起き上がった。
“モォォォォー!”
ヌーの群れが嬉しそうな雄叫びのような鳴きを上げた。
ヌーの群れは、雲の上へと駆け抜けた。
村尾は、ヌーの群れの後を追いかけた。
雲の上を歩く感触が蹄から伝わってきた。
柔らかいが走りやすく、飛びながら走る事が出来た。
飛ぶ度に雲の欠片がチリのように舞っていた。
ヌーの群れは、雲の上を飛び跳ねながら悠悠と駆け抜けていた。
ただ殺風景な雲の上。
平凡だが穏やかな空間。
これで本当の平和。
アフリカのサバンナの厳しい自然の競争。命と命のぶつかり合いが起き、生きるか死ぬかの極限状態に陥る。
ヤクザの時もしのぎや縄張りの争いで激しく殺気だった緊迫の状況が続いていた。
そして、銃弾と言う凶器に倒れる。
しかし、ヌーに転生して、ヤクザの時の豪胆で粗野な性格と相手を支配したいという強欲な欲望は、サバンナの地で浄化されたのだ。
この二つの世界は、同じ境遇な状況に置かれている。
そして、村尾は、ヌーに転生したのは、自分の罪と混沌の意味と仲間意識を知る為であったのだ。
そして、ライオンに弄ばれ息絶えるヌー達がいかに哀れであるか。
群れで一致団結して、まとめてサバンナの大地を駆け抜ける驚嘆を体感したのだ。
アフリカの幻想的な大地を自由に駆け抜ける事がどれほど幸福でこの場所がそれ以上に幻想的な世界であり、未知なる世界である。
これほどの自由的な開放感はない。
そう、雲しかなく、ただ平凡だが緊迫した状況がない静かで穏やかな空間が真の幸せ。
争いのない退屈な世界こそが平和。
そして、百獣の王を倒す為にヌーの群れを率いて倒す事が出来た。
ヤクザの罪を赦す為に…。
そう、つまらない退屈こそが平和の象徴。
母の記憶を思い巡らして、つまらない退屈の平和を村尾は掴んだ。
そして、村尾は、赦しを得たのだ。
村尾は、ヌーの群れと共に雲の上を自由に駆け抜けた。
この雲の上は、赦しを得た者だけが行ける場所…。
ヌーの群れの頭上に一羽の白鳥が飛び回っていた。
美しく透き通るような鳴き声を上げて大きな翼を広げて飛んでいた。
その鳴き声は、まるでヌーの群れをこの雲の場所に来た事を歓迎するかのように表しているように見えた。
すると、村尾の背に誰かがまたがっている感触を感じた。
「蓮司…」
またがっていたのは、村尾の母だった。
白いマントのような衣服を身にまとっていた。
ヌーになった村尾の頭を軽く撫でていた。
村尾は、その瞬間、目から涙を流した。
すると、村尾は、声帯から言葉が話せる感覚である事が認識出来た。
村尾は、大きく息を吸って吐いた。
「俺は、ヌーヤクザ。大地への赦しを得た」




