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第一章シノギと銃弾

夜の十一時半。月明かりに照らされたミステリアスで異様な雰囲気が漂う黒塗りのセダンが車道を駆け抜けていた。

車内には、殺気立った空気が漂っていた。

窓の外には、冬の冷たい雨が滲んでいる。

ワイパーが右、左とまるで焦ったように動いていた。

運転席には強い恐怖心に駆られて顔面蒼白で今にも殺されそうに怯えた様子でハンドルを握って運転する組員の木下がバックミラーに映る男の機嫌を注意深く見ていた。

その男は、村尾組組長の村尾蓮司。

指定暴力団のヤクザ組織で警察からもマークされている。

村尾は、五十五歳で目付きの鋭い角刈りの男だ。

身長は、百八十五センチあり、体重は、百キロ近くある。

大柄で相手を威圧するくらいの気迫があり、部下である組員にも酷薄な態度を取る。シノギの利益が悪いと平気で組員に暴力を振るい、反抗する者は、容赦なく粛清していた。

周囲のヤクザ組織の組長や幹部からは、鬼の村尾と言う異名で呼ばれ、恐れられていた。

村尾は、自分に逆らう者は、敵とみなしていた。

それが同じ組の幹部や組員でも関係なかった。

村尾が信じられるのは、自分自身だけだった。

村尾は、眉間に皺を寄せて不快そうな表情を露わにしている。

「おい、木下」

村尾が苛立った声で聞いた。

「はい…、何でしょうか…」

木下が背筋を震わせて、恐怖心を露わにし、激しく怯えた目でバックミラーを見て聞いた。

「シノギは、どうなっている?」

村尾がタバコをくわえて、ポケットからライターを取り出して火を付けて聞いた。

「南の方があまり良くないです」

木下が怯えた様子で声を震わせて辿々しい口調で言った。

「アホが!」

村尾が尖った声で一喝した。

村尾の声は、威圧的で狂気の熱を感じた。

「すいません!すいません!」

木下が悲痛そうに許しを請うように謝った。

「南の若頭に言っとけ!シノギの利益をもっと増やせって言え!」

村尾が怒鳴った。

「すいません…、それが南の若頭がどうも岡本組と本郷組が結託してやたらとシノギをする邪魔をしてくるのでシノギが悪くなっていると言っていまして…」

木下が村尾に理由を伝えようと慌てて言い訳を作って弁明した。

「岡本組と本郷組だと?」

村尾が目を吊り上げて、鬼の形相をして苛立った様子で聞いた。

岡本組と本郷組は、村尾組と対立する暴力団だ。

近年他の組の縄張りまで入り込み、縄張りを拡大している。

岡本組と本郷組が結託すると、さらに強力になり、抗争が激化する事になる。

一筋縄ではいかないのは確かだ。

「はい。組長。もう岡本組と本郷組と同盟関係を結びましょう」

木下が懇願するように言った。

「ふざけるな。あいつらとは仲間になるつもりはない。あいつらは、俺の組をバカにしている。俺らに従おうとしない。俺達に従わない奴らは、殺すだけだ!」

村尾が怒気が篭ったように声を荒げた。

木下は、村尾の声に怯えて体を震わせて縮こまっていた。

「すいません、でも…、岡本組と本郷組は、相当ヤバい奴らですよ…」

「そんなもん、叩き潰すまでよ!」

村尾が不敵な笑みを浮かべて勝ち誇ったように言った。

“ドキューン!”

鋭い銃声の音が響いた。

フロントガラスに弾丸ほどの小さい穴が空いていた。

その途端に雨水が車内に入り込んだ。

村尾の額には、黒い穴が貫通したのかのように空いており、どす黒い血が流れ出た。

「組長!」

木下の悲痛な叫び声が響き渡った。

そして、木下も額に弾丸を貫かれた。

その途端にハンドルから手を離れ、車は、激しく左に曲がってガードレールにぶつかった。

村尾は、視界が赤い血で覆われている事に気がついた。

体が動かない…。意識が遠のく…。

これで終わりか…。ちくしょう…。俺達が自分達の縄張りだけは支配していきたかったな…。

村尾は、力尽きたような弱々しい声で呟いた。

次第に意識が遠のいていった。

“ビューゥゥゥン!グルグルリューン!”

視界が真っ白になり、激しい風と大地のうねりが混同するような音が聞こえてきた。

サバンナに生息する動物達の活力のある鳴き声も聞こえてきた。

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